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笹川健康賞そしてジュネーブ

毎年のことながら、World Health Organization(世界保健機関、以下WHO)総会時に、世界のPublic Health(公衆衛生)に貢献されている個人や団体を顕彰するためのWHO笹川健康賞の授賞式の日がやってまいりました。

この賞は、1984年、日本財団創設者笹川良一翁と、当時のWHO事務局長で、国際保健で常識ともいえるHFA(Health for All、すべての人に健康を)という崇高な理念を唱え、また、そのための戦略Primary Health Care(プライマリーヘルスケア)を推進されたマーラー博士によって創設されました。笹川記念保健協力財団は、その準備を担っています。

1984年。医学部で臨床、研究、教育に従事していた私の記憶は、ロスアンゼルスオリンピックだけでした。後にGlobal Health(国際保健)に転じて知ったことは、インド中部マディアプラデシュ州の都市ボーパールでのユニオンカーバイトの爆発事故です。今も、その後遺症に悩む人々がおられこるという、人為災害史上記憶されるべき化学工場事故の典型です。そんな頃に、この賞が創設されていたのです。

毎年、世界各国から推薦された候補者は1月開催の審査委員会で決まります。今年の受賞者は、ポーランドの“Childbirth with Dignity Foundation”という団体、受賞理由は「国内における妊婦対策活動への寄与」です。

現在、私ども笹川記念保健協力財団は、活動の一つのケア関連で、緩和ケアや在宅看護のための人材育成に精力を注いていますが、どちらかと申せば、やや高齢者対策シフトの感なきにしもあらずです。が、今回、珍しくヨーロッパからの受賞者で、妊産婦や新生児にも意を尽くす機会を与えられていることを、ちょっとしたバランスであり、とてもうれしく思っています。

さて、昨年のジュネーブは滅多にない好天気で、WHO総会の行われている欧州国連本部(Palais des Nations、通称パレ)の廊下から、麗峰モンブランの写真を撮れましたが、今年は肌寒い曇天、たまに小雨もパラつきます。

ジュネーブは世界有数の観光地ですが、車なら10分も走ると、あたりは農場、ブドウ畑、牛や羊のだけの牧場が広がり、とても自然に恵まれた、しかし小さな街です。が、約20の国連機関が本拠を置くだけでなく、さまざまな関連事務所は100も150もあるとか、また、世界金融の一角を担っていること、それに比較的おおらかな人口移動政策もあって、人口20万弱の小さな町ながら、1/3は外国籍の住人です。かつて住んだ頃、観光地を除くと、あまりフレンドリーではない感もありましたが、あまりにも色々な人々が往来する中で、現地古来の住人は、そんなに愛想良くもできない・・・のであろうかなどとも思いました。

が、とても成熟した地域環境、自分が嫌なことは絶対に他人にもしない…とでも申せましょうか。自己の確立した大人の街と思いました。

今回の任務は、総会の間、ハンセン病制圧のために各国保健大臣ら要人と面談される日本財団笹川会長に陪席することで、大きな会議場パレの中を移動することがあります。一週間強、WHO貸切のようなパレですが、それに参加するためのネームタグをぶら下げた世界各国の保健関係者が闊歩しています。その中、時折、ゾロゾロと団体様とすれ違います。パレの見学者団体で、色々ないわく因縁のある部屋や、飾り物、また軍事的活動以外の国連活動での犠牲者を弔うパネルなどの解説を受けています。このツアーには、5年前に、当時奉職していた看護大学の学生と参加しましたが、その時の女性ガイド氏は、旧ソビエトからの移民だと仰せでした。

本日は、受賞者のためのWHO事務局長マーガレット・チャン博士も出られるランチ、そして夕方の授賞式で大きな行事は終わります。受賞者のスピーチが楽しみ・・・

笹川健康賞受賞者に
贈られるトロフィー