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Neglected Tropical Diseases (NTDs) 顧みられない熱帯病

「顧みられない熱帯病(NTD: Neglected Tropical Diseases)」とは、熱帯地域を中心に蔓延している寄生虫や細菌による感染症のことで、貧困層を中心に世界の約10億人が感染し、年間50万人が死亡していると言われています。これらの熱帯病は先進国でほとんど症例がないために、世界の3大感染症であるエイズ、結核、マラリアと比べて、これまで世界の関心を集めることがありませんでした。

当財団ではこのNTDのうちのいくつかの寄生虫症について、創設以来2007年まで一定の支援を続けてきました(フィリピン、カンボジア、ミャンマー、東ティモール、中央アフリカ共和国)。さらに2001-2003年は、ブルーリ潰瘍対策の支援も行いました(ガーナ、コートジボアール)。

上記3大感染症に対しては、2002年「世界基金」が設立されたことを契機に世界的な規模で対策が進みつつありますが、寄生虫症を中心とする熱帯病は引き続き貧しい人々の健康を脅かしており、2008年の洞爺湖サミットで提唱されたNTD対策の速やかな展開が期待されています。これらNTDの中には、予防と治療が可能な疾患も少なくありません。当財団は、ハンセン病対策への支援を継続しつつ、太平洋島嶼国や紛争地域など、保健サービスの展開が限られている一部の国や地域で、ハンセン病とNTDを併合して保健活動を進めることがより合理的であると判断される場合には、NTD対策への支援も視野に入れた活動を行います。

顧みられない熱帯病一覧

  • デング熱:蚊が媒介するウイルス性疾患でインフルエンザ様の病態を引き起こします。重症型デング熱と呼ばれる死の危険を伴う合併症に発展することがあります
  • 狂犬病:感染した犬に咬まれることで人に伝播するウイルス性疾患です。一度、発症してしまうと、間違いなく死に至ります。
  • トラコーマ:目や鼻水に直接触れることで感染します。元に戻ることのない角膜混濁や失明を引き起こします。
  • ブルーリ潰瘍:消耗性の皮膚感染症で、皮膚、骨、軟部組織に重度の破壊を引き起こします。
  • フランベジア:主に皮膚と骨に影響を及ぼす慢性細菌性感染症です。
  • ハンセン氏病:主に皮膚、末梢神経、上部気道の粘膜および眼に感染を引き起こします。
  • シャガース病(アメリカ・トリパノソーマ症):媒介昆虫(サシガメ)との接触や、(寄生虫の)付着した食物の摂取、感染血の輸血、先天性、臓器移植または実験室や検査室での事故などによって伝播する感染症です。
  • ヒト・アフリカ・トリパノソーマ症(眠り病):寄生虫への感染はツェツェバエの咬傷で広がります。速やかに診断し治療をしなければ、ほぼ100%、死に至ります。
  • リーシュマニア症:原虫を持った雌のサシチョウバエに刺されて感染します。最も重篤な病型(内臓リーシュマニア症)は、臓器を侵襲します。最も一般的な(皮膚に起こる)病態は、顔面の潰瘍、瘢痕による変形や機能障害です。
  • 条虫症および神経嚢胞症:条虫症は人の腸管内で成熟した条虫により引き起こされる感染です。嚢胞症は、人が条虫の卵を接種し、(虫卵が)組織内で幼体に成長させたときに発症します。
  • メジナ虫症:ミジンコの入った水を飲むことで感染する糸状虫感染症です。
  • エキノコックス症:条虫の幼体が病原性のある嚢腫を形成する感染症です。人は、犬や野生動物の糞便から出てきた虫卵を取り込んでしまうことで感染します。
  • 食品由来の吸虫症:吸虫症の幼体が付着した魚、野菜および甲殻類などを摂取することで罹る感染症です。
  • リンパ系フィラリア症:リンパ系組織に生息し、増殖した成虫が、四肢や生殖器に異常な腫大を引き起こす感染症で、蚊によって伝播されます。
  • 真菌腫(Mycetoma):真菌または細菌が皮下組織に入り込むことによって引き起こされると考えられている細菌/真菌性の消耗性皮膚感染です。機能障害を起こします。
  • オンコセルカ症(河川盲目症):寄生虫をもったブユが刺咬することで伝播する眼および皮膚の寄生虫症です。目に重度のかゆみや病変を引き起こし、視覚障害や永久失明を引き起こします。
  • 住血吸虫症:吸虫の幼体による感染症です。感染は、淡水性の巻き貝から幼虫形態の病原体が水の中に放出され、人の皮膚と接触して侵入することで起こります。
  • 土壌伝染性蠕虫症:人の糞便から排出された(蟯虫を含む)土壌を介して伝播する一群の腸管内の蠕虫感染症です。

※厚生生労働省検疫所HP 「顧みられない熱帯病、それぞれの概観」