在宅看護と持続可能な社会─看護師が社会を変える─Home-care Nursing And SDGs - Social Innovation By Nurses -

2020年はナイチンゲールの生誕200周年でした。その記念すべき年を期して、世界中で始まったNursing Nowの一環として、私ども笹川保健財団は日本看護協会と共催でNursing Now フォーラム・イン・ジャパンを開催し、「在宅看護と持続可能な社会 ~看護師が社会を変える~」を発表しました。

 

看護師が社会をかえる​ 看護師によるソーシャル・イノベーション​(10分)

喜多悦子(笹川保健財団 会長) 

日本は、国民皆保険というSDGsを先取りする制度が実践されてきましたが、超高齢化・少子化そして疾病構造の変化が進行しました。保健医療費増大と生活様式の変化への対応が必至です。治療からケアへ、施設医療から地域在宅療養へ移行する中、住民意識変容は遅々として進みません。看護活動は、施設医療での活動のみならず、地域での必要性が高いですが、就業看護職中訪問看護従事者の割合は3.5%に過ぎません。

2014年、笹川保健財団は、在宅・訪問看護事業所を継続運営できる看護師育成を始め、現在、全国25都道府県での73「日本財団在宅看護センター」が多様な保健専門家と連携しつつあります。財団は、同時に、在宅看護のエビデンスを蓄積し、看護師の地域活動を支えることを通じて地域の強化と看護師による社会的処方の在り方を求めています。

 

「看護の年」とグローバルヘルスにおける課題:看護と在宅ケアの役割(18分)

ジュディス・シャミアン氏(前ICN〈国際看護師協会〉会長、元VON〈120年の歴史を有するカナダ最大の地域看護事業体〉会長)

2020年は、フローレンス・ナイチンゲールの生誕200周年の年です。ナイチンゲールは、1870年頃に「病院は文明の中間地点にすぎず、病人全てを病院で看ることは全く意図してない。私たちはいつかこの世の恵まれない病人が、地域で働く看護師によって家にいながら和らぐ日が来ることを願っている」と言っています。それから150年が経った今、世界は在宅におけるケアの重要性と、看護師がこの分野で果たすことができる役割に気づきつつあります。

本講演では在宅ケアに関連する世界とカナダの現状について、そして慢性疾患、高齢化、働き方を含む世界的な健康課題について発表します。

 

看護・助産の起業:女性のエンパワメントと保健制度の強化のための投資(20分)

マーラ・サーモン氏(ワシントン大学 元学部長、看護グローバルヘルス教授兼公共政策教授)

 

21世紀初めの20年は、健康に関連する世界中の企業の成長が顕著にみられました。健康に関するニーズの変化に伴い、政府、投資家、慈善活動による投資の増加により、健康関連の仕事は、新しい役割と従来の役割の両面で、看護師・助産師へ頼る部分が大きくなってきています。しかし、看護師・助産師の多大な貢献の一方で、これらの企業を看護師自身が起業し、運営することは非常に稀です。

本講演では、保健制度の更なる充実と女性のエンパワメントの機会としての看護師・助産師の起業を中心に取り上げます。また、これらの推進に必要な力と、妨げとなっている課題について、アメリカの医学研究機関での草分け的な調査や考察をもとに、議論します。

 

ケアの変容~看護の価値を測る~(22分)

アンドレア・バウマン氏(マクマスター大学 副学長)

1864年にカナダで最初の病院看護学校が設立され、1869年に東京帝国大学に看護学校が設立される19世紀後半まで、日本とカナダで看護は職業として確立していませんでした。日本とカナダの関係が築かれたのもこの時期です。

1928年にアメリカ看護学会が発表した論文では、日本の 「単純労働」として始まった看護から、1927年に聖路加国際大学の看護学部設立までの変遷が図式化されています。看護教育と看護師の役割は進歩していますが、ケアが中心であることに変わりはありません。

ケアの提供方法やコストに影響する変化を理解し対応する上で、データと測定基準は非常に重要です。本講演では、ケアの重要性と、看護がどのように変遷したかについて発表します。

 

看護師の地域社会介入~看多機の仕組みと実際~(10分)

沼崎美津子氏(在宅看護センター結の学校 管理者)

超少子高齢多死社会において、多様なニーズに応えられる看護への期待があります。看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、安心して暮らせる地域社会づくりを看護師が中心となり支える仕組みとして、利便性が高く、点から面で支える看護として在宅の限界点への挑戦が可能となると考えます。

看多機「在宅看護センター結の学校」では、各関係機関との連携を強化することで幅広いサービスをカバーし、安定した経営を行っています。看護師が主導した他職種連携において、利用者の意思決定を支援し、状態に合わせた柔軟なプランを取り入れたことで、自宅(在宅)看取りが多くなりました。

これからの看護は、地域社会に参入し、地域の中で、いつもの暮らしを最期まで安心して生きられることへの支えることが必要です。本発表では看多機の仕組みと実際について発表します。

 

中山間地域における看護(8分)

大槻恭子氏(一般社団法人ソーシャルデザインリガレッセ 代表理事)

山に囲まれ、谷間に町が点在し、街の空洞化により空き家の増加、病院や診療所の縮小、医師の高齢化や減少が進んでいる地域で看多機を運営しています。

看多機周囲にある土地を活用して、利用者が農業をするなど、これまでの暮らしを崩さないよう看護をしています。特に、口から食べることに力を入れており、治療(経管栄養・点滴)から食べるケアを提供するようにしています。一般の人を対象としたオーガニックレストランを併設し、人口減少の著しい中山間地域の地域全体の活性化を行い、福祉財源や働き手の課題にも取り組んでいます。

看護師は観察力・考察力があるため、街づくりの意識を持つことで人々の暮らしが豊かになるのではないか、今後、多くの看護師が地域に出て活躍することが望ましいと考え活動しています。本発表では中山間地域における看護について当社の活動を報告します。

 

訪問/在宅看護から地域ケアへ(8分)

磯野祐子氏(一般社団法人 コ・クリエーション 代表理事)

事業所名である「地域まるごとケア」は「老や病を支えるための医療・介護と連携し、地域コミュニティの中で支え合いうまくつながり合うこと、仕組みではなく地域の人々と時間をかけてつくりあげていくもの、地域包括ケアよりも更に広いつながり※」という考えに基づき立ち上げました。

訪問看護から地域ケアへ、ケアの視点で地域を看るようにし、地域資源(ヒト・モノ・コト・場)を活用し、看護と福祉を融合させ地域マネジメントを行っています。

開業地である大都市部である神奈川県川崎市には、複数科の受診によるポリファーマシー、地域・暮らしの中でのケアが医療に偏る等の課題が存在していると考えました。地域でのケアを継続するため、ケアに携わる職種だけでなく、対象者のコミュニティや文化を使ったケアを統合したケアマネジメントを実践しています。本発表では、訪問看護を通してどのように地域ケアへ挑戦しているか発表します。

出所:NHK視点・論点、日本看護協会出版会:まるごとケアの家の展開より加筆

モデレーター:金谷益子氏(一般社団法人宝命 代表理事)

神奈川県伊勢原に2007年に訪問看護ステーションを開業しました。現在は、サテライトを含め4か所の事業所を運営しており、2020年3月1日に看護小規模多機能型居宅介護を開設しました。

「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業の1期生であり、今回はモデレーターを担当致しました。

 

これからの看護についてディスカッション(15分)

看護力を生かした地域ケアの拡大、地域におけるリーダーシップの発揮の点から、本活動が全国に広がることで、多くの人々が受益者となることが期待されます。

起業家育成事業は、持続可能な在宅看護センターの開設を可能にし、再現性があることが高く評価され、起業家者間のネットワークの構築が非常に大きな強みになります。

主催者である笹川保健財団会長喜多より、現在の不安定な世界において、普遍的で人道的学門である看護は、誰にでも健康維持をするために貢献することができる唯一のツールであるため、世界の看護師が緊密に連携して、個人、地域、世界の健康を推進してほしい、とディスカッションが締めくくられました。

 

全編はコチラ

在宅看護と持続可能な社会─看護師が社会を変える─に関する記事

関連する記事がまだありません。

関連する記事がまだありません。