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第一期COVID-19ハンセン病コミュニティ支援活動報告: バングラデシュ(ALO)

笹川保健財団は、助成事業を通じてハンセン病への偏見・差別がなく、病に罹患した人が必要な治療やサービスを享受でき、ハンセン病が問題とならない社会の実現に向けて取り組んでいます。2020年はコロナ蔓延の一年となり、ハンセン病の患者・回復者やその家族らの生活はより厳しいものとなりました。そのため助成事業も、既存の支援に加えコロナ禍でのハンセン病コミュニティを支援するため、①直接的ニーズへの対応、②政府に対するアドボカシー、③積極的な情報発信を組み合わせた包括的な事業を実施しました。今回は、その第五弾として、バングラデシュからのレポートをお届けします。

バングラディシュ 第一期 COVID-19ハンセン病コミュニティ支援活動報告⑤

バングラデシュは南アジアに位置し、日本の約4割の国土に1億6千万人余りの人口を有する、世界で最も人口密度の高い国のひとつです。バングラデシュは1998年に国レベルでのハンセン病の制圧目標(人口1万人当たりの登録患者数が1人未満)を達成しましたが、今でも毎年3千人を超える新規患者が確認されているハンセン病蔓延国のひとつです。また、ハンセン病患者、回復者およびその家族に対する偏見・差別が根強いことから、医療面と社会面における継続的な取り組みが必要です。2019年12月に保健省と協力して実施した、バングラデシュ全国ハンセン病会議において、2030年までにハンセン病による障害、差別、病気をゼロにするという「ゼロレプロシー・イニシアチブ」が掲げられ、それに向け現在、県レベルでの制圧を目指しています。

今回財団が支援した団体、Advancing Leprosy and disadvantaged peoples Opportunities Society (以下、ALO)は、バングラデシュのハンセン病患者・回復者の全国レベルの組織です。国内22地区のハンセン病患者、ハンセン病による障害者、ハンセン病以外の障害者、その他の社会的に疎外された人々など、約17,000人のメンバーで構成されています。ALOの活動を現場でサポートしている現地NGO団体がThe Leprosy Mission Bangladesh(以下、TLM-B)です。

コロナウイルス感染拡大防止の措置として、他の国と同様に、バングラデシュにおいても厳しいロックダウン(都市封鎖)や移動の制限が課されました。社会のなかで最も脆弱な立場にあるハンセン病患者や障害者はその影響を強く受けており、とりわけ収入を得るための仕事の喪失、医療機関を受診できないことによる潰瘍などの悪化の問題は深刻でした。そこで今回、ハンセン病患者、回復者とSHG(セルフヘルプグループ)のメンバーが主体的に問題解決に関わることで、団体としての能力強化を図り、彼ら自身が新型コロナウイルス感染拡大によって生じた様々な困難に対処できるよう支援をしました。

1)情報の提供、衛生用品の支給

ALOは各支部と協力して、新型コロナウイルスに関する情報および予防対策の周知と石鹸やマスク等の配布からはじめました。新型コロナウイルスとは何なのか、どうしたら感染を予防できるのかという正しい知識を得ることで、ハンセン病患者・回復者は予防策を講じることができるようになりました。

ALOのメンバーにより、感染予防対策リーフレットやマスクなどが支給される

2)収入創出支援

かつては小規模のビジネスで生計をたてていたものの、ロックダウンにより仕事を失ったハンセン病回復者が、収入創出支援によって、野菜や日用品、衣服の布地などを再び仕入れて販売し、得た利益から次の仕入れ・販売というサイクルをまわすことができるようになりました。安定した収入を得る道筋を立てることができるようになったことは、ハンセン病患者、回復者、その家族にとっても大きな希望となりました。

セルフヘルプグループのメンバーは、財政的支援を受け、コロナ禍で厳しい状況に置かれた店を再開

3)オンライン診療の実施

コロナ禍では、医療機関で受診できないハンセン病患者、回復者も多くいました。移動の制限などで通院ができない、また感染を恐れて外出を控えるなど様々な理由が聞かれました。ALOは支援団体のTLM-Bの医師や理学療法士と協力して携帯電話によるオンライン診療を開始しました。回復者団体のリーダーたちが、受診希望の患者さん宅を訪問し、オンラインでつなぎ、久しぶりに診察を受けられたハンセン病患者・回復者は安堵した様子がうかがわれました。このニュースは地元紙でも報道されました。

外出制限が課される中、開始されたオンライン診療
外出制限が課される中、開始されたオンライン診療

今回の支援では、当事者団体のリーダーが各活動への理解を深め、新型コロナウイルス感染対策を講じながら積極的にコミュニティに出かけるなど、ハンセン病に関わる当事者が主体となり、団体の能力強化につなげることができました。新型コロナウイルス感染拡大はバングラデシュでも今もなお続いています。コロナ禍にあっても回復者団体のリーダーたちは、各地域で関係者と協力しながら、活動を行っています。