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リケジョの国際化あるいは国際的リケジョ

先週末、環境省、福島県立医科大学、経済協力開発機構(OECD)原子力機関主催の「放射線と甲状腺がんに関する国際ワークショップ(The International Workshop on Radiation and Thyroid Cancer)」に参加しました。 概要は、下のリンクをご覧ください。
http://ameblo.jp/datsugenpatsu1208/entry-11770309274.html
被災地福島県だけでなく、日本中が過去の問題にしてはいけないのは、稼働停止中とは申せ、多数の原発施設をもつ日本は地震多発国、「もし同じ事が自分の居住地で発生したら」と考えると、他人ごとなどとは申せません。
ワークショップの主題は、福島県における放射線と甲状腺がん、殊に放射線被ばくによる小児甲状腺がんをめぐってと総括できます。専門的に偏重しがちな会のようにみえましたが、主催者や司会者が、チェルノブイリや現在進行形の福島での調査をも含む知見から、何を心配すべきか、何が出来るかを、具体的に提言するよう要請されたこともあって、具体的な判り易い発表でした。
さて、最初の「放射線と甲状腺がん」セッションには、WHOからの2人の女性スタッフがおられました。共同座長は、公衆衛生・環境・社会的健康要因部門の放射能プログラムチームリーダーEmilie van Deventer博士、そして初日最後は演者Gaya Gamhewage博士は、WHOメンバー国のコミュニケーション能力強化のコーディネーターです。
外国では、所属先と研究者自身の国籍は必ずしも一致しませんが、このお二人の経歴はとても興味深いものでした。司会のvan Deventre博士はオランダ生まれ、そもそもは工学系の研究者、スイスで放射線関連の研究後、カナダの大学で電気・コンピューター工学の教授、そして現在は、WHOで放射線問題を扱っておられ、穏やかながら、科学的証拠を重んじられる雰囲気に対し、「複雑な放射線状況下におけるステークホルダーとの対話」という題で、マンガイラストを入れた発表をされたGamhewage博士は、深刻な話題ののっけから、会場を笑いにさそいこまれる話術はさすがコミュニケーションスキルのプロでした。ご経歴は、van Deventre博士以上にグローバル! スリランカ生まれ英国育ち、中国で医学を学び、複数国で医師、大学教員、ジャーナリスト、NGO勤務などのご経験をお持ちです。WHOでは、H1N1インフルエンザパンデミック時の情報発信に携わられた後に現職に就かれています。今回は、リスク時の情報発信でしたが、原発事故をどう把握し、どんな情報を、何時、誰に、どのように発信するか、会場を圧倒する迫力がありました。
わが国では、リケジョなどとの言葉もありますが、ひとつの専門分野にこだわらず、多方面の経験が新たな疑問とその解決を導き、そしてそれをもって社会に貢献する、国籍や所属先の如何を問わず、種々多様な分野でのご活躍、国際リケジョの面目躍如、ちょっとまぶしい感ありでした。わが国の若きリケジョも負けていないと思いますが、いっそうの活躍を期待したいものです。