会長ブログChairman Blog

新型コロナ流行に対するマスクとレストランの影響

世界で厄介な、あるいは広範に広がる感染症が発生すると必ず、WHOと同じかそれ以上に名前が出てくるのがアメリカ疾病予防管理センター(Center for Diseases Prevention and Control)、通称CDCです。CDCは、世界中の人々の健康と安全にかかわっていますが、1946年設立の米国連邦政府機関です。が、CDCの情報の信頼性や迅速性とともに、世界各地の、大概は辺境といわれる不便な地への関与密度の濃さもあって、何か起こると、まず、CDCホームページを見る関係者は少なくありません。医師になった半世紀も前から、恩師のご指導を守って?CDC発出のMorbidity and Mortality Weekly Report(罹患率死亡率週報)をみるよう習慣付いていますが、加えて30年前の難民支援時からは、この組織の方々との交流が始まって、今日に至っています。もう、皆、引退されていますが・・・

さて、そのCDCは・・・と、偉そうに云えるほどよく知ってはいませんが、前大統領があまり科学界にお優しくなかった・・・こともあったのか、ちょっと元気がない感ありでした。しかし、去る1月のジョー・バイデン第46代大統領就任にあわせて着任された新センター長に、アメリカ有数のマサチュセッツ総合病院感染症部長兼ハーバード大学医学部内科学教授であったRochelle Paula Walensky博士が着任されました。わざわざ申すこともないですが女性、ついでに、嬉しいことはかつての職場、看護大学卒業生が、目下、インターンです。

そのCDCから、マスクとレストラン使用の影響についての調査結果が報告されました。Association of State-Issued Mask Mandates and Allowing On-Premises Restaurant Dining with County-Level COVID-19 Case and Death Growth Rates — United States, March 1–December 31, 2020

州指示マスク着用義務化と、レストラン内での飲食によるCOVID-19の感染数と死亡の変動を、昨年3月1日から12月31日にわたってみています。

結論から申しますと、マスクはCOVID-19の予防・・・感染と死亡を防ぐのに効果的で、レストランでの食事は、感染を広げるということです。

もう少し詳しくみますと、この調査はアメリカの49州と首都のワシントンDCでの各種公的指示を基にしています。で、マスク着用の義務化は、実施から20日以内の州内各郡レベルの毎日のCOVID-19症例と死亡増加率と統計的に有意な減少と関連し、レストランでの食事は、それが再開された後41〜80日以内の各郡レベルのCOVID-19の発症者数と死亡率の増加と関連していることを示しています。つまり、州政府がマスク着用を義務化し、レストラン内での食事を禁止することは、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)に潜在的にさらされることを少なくし、結果として地域でのウイルスの拡散、そして感染を減らすのに役立つとしています。

日本では、当たり前・・・になっていることでもありますが、ちょっと感動するのは、各州において、何月何日にマスク着用が義務化されたとか、レストランで食事することが解禁されたということを行政記録からとり、一方、州内の各郡で記録されている感染者数、入院数、死亡数を、20日間毎の変動として、統計学的にもきちんと比較していることです。例えば、2020年4月には、49州とワシントンDCのレストランでの食事が禁止され、そして6月中旬までに、すべての州とワシントンDCで、これらの制限が解除されています。一方、感染者に関しては、2020年3月1日から12月31日までの新型コロナ感染症の症例と死亡数を見ています。

その結果わかったことは、マスク着用の義務化は、実施後1〜20日、21〜40日、41〜60日、61〜80日、および81〜100日の間の、日毎の患者数および死亡増加率の低下と関連し、レストラン内での食事の許可は、レストラン再開後の41〜60、61〜80、および81〜100日の毎日の患者数の増加と毎日の死亡数の増加と関連しています。

州のマスク着用義務化やレストラン閉鎖は、州政府のWebサイトに出ているのですが、もちろん、それを単純に義務化、解禁としたのではなく、コード化し、マスクの義務化やレストランの閉鎖の発効日や有効期限と、それらが適用された郡のその他の制限緩和政策が変数化されていますが、例えば、州指示のマスク着用義務は、1)自宅外、2)小売業、レストラン、食品店でどうかなどが規定されています。レストラン閉鎖は、テイクアウト、ピックアップや配達サービスの有無または制限も加わっています。レストランが屋内もしくは屋外での食事提供は、州指示のレストラン閉鎖が解除されたこととして定義してあります。

この調査期間中、全米3,076(97.9%)の郡でレストランが当該店での食事再開が許可されましたが、制限解除後、1〜20日、21〜40日における新型コロナ患者数と死亡数の増加は統計的に有意ではなく、制限解除後の61〜80日および81〜100日に、死亡率が2.2および3.0%ポイント増加(両方ともp<0.01)することが判りました。などなど・・・詳細が統計学的処理がなされた報告です。

何と面倒くさい・・・と思いますが、世界というか、国際社会では、こんなレベルで保健計画が議論されることを知っておくことは大事です。つまり、新たな感染症対策には、証拠に基づく戦略の組み合わせが基本なのです。新型コロナウイルスは、主に感染者(発病者ではない!!)からの呼吸器飛沫吸入で感染します。だからこそ普遍的なマスク着用が感染防止に有用である・・・アメリカでは、 2020年4月、39州とワシントンDCがマスク着用指示を発令しました。マスクがなくとも、物理的に6フィート(約2m以上)離れていると感染は回避されますが、この距離を常に維持することが難しくマスクが必要になります。

アメリカでは、今後、さらに感染性の高い新型コロナウイルス変種が出現、拡散する危険性を鑑みて、このようなマスク着用、レストラン内食事禁の取り組みがますます重要になってくるとしています。