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お風呂-在宅看護と入浴介助

今日は立冬です。立春、立夏、立秋もありますが、冬の入口を示す立冬こそ、私にはピンと来る季節の区切り目です。と申すは、冬は鍋料理のシーズン到来を歓迎する気持もあります。そして、もう一つの冬好き理由はお風呂、そして温泉です。

海外勤務時、また、短期でも、いわゆる途上国の、それもかなり田舎的地域を訪問しますと、バスタブ湯船はまずない、そして毎日キチンとお湯が出ることはまずないのです。食べ物、習慣その他治安も含め色々ありましたが、それらに文句は申しません。が、ゆっくり湯船につかりたい・・・温泉にゆきたなぁと思ったことは何度もあります。左様、ワタクシは遊女ならぬ湯女です。

ある国のある地方で、お風呂と云うより、入浴と云う習慣がないと聞きました。皆様、一見、こぎれいな民族衣装ではありましたが、そこはかない独特のカオリであったことは事実、ここに生まれていたら、私も一生お風呂に入らなかったのだろうか・・・ちょっと想像を超えていました。

さて、私どもが行っている「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」は4年目の後期講義が昨日から始まりました。2カ月の講義、3カ月の実習を終えた研修生諸氏は、一段と起業家マインドを固めて下さった様子、きりりと引き締まったお顔がそろいました。

そんな中、先輩からお風呂がらみのメイルがまいりました。

『認知症で、一年以上も前から、入浴なさらない方がおいでだったと思召せ。

理由は、入浴したお積りになられているため、どんな看護師が訪問し、どんなにあの手この手を尽くしてもだめ。「オ風呂?ハイッテイルワヨ!!」とおっしゃり、お風呂場までお連れすることも叶わなかったそうな。看護師たちは、足浴をし、お化けの指先(見た事あるのでしょうか?)のようにひどい形に固まったままの足のユビの爪を整え、出来る限りのケアをしつつ、疎通性をつける努力も続けました。当然、頭髪はドレッドヘア(細かいカールやウェーブをいっぱいかけたチリチリの縮れ毛を三つ編みにしたスタイル、アフリカ系の人々やレゲエミュージシャンに多い個性的へアスタイル)様で、何とかかんとか、なだめすかしてドライシャンプーを行うのが精いっぱいであったそうな。

私どもの研修修了生が運営する在宅看護センター/訪問看護ステーションのスタッフたちは、1年間、心を込めたケアと共に話しかけ続けました。

終に大きな変化が起きました。なんと、その方がデイサービスにいくことを了承し、そして1年ぶりに入浴されたそうな、勝利の入浴介助の栄誉を得たのは、スタッフのどなたかは書いてありませんでしたが、うれしい涙の報告が参ったのです。たかがオフロ、されどオフロです。

背後には、看護師の訪問なンぞ不要!と仰せだったご主人さまが、看護の威力に目覚められ、看護師の行うケアに納得、理解を示されるようになったこともあるそうですが、1年かかりましたが、デイサービスとともに、今では看護師たちの訪問を楽しみに待たれるところまでこぎつけたと。他人の手を借りることも悪いものではないとの認識から、やっとその方らしい生活が戻ってきたらしいところです』と、報告してくれました。

誰でも年をとることは止められません。誰も認知症になりたいと思ってなるのではありません。誰も頑なな老人になろうとも思ってはいません、少なくとも私は。けれども、徐々に、私たちは厄介な年寄りになってしまいます。さらに、そうなったら、それを解決するすべはないのでは・・・

この女性、頭髪がドレッドヘアからストレートに戻ったように、意思疎通の覚束ない頑固一徹の、少し困りもの生活から脱して、静かな最後の人生が始まっているのではないかと思います。看護の勝利!ですね。

日本財団在宅看護センターの一つを経営する、まだ、若きセンター長は、「在宅看護で出来ることはほんの小さなことごとで、多職種連携なくしては、このような方を支えられません」ともメイルに記載しています。そして、「自分たち看護師だけで、すべてのことをやろうと思うのは無理だとの前提で、他のサービスとうまくコーディネートできれば・・・」とメイルは結ばれていました。

冬至には、ゆず入りのお風呂に入ろう、差別用語ですが、<ボケ>封じと云われました。では、そうなっている人には、どんな効果があるのか、メイルの続きを待ちましょう。