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ウクライナ その8 ロシア侵攻はなぜ始まったのでしょうか・・・

ロシアが、隣国ウクライナに侵攻して47日が過ぎました。

世界各国における人権の保護とその啓発が目的の国連人権高等弁務官事務所(Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights:OHCHR)は、昨日、ロシアのウクライナへの武力攻撃が始まった2022年2月24日午前4時から2022年4月5日午前24時(現地時間)までの同国内の民間人犠牲者は3,776人で、死者が1,563人、負傷者が2,213人と発表しました。死者の内訳は男性379人、女性237人、女児24人、男児43人で、性別不明の子どもが63人、大人が817人としています。犠牲が多いのは、ロシア領に近接する東部のドネツクとルハンスク州です。ウクライナ側、ロシア側の軍関係者の犠牲者数は含まれていません。

ウクライナへのロシア軍侵攻で生じた死傷者数の大小が問題ではありません。

私そしてあなたといった個人には、生きているか死んでしまうかです。それは数で表現されるべきものではなりません。さらに、たとえ生きながらえたとしても、それまでの日常、騒いだり、笑ったり、泣いたり、怒ったり、喧嘩したり、悪戯したり・・・の日々の思い出や生活、郷土とのつながりが破壊されてしまいます。ウクライナの人々で、いささかも心に傷を受けていないといえる人はいないでしょう。そしてそれは、かつて同じ国の住民でもあった人々を殺めているロシアの兵士たちのこころにも傷を残しているのではないかと、私は思いますし、そうであって欲しいとも思います。

ウクライナとロシアは、かつて政治的に同じ国にされていたというだけでなく、先祖代々に入り組んだ人間関係、人種的交叉があります。親戚や祖父母は云うに及ばず、両親の一方がロシア人、他がウクライナ人という方もおいでです。

ウクライナで起こっていることは、人が起こしたことであるが故に一刻も早く終えるべき、収めるべきことで、それが可能なことです。

先に書きましたが、2017年に31年目のチェルノブイリを訪問した際の大統領は、人気お菓子メーカーのオーナー、チョコレート王と呼ばれていた大富豪のポロシェンコ氏でした。ミーハー度を上げた私も、通訳さんにつれられてスーパーで大統領チョコレートを買い求めました。2019年選挙では現ゼレンスキー大統領に代わりましたが、約10年、二代続けて親西欧大統領です。実際、2017年の短時間の訪問時にも痛感したのは、首都キーウの人々はご自分たちはヨーロッパ人との意識をお持ちの方が多いこと、つまり国民の意向は西欧志向と申せます。しかしです。ポロシェンコ大統領の先代は、お父上はポーランド人かタタール人(北アジアからシベリア、カザフ東ヨーロッパに居住、ロシアにも多い民族)、お母上がロシア人のヤヌコーヴィッチ大統領でした。

2013年、ウクライナは、将来の本格的加盟を視野に、ヨーロッパ連合(EU)と政治と貿易に関する協定の仮調印を済ませました。しかしロシアからの圧力があったとされていますが、ヤヌコーヴィッチ大統領は調印を見送りました。だからとも云えますが、EU加盟を目指してきた人々は当時の野党と共に反大統領活動を起こしました。国内で発生した大規模反政府デモに対し、その昔からあったらしいウクライナ内務省管轄下の特殊部隊?民警とよばれていたベクトルという特殊部隊が民衆鎮圧に動きました。この2014年ウクライナ騒乱の結果、ヤヌコーヴィッチ政権が倒れ、親西欧政府が誕生したのですが、この前後・・・のどさくさと申すと失礼ですが、この間に起こったことのひとつがクリミア半島の共和国独立宣言と直後のロシアへの併合でした。ベクトルという、前近代的な組織は、その後、解散させられましたが、政府軍に属したメンバーと、東部の親ロ勢力に入った人々もおられたとか、ウクライナといっても、まったく一色ではなく、殊に東部の人々はお互いに微妙な関係、感覚の中で暮らしておられたのだろうと推測できます。特に、ロシアへの近さに関しては、地勢的なものや血縁的なもの以上に、冷戦構造を引きずっている世代も、まだ、おいでなのかもしれません。

現在のヨーロッパ諸国は経済的連携であるヨーロッパ連合(European Union:EU)で連携しており、EU対ロシアですが、もう一つ、冷戦構造を引きずっている機構がヨーロッパに残存しています。第二次世界大戦後の冷戦構造をなしてきた軍事同盟としてのNATO(North Atlantic Treaty Organization 北大西洋条約機構、ヨーロッパと北米30ヵ国が加盟、加盟独立国への外部攻撃を相互防衛する集団防衛システム)対ロシアです。殊に、昨年12月、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ジョージア、ウクライナが加盟希望国として認められた上に、さらに多数国が、NATO平和のためのパートナーシップに参加していることは、一方の雄だったロシアとしては、ちょっとやそっとではなくムカつく事態なのでしょう。

そのNATOに対抗してつくられたのがワルシャワ条約機構(Warsaw Treaty Organization/Warsaw Pact Organization)でした。冷戦がはじまった後の1955年、ソビエト社会主義共和国連邦を盟主とする東欧の社会主義諸国からなる軍事同盟でした。そもそも対NATOであったのですが、1989年の冷戦状態の終結、東欧各地での自由化運動などもあって、1991年3月には機構そのものが廃止された上、同年12月には盟主ソビエト連邦が無くなってしましました。

第二次世界大戦の敗北後、いわゆる軍備は持たないと宣言し、また、ただの一回もアクティブな戦争関与がなかった日本では感じることもない微妙な地勢問題、地続きの国境を持たない私たちには理解を超えた不穏な状況もあるのだと、私は思っています。

そしてさらに歴史的に入り組んだ民族性、政治的に押し付けられたり切り離されたりした地域性もあります。実際、かつては同一国であったこともあるウクライナとロシアの二ヵ国の歴史を読むと、対立の理由がそれほど簡単でないことは判ります。しかし、武力行使や、まして核攻撃の可能性を云々するなど、あってはならないことです。

毎日の報道から感じることですが、戦場は確かにウクライナという国であり、その前線で戦っているのはウクライナ軍・・・そして住民ですが、オールというには語弊がありますが、まるで全世界がロシアと対決しているような感も否めません。白か黒か、はっきりしたいものには、ロシアのプーチン大統領は黒で、ウクライナのゼレンスキー大統領は白である、だから世界の多く、特にヨーロッパとアメリカが応援していると思いたい・・・判りやすいです。戦火を避けて避難するウクライナの人々を百万、数十万の単位で受け入れている東欧諸国にとっては、ウクライナが倒れたら、次は我が身・・・の危機感もあるでしょう。こうして世界中がロシア悪者一色で固まってしまったら、どうなるのか・・・とフト気になります。かの国にも1億5千万に近い人々が暮らしています。

攻撃を決断し、命じたロシア大統領は、何時から何をどう考えてきたのか・・・かつての大ロシア帝国はソビエト連邦となり、それが「壊れて」CIS(Commonwealth of Independent States 独立国家共同体)となってロシアとなったものの、かつての栄光を取り戻せてはいない。が、かつての栄光を求めて人々を不幸にしても・・・と思うのは他国の私だからでしょうか?

ロシアであれ、ウクライナであれ、武力を望む人々はいないでしょう。大統領が決心されれば、現在進行形の武力行為は終わります。

本当の停戦交渉や、二国間そして世界の大多数国がついているようにみえるウクライナの復興は、まだまだ先の話としても、今や、破壊だけが目的になっているような現状は、その開始と同じように、ひとりの意思で止められます。

かつては同じ国民であった人々が相戦うことほどの悲劇は無いと私は思います。そんな例は、ベトナムにもあり、また、近い朝鮮半島でも続いています。

以前にも書きましたが、国と国の戦いが戦争です。一国内の複数武力集団が相争うのは「地域紛争」とか“Complex Humanitarian Emergency(複雑な人道の危機、CHEあるいはコンプレックスエマージェンシー)”と呼びます。云い方はどうでも良いのです。いずれにせよ、ひとりひとりにとっては、誰が攻撃しようが、生じることは同じなのです。

ウクライナで進行している禍々しい状況を見るにつけ、なぜ、人類は戦いを止められないのか・・・と思います。