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Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

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財団40年周年 歴史の重みと未来への想い

先週末、私ども笹川記念保健協力財団は設立40周年記念の催しをもちました。
これまでお世話になった方々をお招きしてささやかにとの当初の意図は、過日の新聞広報をご覧になってのお申込みもあって、沢山の皆さまにおいで頂きました。
改めて、これまでのご支援下さった皆様、そして当日ご来駕下さいました方々に、こころからお礼申し上げます。
財団が生まれた1974年は昭和49年でした。私は、小児科医として働いた国立大阪病院(当時)から、母校に戻り、臨床検査医学という新しい分野で、臨床・教育・研究を始めたばかりでした。この年、何があったか・・・近頃はネットで調べることは簡単ですが、思い出すことがふたつあります。ひとつは、アメリカではニクソン大統領、日本では田中角栄首相がともに失脚したことでした。それに先立つ数年、日本では、赤軍派事件があって、何とはなく、世の中が騒然とした感とともに、為政者が正義にもとる手段を講じたことで職を追われたことに、釈然としないショックを受けました。チョット青臭いことでしたが・・・
もうひとつは、郷里宝塚での思い出です。当時、大学病院勤務とは申せ、検査医学に属したこともあり、受け持ち患者を持たないコンサルタント的立場でしたが、ある日、後輩の受け持つ血液疾患患者の症状が急変し、その対応を済ませ、車で1時間半ほどの宝塚に戻ったのは深更でした。後の阪神淡路大震災で損壊しましたが、当時住んでいた築200年の古屋敷は、宝塚歌劇場や今は閉鎖された動物園、遊園地から徒歩10分ほどの地でした。その劇場近くで、長い、長い行列を見かけたのですが、こんな時間に何?と思ったまま、忘れていました。それは、その後、宝塚歌劇団の代表的かつ古典的になった「ベルサイユのバラ」と関係していたようでしたが、確認はしていません。ただ、それをきっかけに、全10巻の「ベルバラ」原著を入手し、熱読しましたが、ついに宝塚を鑑賞することはなく、40年・・・です。Nativeヅカ人としては遺憾なことですが・・・
さて、その頃、ハンセン病は世界で蔓延している感染症のひとつでした。1974年5月に開催された世界保健機関(WHO)第27回総会の決議では、前年1973年のWHO事務局長の年次報告を引用しつつ、「・・・ハンセン病は広く蔓延している深刻な疾患であることを鑑み、新たな疫学的方法を開発し、また、新しい微生物学的技術、特に動物予防接種や免疫学的手法を用いれば、この疾患対策を促進し効果を示せるだろう・・・(Recalling that leprosy is still a widespread and serious disease; and Considering that the new microbiological techniques, particularly animal inoculation, and immunological methods as well as the development of new epidemiological approaches seem likely to speed up leprosy control and make it more effective,・・・)」とあります。当時の年間新規感染者数は、恐らく5、6百万人規模だったでしょうか。
ハンセン病は、現在、西アフリカで猖獗を極めているエボラウイルス病の対極ともいえる超慢性の感染症です、弱い感染性と弱い病原性、滅多なことで発病は致しません。しかし、毎年毎年、数百万の患者が現れれば、当然、感染の機会は増え続けます。
しかし、当時、世界の保健情勢・・・それに関心をもつ人は、私の周囲には皆無、後に国際保健に転進した私自身も、自分の研究テーマ以外に海外の情報には眼が向いていませんでした。唯一の途上国との接点は、しかしJICA(現国際協力機構)の依頼によるパラグアイからの見学者を受け入れ、そのために同国の保健情勢を調べたことでした。
そのような時代に、笹川良一、石舘守三という財団創設者は、世界のハンセン病を制圧しようとの壮大な計画を立てられたのですね。本当に、我彼の差を恥じるばかりです。
それから40年、発病者が人口1万人あたりに1人以下というWHOの云う公衆衛生学的制圧目標は、ブラジルを除いて、達成されています。そして現在の世界の新規発病者数は20万人強にまで減っています。しかしこの段階に到ってから、ほとんど改善は見られません。
加えて、この病気に対する偏見や差別は、多くの国で未解決なのです。私どもは、WHOの健康の定義にある「身体的、精神的そして社会的にwell-being」であることのため、ハンセン病をめぐるさまざまな問題に取り組みつつ、次なる40年のスタート切りました。引き続き、末永いご支援ご指導をお願い申し上げます。
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日本財団 笹川会長の記念講演
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当財団名誉会長日野原先生もご一緒に、財団のバースデーケーキのろうそくを吹き消して頂きました