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Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

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七夕さまとオウムアムア(初めての遠来の客)

毎年のように七夕<タナバタ>を取り上げてまいりましたが、今年も、懲りずに、天の話を。

6月30日、北海道大樹町(タイキチョウ)拠点のベンチャー企業「インターステラテクノロジズ(IST)」が作った小型観測ロケット「MOMO(モモ)」2号機が、同町の発射場から打ち上げられました。直後に落下し炎上した場面をTVでご覧になった方も多いと思います。幸いというべきでしょうか、人命にはかかわらなかったとは申すものの、その瞬間まで、成功に向けて努力されてこられた方々の無念さ、そして高額であろう投資を想うと、他人事ではなく、穏やかではおれませんでした。

その大樹町は、地図で見ますと十勝の真南の太平洋側に面した町、「宇宙のまちづくり」を標榜し、航空・宇宙分野の実験や飛行試験を積極的に誘致しており、その関係の施設が多いそうです。1970年代に8,800人を超えていた人口は、本年3月31日現在5,641人、面積815.68平方キロメートルなので、人口密度は6.92人/平方キロメートル・・・ちなみにアフリカのガボン7.13、中央アフリカ8.00と同程度、つまり、1辺1キロメートル(歩いて15分程度)の正方形の中に居住する人間の数が約7人です。

高額な資金を投じて、なぜ、人間の関心は宇宙に向かうのでしょうか。未知に対する純粋な科学的興味もありましょう。今や、地球と同じような生物の生存可能性のある天体の発見や資源探索もあるようで、かなり政治的意図も強くなっているように思います。1633年6月22日、地動説をとなえたガリレオ・ガリレイは異端者として有罪となり、終身刑を課せられました。後に「それでも地球は動いている “E pursi mouve”と云ったとか云わなかったとかですが、約500年後の宇宙天文学の進歩をどう見ていることでしょうか?

ところで、昨年10月19日、ハワイ大学の研究員ウェリク氏が、同大学ご自慢の「パンスターズ1(Pan-STARRS, Panoramic Survey Telescope And Rapid Response System)望遠鏡」でとらえた一連の画像の中に、謎の天体が見つかったそうですが、これが何と、太陽系の外から飛来したとされる初の天体だと判りました。

太陽系の外からやってきて、昨年10月頃、地球のそばを通り過ぎたこの物体は、最初、A/2017 U1と呼ばれ、後に、ハワイの現地言葉で「遠方からの最初の使者」を意味する「オウムアムア(Oumuamua)」との名前を与えられました。そして、現在に至るまで興味深い議論をもたらしています。

一時はUFO、宇宙船!!と期待?もされましたが、オウムアムアは、岩と氷の固まりからなる太陽系外からの初飛来物であることが確立しました。また、オウムアムアは、数時間ごと、正確には7.34時間ごとに明るさが10倍も変化することから、細長い形をしており、幅/直径40メートル、長さ400メートルの物体・・・天体と推測されましたが、塵やガスの尾がないことから、彗星ではなく、どこかの別の恒星の周りで形成された小惑星とみられているのです。そして、通常、太陽の周りの楕円形軌道をまわっている地球などの惑星とことなり、オウムアムアは、太陽の引力を振り切り、時速13万8千キロメートルの速度で地球から遠ざかっていることも判りました。このような所見は、オウムアムアが、地球に近かった数日間になされた世界各地での観測からですが、そもそもは太陽の引力に引かれて、太陽系外から時速9万キロ(秒速25キロ以上)で近づき、太陽と水星の間を通り抜け、発見される5日前、昨年10月14日には、地球から最も近い約2千400万キロを通過していたのです。

また、恐らく、数億年単位で宇宙空間を漂流していていたため、宇宙線にさらされた表面は暗い赤みを帯び、特異な形状をしているのだろうと考えられており、他の彗星とは異なり、太陽に接近した時にもガス噴出がないことから、揮発性の物質などはすべて蒸発してしまっているのだろうと考えられています。

残念ながら、このオウムアムアはどんどん地球から遠ざかっているため、もはや地上からの望遠鏡では観測できなくなっていますが、天文学者たちは、宇宙望遠鏡を追跡しているそうです。このままの旅を続けると、オウムアムアは、2019年1月頃、土星の軌道を越えて太陽系を離れると予測されています。

ウーム、宇宙戦艦ヤマトとか宇宙戦艦テラミスとか、ドラエモンののび太の宇宙漂流 を思い出しますね。と云うのは夢がありましが、現在、宇宙には4,500トンもの宇宙ゴミが、最高時速2万8千キロメートル/時で地球の周りを回っているそうです。大概のものは、大気圏に入って燃え尽きるのですが、そのスピードからは、ホンの小さなゴミでも、宇宙船や人工衛星の表面を傷つけ破壊するに足るそうです。

人工衛星の打ち上げ失敗から、ちょっと夢のない話に終わりましたが、街のあちこちの笹には、何と願いを書きましょうか?