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シリーズ12 在宅の仲間たち〜 「在宅看護センター北九州」

産業の街、学術の街に在宅看護を!! 日本財団在宅看護センター「在宅看護センター北九州」

法人名:一般社団法人 在宅看護センター北九州
事業所名:訪問看護・リハビリステーション 在宅看護センター北九州
所在地:福岡県北九州市若松区小敷ひびきの3丁目4-13クレイントータス102

HP:https://nurse-kitakyu.com/

E-mail:vn-ss@nurse-kitakyu.com
電話:093-742-6006(事業所固定)
090-8568-0035(代表会社携帯)
FAX: 093-742-6036
開業:2018年6月1日
代表理事:坂下 聡美  研修4期生

「真剣になることと深刻になることは違う・・・」
2018年6月――間もなく1年前になりますが、北九州学術研究都市「学研ひびきの(北九州市若松区)」に「在宅看護センター北九州」を開設しました。 それから半年が過ぎ、年が改まって、やっと、ふと目を閉じると、慌ただしい中に何かやっと小さな軌跡を感じられる日々となりました。

法人設立、挨拶回り、営業活動、人材リクルートそしてこれというスタッフを確保する。何もかも初めての、今までしたことも、考えたこともない仕事の数々でした。やっと開業。しかし、月末近く、毎月の収支計算のときには、不安と焦りと、そしてちょっと期待が交錯します。「本当に、これでいいのだろうか?大丈夫か?」「経営するということはこういうことなのかな・・・」一日を終えて布団に臥すと、このような思いが頭の中をぐるぐると飛び交う日々、今も。

不意に沸く不安、暗い気持ち・・・ そんな時、私は、あの希望に満ち溢れていた「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」第4期生の門をくぐった頃を思い出します。

初めての東京暮らしも興奮させられましたが、何よりも触れるほどすぐ傍で、本当に、あの先生がここにおいでなる!! 私たちのために講義下さっている・・・夢かとも思う日々、高名な先生方が、ご研究ご経験のすべてを凝集された、言葉にはあらわせないほど、濃密な講義をして下さいました。そして、先輩の苦労の現場を実感させられる実務研修、厳しい課題や宿題もありましたが、本当に、充実した、夢のような8か月間でした。人生最大の貴重な経験でした。それが、今もワタシを支えています。

「あの頃の自分と今では、一体、何が違うのだろうか。」
研修の終盤には、事業計画書や事業モデルをもとに、5年、10年後をも考えました。しかし、現実は全く予測とは異なります。判っているようで、見つからない答え・・・「ジグソーパズル」で、当てはまるパーツの納まり処が何となく判っている場合と見当もつかない場合のような。「これは、絶対必要だ。けど、どうすれば・・・見当がつかない・・・」 膨大なパーツはある。けど、たったひとつ、当てはまるものを探すのが至難の業でした。当てはまらないパーツを無理に押し込もうとすると、やっぱり何だか変・・・当たり前ですが。一からやり直し。再度、膨大なパーツと「にらめっこ」が続きます。

今、私たちは、「在宅看護」を拓き、「在宅看護センター」というジグソーパズルを、ここ北九州市若松地区でつくりつつあります。縦横平面ではなく、立体的なマトリクスのジグソーパズルです。髙さや奥行、そして時間という軸もある複雑で、困難で、しかし挑戦するに値する価値あるジグソーパズルです。

北九州市について

私たちの本拠がある北九州市について、少し説明します。
北九州といえば、何を想われますか?
1963(昭和38)年、5つの市(門司・小倉・戸畑・八幡・若松)が合併して誕生した政令指定都市で、四大工業地帯(京浜、中京、阪神、北九州)の一翼でもありました。九州北部には、有数の炭鉱をありましたが、1901(明治34)年に、官営八幡製鉄所が設置されて以降、北九州は、日本の近代化を支えました。第二次世界大戦後も、鉄鋼・金属など重工業を中心に、高度経済成長の原動力でした。しかし、産業構造の変化に伴い、日本の近代化を支えたこれらの古典的重工業に代わり、現在は自動車、ロボットなど近代産業とともに、かつての環境汚染の経験をばねに生まれたエコ産業が売りでもあります。現在の人口は約95万人で、全国13番目、九州地方では福岡市に次ぐ規模ですが、人口減少と高齢化・・・は進んでいます。

続いて、地元若松区です。
北九州市若松区東部には、大正時代の近代港湾都市の姿を肌で感じられる旧市内が、洞海湾に沿って広がり、かつて日本一の石炭積出港として栄えた歴史を伝えています。その洞海湾は、かつて死の海とよばれるほどの汚染を経験しましたが、今はその昔の美しい海を取り戻しています。しかし、当地区の高齢化率は30%を超え、そして人口流失が激しいのです。

他方、若松区西部は、豊かな自然環境や都市環境を活かし、大規模で良好な住宅供給が続いています。先端技術の教育・研究機関(九州工業大学大学院・早稲田大学大学院など)との連携も進み、北九州学術研究都市「学研ひびきの」が整備されています。そして、近隣の産業医科大学とともに、豊かな未来を築くための知的基盤(教育インフラ)の発展が期待されています。いま、若松区は、人・自然・産業が共存する街へ大きく生まれ変わろうとしています。

密接なボートレース場について

「在宅看護センター北九州」の活動エリア内に、ボートレース若松とボートレース芦屋があります。両ボートレース場は、全国24ヶ所のボートレース場のうち、本場間の直線距離がたった約10kmの近い位置にあります。そして、われらが「日本財団在宅看護センター北九州」は、その真ん中にあって、ボートレース場は身近なご近所さまなのです。日本財団や笹川記念保健協力財団の助成を受けた施設として、その社会的役割を十分に発揮して参りたいと思います。

スタッフ、人材について

訪問看護経験の豊かなスタッフら看護師6名  (うち非常勤2名)、理学療法士1名 事務2名計9名体制で活動しています。
産業医科大学付属病院、北九州市療育センター、北九州各区医師会などのご指導ご協力を得ながら、神経内科(認知症・神経難病)や精神科との連携の下、ターミナル期の利用者や医療的ケアの必要な子どもたちの支援が主な活動です。

「いかに質の高い看護を持続的に提供し続けていくのか。」

このことについては、常にスタッフ間で議論します。
関係機関の皆さまの信頼を確保し、連携を強化するためには、私達が、常によりレベルの高い看護を目指してゆかねばなりません。

もう一つの課題は人材確保と育成です。
地域の看護師等の「再活」支援を中心とするretraining center活動にも取り組んでまいります。

ご自宅で最期をとの希望に必ずしも応えられていないことは低い自宅看取り率が示しています。高齢化が著しく進展しているにもかかわらず、地域主体の在宅/訪問看護に従事する看護師の数は増えているとは云いながらも微々たるものです。人材確保と育成は、いつも頭の中にあり、常に頭を悩ましている問題でもあります。

未来に向けて

開所から4カ月、スタッフの努力と関係者のご支援により、目標とする月訪問件数を達成できました。私たちは、地域社会という静かな水面に、在宅看護という小石を投げたような気がしています。水面に拡がる同心円状の波動が美しい模様を広げています。

「高ぶる意識をさらに高め、それを如何に広く伝えていくべきか。」
社会の潜在的な看護力を呼び起し、相互に意識を高めあい、社会問題に取り組んでいく・・・・。このことは、きっと「看護師が社会を変える」という、研修事業の目標に繋がると信じています。