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クリミア

先般の冬季オリンピックが開催されたソチは、世界地図ではヨーロッパとアジアを連結する位置にあるトルコの上、蝶々のように広がる黒海の右端の海岸線の真ん中あたりです。その黒海の真ん中にペンダントのように垂れ下がっているのがクリミア半島、そして、再び三度歴史に現れたこの半島を含めた北側がウクライナです。
報道によりますと、その半島をしめるウクライナ国内のクリミア自治共和国議会は、ウクライナからの独立とロシア編入を95%が賛同した17日の住民投票の結果を受けて、それをロシアに正式要請する決議をしました。そして、昨日には、具体的手順は不明ながら、ロシアのプーチン大統領がそれを受諾するところまで進みました。
ウクライナの人口約4,500万の約20%がロシア系。公的な国語はウクライナ語ですが、ロシア語も広く使われていますし、1954年以来1991年のソビエト崩壊まではロシア領、黒海には有名なロシア艦隊基地があり、大国として復活したロシアとの親和性は強いともいえます。一方、残りの80%はすべてウクライナ人・・ではなく、少数民族クリミア・タタール人、モルドヴァ人、ブルガリア人、ハンガリー人、ルーマニア人など東欧系に加え、ユダヤ系やアジア系もいます。ソビエト崩壊後の東欧地域の多くが民主化とともに、西ヨーロッパつまりEUとの連携を強めたように、民主化、自由経済志向が強化してきたことも事実です。
この地域、ソチオリンピック前から、親ロ派と親EU派が対立し、親ロ派ヤヌコビッチ大統領の政策に反発した国民と治安部隊の衝突で80名余の死者が出、混乱の中、大統領が国を脱出、ロ軍が南部クリミア半島に派兵するなど不穏な雰囲気が続く中、政権がかわりました。そこで、ウクライナの中でもロシア人の多いクリミア自治共和国が動き出したのです。
何故対立?は、民族的に単一な日本人に理解が難しいものでもありますが、小さな対立に外部が口を出し手を出し、物、資金を支援しだすと次第に大きな対立構造が出来上がります。ウクライナでは、ロシアの天然ガス供給、EUの経済支援、NATO圏への関心、などなど。EU側が地域の治安強化と歓迎しても、ロシアは、東欧諸国に続き、お膝元ウクライナの親EU路線は許せない・・といったところでしょうか。
国民投票の大多数の賛意は、一見、民主的エビデンスです。が、影響力の大きな国の武力展開下の投票、第二次世界大戦後の世界秩序の仕組みを考えると、多数決だから正しい、私たちは独立します、あなたの国に入れて、との経過でよいのか一抹の疑問も否定できません。
クリミア半島は、国際保健上興味深い地域です。
近代看護の創設者フローレンス・ナイチンゲールがブレイクするきっかけとなったクリミア戦争、第二次世界大戦終結を決めたチャーチル、ルーズベルト、スターリンのヤルタ会議もこの半島です。そして感染症として名前が出てくるクリミア・コンゴ熱、現在、じわりと広がりつつあるMERS-CoV(Coronavirus-Middle East Respiratory Syndrome、地中海型コロナビールス=地中海型SARS)などなど。しばらく目が離せない地域です。