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ロンドン その1 CTB(チェルノブイリ 甲状腺組織バンク)会議

私ども笹川記念保健協力財団が、1986年4月、旧ソビエト連邦ウクライナ地方で発生したチェルノブイリ原子力発電所の事故後、飛散した放射性物質に汚染された人々、とりわけ子どもたちの健康状態、ことに甲状腺がんの発生状況を調査する支援に従事致しました。その後、ソビエト社会主義共和国連邦は解体し、構成国15カ国中の12の国はゆるやかな国家連合体Commonwealth of Independent Statesを形成し、ソ連は国そのものが消滅してしまいました。が、チェルノブイリ事故のフォローアップは必要です。現地の医療支援だけでなく、学問的にも多国籍の多様な関係者の努力が現在まで続いています。

財団は、イギリスのImperial College Londonの病理学教室ジェリー・トーマス教授が主宰されてきたがん化した甲状腺組織と、その情報を管理するチェルノブイリ・ティッシュ・バンク(チェルノブイリ<甲状腺>組織銀行)プロジェクトを支援させて頂いてきました。甲状腺組織のバンク=銀行は、血液バンクと同じ云い方、Chernobyl Tissue Bankの頭文字をとって、通称CTBと呼んでいます。ここでは、チェルノブイリ原発事故に起因すると思われる甲状腺がんの組織、それに関連する世界最大にして唯一の情報があります。そしてそれらの甲状腺組織や情報は、ロンドンの大学にある、小さなCTBの部屋から世界の学者に共有し、研究する資材として提供されています。

毎年、初冬の頃、現場で被災者対策にも従事されたロシアとウクライナ(以前はベラルーシも参加していましたが、今は中断!)の学者と、このプロジェクトの大口ドナーであるアメリカ国立がん研究所の研究者と、それよりは少額ですが、かつてのチェルノブイリ現場支援に続き、長年の支援をしているわが笹川記念保健協力財団が集まって、1年間の経過報告、次年度計画を審議します。などと、偉そうに申していますが、甲状腺という内分泌器官に関しても、放射線医学に関しても、ほとんど関与した経験のなかった私なので、全容を把握するのは、とても大変でした。1、2年は会議が近づくと、ちょっと頭痛、腹痛気味で、登校拒否したい小学生みたいな気持ちもありましたが、そこは、財団で長年チェルノブイリを担当してきた顧問に助けて頂きました。

ただ、原発は相当数あるけれども、日本であんなことは起こるまいと思っていた・・・ことが、残念なことに、東北大震災時、東京電力福島第一原子力発電所の事故が起こりました。そんなこともあって、このプロジェクトに関与させて頂けることは、私にとっては、とても大事な責務となっています。

また、プロジェクトの責任者であるジェリー教授や関係者は、福島原発事故後、何度も訪日され、チェルノブイリ原発事故から得られている事実を、科学的に、判りやすく(と云っても英語ですが)、繰り返し、解説して下さっています。それは、単なる「心配ない!!」ではなく、何故、心配しなくてもよいのか、また、今後も何に留意していくべきかという、エビデンス(証拠)に基づいた丁寧な説明を関係者やメディア、時には住民にも行って下さっています。もちろん、このような関係が成り立っているのは、長年のわが国の関係者との連携、信頼、友情があるからだと申せます。

昨日、まず、アメリカ国立がんセンターと私どもという資金援助を行っているドナーと、プロジェクトの責任者であるImperial College London教授の3人で、予算額、その執行状況と成果、今後についての会議を持ちました。本日は、ロシア、ウクライナの研究者を含む全体会議です。

一日、緊張の中ですが、また、新しいことを知る機会・・・ちょっと楽しみな気持ちが沸いてくるのは、少しゆとりが出てきた・・・と自負していますが・・・・

CTBドナー会議

 

Imperial College Londonの象徴