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やまと学校の入学式

大学では、9月入学の検討もありましたが、4月、桜の頃の日本は入学式たけなわです。
某所某小学校の、緩やかな坂の上の校門前で、何やら新しい文具?に夢中のご本人そっちのけで、ご両親とダブルのおじいちゃまおばあちゃまらしき大人たちが張り切って写真撮影なさっていました。ほほえましくも、まさに少子高齢社会と拝見しました。

ユニークな入学式に参列させて頂きました。
4月5日、福岡は柳川市大和町にある「一般財団法人日本モーターボート競走会 やまと学校」の「第120期の選手、第80期審判員、第81期検査員養成訓練入学式」です。

福岡県は、九州北部の真ん中を占拠しています。四分割して、福岡、北九州、筑豊、筑後地方と呼ばれ、筑後は、熊本県に接する南部地域を云います。有明海に面した筑紫平野の一角でもあります。人口約7万強の柳川市は、久留米や大牟田市とともに筑後の中心的な街ですが、縦横にめぐらされた堀割のどんこ船めぐり、詩聖北原白秋の生家、おひなさまと「さげもん」と呼ばれる古風な飾り、そしてうなぎが有名です。また、この地を統括した武将立花宗成や田中吉政ら戦国時代の歴史や、さらに昔の遺跡もあって、ぶらりと行って、あちこち見るにはちょっと疲れるくらい見どころが多いのです。

一般財団法人日本モーターボート競走会運営の、日本で唯一のボートレーサー養成学校「やまと学校」は、その柳川にあります。歴史その他は、学校のHPをご覧いただきたく存じます。

ちょっとびっくり、しかし感動した入学式でした。
HPのハードな校則や日常生活規制を拝読し、本質的には体育会系で、ちょっと荒くれた雰囲気を想像してまいりました。しかし、その予測は見事に外れ、校門から校内各所でご案内下さった119期生のご挨拶と、入学式での第120期新入生の輝くような「ハイッ」というお返事だけが、威勢の良いものでした。

入学式後のレセプションは、主に在校生が担当されていましたが、男性はクリクリ頭ながら、歌舞伎役者のような優雅な仕草で飲み物やご馳走をすすめて下さいました。ショートヘアの女性方は、TVの朝ドラに出てきそうなハツラツオーラ満開でした。「今時の・・」と枕詞を付ければ、若者への非難めいた言いぐさが続きますが、彼ら彼女らまったく違いました。若々しく、フレンドリーで、そして礼儀正しい、のです。私もサンドイッチを頂きながら、背筋がピッと伸びました。HPにある1年の計画、1日の予定のハードさ・・と思いましたが、お話を伺った在校生は、にっこり、さわやかに「大丈夫です」と。

入学後3か月は、教官運転のボートで水面に慣れ、やがてモーターの装着・分解・組み立という基礎訓練が、さらに本格的実習でしょうか、実践が始まると、複数艇での旋回やスタートタイミング、待機行動、恐らくレースでの基礎的技術訓練でしょうか。そして、モーターの性能やプロペラ調整という応用技術練習が加わります。

好きで選ばれたのですが、課程が半分済んだ頃、操縦、モーター組立、筆記、口述4種目の進級試験で、どれか1つを落とすと不合格・・・それは、フンフンとうなずけるのですが、不合格=強制退学!! 実際、リスクあるレースを思えば厳しさは必要なのでしょうが、今どき、そんなことをなさっている訓練校があるなんて、とちょっと感動より、心配になりました。後半は実習が主体のようで、模擬レースが続くそうです。2年半前に、愛知県碧南市の訓練所で二人乗りボートに乗せて頂きました。あの折の爽快さと、ちょっとしたスリルを思い出しました。頑張って下さい、と思わず声が出ます。

訓練期間中は学内寄宿制ですが、毎日6:00起床、22:00消灯就寝はもとより、売店は夕方15分だけ、公衆電話は週1度だけ、携帯禁止!! 感動しました。

入学式の行われたホールには、笹川良一翁揮毫の「礼と節」の大きな額が掲げられ、すべての行動において、「礼と節」が厳しく指導されていることは、校長の訓辞をはじめ、たった2, 3時間の入学式とレセプションでの新入生、在校生双方から十分納得致しました。

ここからは年寄り的感想です。

どこかの学校で、このようなことをやったら、必ず、誰かが、ハラスメントと声を上げるのではないかと思います。が、社会人、また、確立した大人としてのマナーやエチケットを限られた一定期間にきちんと身に着けることは大事だし、可能なのだと思いました。

ここ「やまと学校」での厳しい訓練と規則正しい生活は、その後、プロレーサーとして必要なだけでなく、長い人生を送る間、一人の社会人として有用だと皆さまが理解されているからこそ継続されているのだと確信しました。他大学と同じように、入学式では、儀式的行為がかなりの時間続きますが、名前を呼ばれて起立した入学生は、相当の時間、微動だにせず起立のままでした。

訓練と云う言葉自体、古めかしく聞こえますが、数日前に学校についたに過ぎない若者たちの入学式当日の姿勢態度からは、まだ表面的とは申せ、たった数日で、きっぱりと「礼と節」を修得することが可能だと示しています。

第120期生は、全国1,413名応募者から、競争率40.4倍の難関をくぐった、たった35名(男性27、女性8名)です。1年後に、めでたく卒業されるのは、その半分くらいとうかがい、目の前が少し暗くましたが、皆さまがプロデビューされる来年5月を楽しみに。

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