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「はやぶさ2」と在宅看護センター

惑星探査機「はやぶさ2」が、「リュウグウ」からお土産を持ち帰りました。

「リュウグウ」・・・地球から2億8千万kmもはなれていますが、それでも地球に比較的近く、そして、びっくりしますが、特に地球に衝突する可能性が大きく、かつ衝突時には地球に大きな影響を与えると予測されているため「潜在的に危険な小惑星(Potentially Hazardous Asteroid, PHA)」のひとつである地球近傍小惑星だそうです。

2014年12月3日、丸6年も前に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」は、時速41,760kmで飛び続けて、一昨年の2018年6月にリュウグウから20kmに到達しました。そして、諸々の観察のほか、その後の資料採取に必要な機材を投下し始めました。2018年11月5日の、ターゲットマーカーBという機材は、なんと着陸候補地の中心からたった15.4mしか離れていない地点に落としています。かくも正確な技術を2億8千万kmの彼方で実践できるなんて、びっくりを通り越しました。それは、ちょっとした爆破を加えてリュウグウ表面だけでなく内部からの試料も採取するためでしたが、何と、爆破の際に本体は、リュウグウの後ろに避難している・・・なんとカシコイことでしょうか。ち密な計画とそれを千分の1、万分の1も狂いなく実践できたなんて、息をのむばかりです、私は。

そして、現地・・・という言葉もおかしいですが、そこでの調査と得た試料を入れたカプセルを持って、去年2019年11月13日に、地球への帰還に入りました。

12月5日14時半、高度22万kmで、「はやぶさ2」本体から切り離された直径40cmのカプセルは高度10kmでパラシュートを開き、予定通り、12月6日に、オーストラリア南部ウーメラ近傍の砂漠に無事着地しました。現地で待機されていた宇宙高級研究開発機構(JAXA)回収担当者が、カプセルの発する信号で位置を確認し、昨日7日午後、回収に成功されました。私には言葉にできないスッゴイことが、まるで目の前で、熟練した人が行っているようにスムーズに行われたのです。日本の宇宙研究の実力、ホントに、ホントにすごいとしか申せません。「はやぶさ2」の「リュウグウ」ミッションはひとまず成功裏に完遂されましたが、持ち帰られた試料は、宇宙が、地球がどうしてできたのか、地球上の水はなぜ存在しているか・・・といった、壮大な宇宙の成り立ち、地球誕生の根源的な解明に連なる研究に使われるそうです。それがこれから始まります。

ロケット、カプセルといった無機質な言葉ですが、発光しながら大気圏に突入し、お役目終了と云わんばかりに、オーストラリアの砂漠に横たわるカプセルをTVで見ていますと、何と健気なと・・・ちょっとジーンとしました。

さて、「はやぶさ」という宇宙探検ロケットを強く意識したのは、鹿児島県肝属<キモツキ>郡肝付<キモツキ>町(旧内之浦町)にあるJAXAの打ち上げ施設を、正確に申すなら、その一部を比較的近くに眺めたことがきっかけです。

肝付<キモツキ>町は、錦江湾と桜島をはさんでカニの爪のように伸びている鹿児島県南部のふたつの半島の東側の大隅半島の、その東側の太平洋に開ける志布志湾に面した地域です。国道448号と269号線が大隅半島南部をぐるりと回っていますが、最も太平洋に近い山の中腹に内之浦宇宙空間観測所があります。なぜ、そんなところを目近に見たのか・・・ですね。

肝属<キモツキ>郡は、宇宙観測で知られている肝付町のほか、東串良<クシラ>町、錦江町、南大隅町からなります。その東串良町に、私どもの研修を終えられた林弥生氏が訪問看護ステーション「のびる」を開業されています。その開所式にうかがったのが最初です。

近くには・・・といっても車で数十分はかかるところですが、海上自衛隊鹿屋<カノヤ>航空基地があり、そこには、特攻隊で有名な知覧に勝るとも劣らぬ第二次世界大戦の記録が提示されています。一見以上の価値があります。その他、行ったことはないのですが、ばら園あり、銀杏の大木群や楠の大木、温泉あり、美味しいものイッパイの地です。

自然は豊か、広々として、やはり南国風と思える棕櫚の木もかなり見受けられます。そして、個々のお宅は、その昔、例年の台風襲来を偲ばせる平屋でがっちりした造りが多く、どっしりとした塀が並んでいる集落もあります。

が、肝属郡の面積712㎢に対し人口は、近年33,000人余り、つまり人口密度は47人/㎢(日本の最大人口密度の東京都豊島区の297,677人/㎢の1/6,300)と過疎化し、当然のように高齢化率は高い・・・40%を超えようとしています。このような地域では、病院や診療所、開業医が存在しても、多くの高齢者にとっての通院は容易ではありませんし、何より、病気を治すというより緩やかに低下しつつある健康状態や不具合をどう支えるか・・・が重要です。

超近代的と云うより、未来志向の科学でもある宇宙観測のおひざ元では、保健医療の原点でもある「すべての人に健康を!」とか「誰一人取り残さない!」を全うするために、仲間の林氏とそのスタッフがご苦労して下さっています。

この辺りを走っても、めったに人影をみかけることはなく、車の往来も多くはありません。だからといって、この地の人々が、健康問題を持っていないわけではありません。健康は、私ども個々人の基本的人権であり、健康を維持あるいは回復するための手段も、また、基本的に必要なことです。世界は、SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発)を共通のテーマとして動いていますが、国々のすべての地域で、それらをまっとうすることは、最大多数の保健専門家である看護師の積極的関与、介入がなければ不可能です。

JAXAの進める宇宙科学を基礎とするロケット開発とそのミッションには、100を超える企業組織が関与しています。それはそれで素晴らしい・・・ここは日本人と申したいですが、人類の叡智、エネルギー、時間と信念とロマンが詰まっています。そして、「はやぶさ2」の先代、「はやぶさ」は、林氏サンの目の前の内之浦から打ち上げられています。

ここしばらく見聞するコロナは、たった数ヵ月で世界を席巻してしまいました。ウイルスの広がりには、的確な決断と素早い対応が必要ですが、二代の「はやぶさ」事業に要したような長い時間をかけた検討や展望が、健康対策には必要です。

「はやぶさ2」は、関係者だけでなく、沢山の人々が期待するカプセルを大気圏に噴出した後、新たな宇宙の旅に向かいました。次なる目的は、11年後に地球と火星の間の小惑星の調査だそうです。

その頃、2031年の地球、日本、そして肝属郡はどうなっているでしょうか?