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ウクライナ その9 ウクライナを超える対立へ

ロシアがウクライナを攻撃してから54日が過ぎました。

隣国へ攻撃・・・一国の大統領の布告によって始まった国と国の武力対立ですから戦争ですが、この人為災害は、今や、世界全体を蝕みつつあります。

色々な災害があります。通常、地震や台風など自然災害では最大規模のイベント(出来事、地震なら最大震度の揺れ)の後災害の力は小さくなってゆきます。そして、わが国では自然災害なら、発生後2ヵ月近くも経つと被災現場はかなり処理が進み、仮設住宅が建てられ、被災された人々もほんの少しですが、ゆっくりできる時間と場所を持てます。もちろん、まだ行方不明者がいたり、捜査が続いていたりして本当に気持ちが落ち着いてはいないのですが、少しは心身を休められるようになっている・・・救援者の立場からみた災害サイクル的に申しますと、災害の勢いが収まっていない「発災期」、災害の威力が衰えず、逃げまどったり避難が必要な「急性期」という時期はほぼ終わっています。もちろん、災害の継続時間が長い火山爆発では年余のコトもありますし、環境破壊や地球温暖化など、複合的で広域で年単位の長期間型災害はこの限りでありません。

戦争は自然災害ではありません、人間の意志で始まる人為災害です。

先日、セヴァストポリ港を本拠とするロシアの黒海艦隊の旗艦「モスクワ」がウクライナからのミサイル攻撃とされていますが、爆発・火災を起こし沈没しました。黒海艦隊は、バルチック艦隊と共にロシア海軍史ではよく知られたものですが、ロシアが黒海あたりに執着するのは、そもそもユーラシア大陸の北から東部のほとんどを占めているものの、この国には不凍港(冬も凍らない港)がなかったからともされてます。1547年イヴァン大帝が、初めてロシア帝国を名乗って以来、この国は何だかんだと南下政策を取っているような気がします。かのナイチンゲールが関与したクリミア戦争(1853-56、南下するロシアとオスマントルコ・大英帝国・ナポレオンのフランス・サルディニア公国連合軍の戦い、明確な勝敗はつかなかったがロシア側戦果は皆無)も、1979年のアフガニスタン侵攻も、現在のロシアーウクライナ戦争につながる2014年の政変ドサクサ!!に紛れたウクライナ領クリミア半島併合や東南部ウクライナの「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立承認、そしてロシアへの併合など、少し振り返ると、今の戦火の火種は、この頃にあるような気がします。それにしても、ある国の艦隊の旗艦が沈没する・・・良いコトか悪いコトか、私はため息がでました。もちろん戦争です。ヤッタ側のウクライナには良いことでしょうが、ヤラレタ側のロシアでは、戦闘時中枢でもある旗艦が攻撃されて沈没とは、幾重にも受け入れがたいことでしょう。まず、海軍の戦力、とくに指揮能力の低下、実質的戦闘力の減衰、海軍だけでなく軍全体の面子にかかわり、そして、その結果、絶対に報復が激化する・・・

「ロシア アメリカに対し、ウクライナへの武器供与を非難 Russia warns U.S. to stop arming of Ukraine – The Washington Post」

との記事がありました。悲しいことですが、この戦いは、もう、世界規模に広がっていると、私は感じます。

戦いの場はウクライナです。

少数の義勇兵の存在も報じられていますが、戦っているのはウクライナ国籍の人々とロシアの人々です。でも、もう世界がこの戦争のことを無視できなくなっていることは事実です。

世界中の武器・先端兵器が供与され、戦略が授けられ、資金が援助され、ゼレンスキー大統領がいくつかの国の国会でスピーチされているからではありません。明日は我が身かも知れないと危機感を抱いている東欧やNATO加盟を検討し始めたフィンランドやスウェーデンだけでなく、これまでの政策を変えてまでスイスがウクライナ支援を打ち出したからではありませんし、わが国が、ウクライナからの避難者を受け入れていることや、世界的な経済制裁にかかわっているからではありません。コンピューターが、AIが蔓延した現在、情報は瞬時に世界中に広まります。にもかかわらず、誰もこれを止められないばかりが、まるで火に油を注いでいるような・・・

自然災害の救援で世界が一つになることは好ましいことかもしれません。

毎日、時々刻々と報道されるウクライナで起こっていることごとを見聞きしながら、人間の意思が関与する人為災害・・・戦争で、世界がひとつになっても何もプラスはないと、私は実感しています。起こるべきは、お互いに武器を置くことしかありません。武力行使を続けることで、どんな建設的な未来があるのでしょうか?

国が国に対して武力を行使すること、死者とけが人の数が増え、建物は破壊されつくし、肥沃な農業の地と街は荒れに荒れて行きます。そして、伝統や歴史が破壊される中で、人々の心も荒んでゆく・・・一日も、一刻も早く合意すること、それは武力行使を止めること・・・議論はそれからです。