会長ブログ Chair's Blog

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「十日の菊」的コメントながら・・・

オリンピックが目の前に迫りました・・・その前を新型コロナウイルスが邪魔し続けています。

誰もかもが、ヤキモキしています・・・

「へッ!オリンピックやるでしょう、何があっても・・・」とおっしゃる方も、

「ムリムリ、こんな状態では、無観客でも何千人数万の選手や関係者が集まる・・・無理、絶対!」のお考えもあるのでしょう。

私自身は、やって欲しい気持ちとリスクを避けたい気持ちで、毎日毎夜、TVの前でため息をついています。ことはオリンピックですが、問題は新型コロナパンデミックという医学的公衆衛生学的問題です。欧米の医学保健系雑誌にもたくさんの論評が出ています。

時宜を得ない贈り物、アドバイスを9月9日重陽の節句の翌日に菊を持ってくる例えで「十日の菊」と申しますが、その例えのコメントです。

伝統あるNEJM2021年7月1日号に、「オリンピック参加者をCovid-19からまもるー緊急のリスクマネジメント対策が必要(Protecting Olympic Participants from Covid-19 — The Urgent Need for a Risk-Management Approach)」との記事が出ていました。私なりに、オリンピックは開催する・・・そのために取るべき具体的な提案という意味で、最も納得できた論評です。訳文を下に示します。国際オリンピック委員会(IOC)の対策表とその具体案もついていますが、中身だけご高覧下さい。

『オリンピック参加者をCovid-19 からまもるー緊急的リスクマネジメント対策の必要性 NEJMの記事

7月下旬、200ヵ国以上からの選手約11,000人とその支援スタッフ4,000人が、2週間以上にわたって東京オリンピックを戦い、1ヵ月後、さらに選手5,000人が参加するパラリンピックが開催される。参加者と日本国民をSARS-CoV-2感染から護るための国際オリンピック委員会(IOC)の「2020年東京大会プレイブック」では、参加選手は自前で顔面保護具を用意するよう指示され、予防接種は推奨されているが必須ではない。来日後は不定期に検査を受けることになっている。

2020年3月、IOCが東京オリンピック2020開催延期を決定した際、世界の症例数38万5,000に対し、日本の発病者数は865例だった。2021年にはパンデミックが収束するか、それまでにはワクチン接種が普及すると思われていた。14ヵ月後、日本は、発病者7万人を抱え、緊急事態となっている。また、世界全体では、感染者1,900万人だ。元々の新型コロナウイルスSARS-CoVより感染力が強く、毒性も強いらしい「懸念される変異種」が広まっている。いくらかの国ではワクチンが使えるが、日本では人口の5%未満しか接種されておらず、これはOECD(経済協力開発機構)加盟国中で最低だ。ファイザー社とバイオンテック社が、全参加選手にワクチン提供を申し出たが、ワクチンが承認されていないか入手できない国が100以上もあるため、すべての選手がオリンピック前に予防接種を受けられる保証ではない。さらに、選手の中には、ワクチン接種によるパフォーマンスへの影響を心配したり、医療従事者や社会的弱者よりも優先されることへの倫理的懸念から、予防接種を受けない選択をしたりする人もいる。また、いくつかの国では選手にワクチン接種しているものの、15から17歳までの青少年には接種していないし、15歳以下の子どもに接種する国はさらに少ない。結果として、体操、水泳、飛び込みの選手ら10代の若者はほとんど接種されないことになる。定期的検査が行われない場合、オリンピック期間中に感染し、帰国後のリスクとなる場合が200以上の国にある。

著者らは、オリンピック開催遂行というIOC決定は、最良の科学的証拠に基づいていないと考える。「プレイブック」は、参加は、選手各自の責任と主張しているが、選手が直面する様々なレベルのリスクを区別することも体温測定や顔を覆うことといった対策の限界を認識していない。同様に、IOCは他の大規模スポーツ大会の教訓にも耳を傾けていない。NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)、ナショナル・バスケットボール・アソシエーション、女子ナショナル・バスケットボール・アソシエーションなど米国に本拠地を置く多くのプロリーグは、成功裏にシーズンを終えた。が、その手順は厳格で、空気感染、無症状者からの感染、密接な接触といった定義の理解に基づいていた。専門家による継続的な検討を経て導入された予防策は、専門家による継続的検討を経て、選手にはホテルのシングルルームを提供、少なくとも連日の検査、ウェアラブル(身に着け得る)装具による接触者監視など、厳格な接触者追跡が挙げられる。しかし厳格な手順にもかかわらず、Covid-19のアウトブレイクは発生し、複数試合が中止になっている。2021年1月、エジプトで開催された男子ハンドボール選手権では、同宿2人の1人が陽性となり、2人とも試合出場不可という、たった二人でも同宿はだめという限界を示した。2月に開催されたオーストラリア・オープンでは、ホテルからの暴露(疫学ではウイルスなどの問題因子に個人がさらされること)と2地域での流行発生があった。5月初旬のクリケットのインディアン・プレミア・リーグは3週目で中断された。

IOCのプレイブックは、厳密な科学的リスク評価に基づいて構築されておらず、どのようにウイルスにさらされるのか、暴露要因は何か、リスクが最も高いのはどんな参加者かなど、考慮していない。確かに、ほとんどの選手はCovid-19関連の深刻な健康被害のリスクは低い。が、一部のパラリンピック選手には、リスクが高い人々が含まれる可能性もある。さらに、著者らは本プレイブックでは、トレーナー、ボランティア、役員、交通機関やホテル従業員など、それらの人々が関与することでオリンピックが成功裏に運営されるはずの何千人もの人々を適切に保護できないと考える。

世界保健機関(WHO)と米国疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスが人から人に感染するに際して、感染力を持った小粒子(エアロゾル)の吸引が重要だとみなしている。イベントを計画する際、最初の課題は、曝露リスクが最も高い人々、曝露リスクが最も高い仕事、活動、場所を特定することだ。エアロゾル吸引に関して、最も重要なことは、空気中の感染性粒子の濃度とその滞在時間である。空気中の感染性粒子の濃度は、感染者数、活動の種類(エアロゾル発生程度)、特定空間での感染者の滞在時間、換気程度などによって異なる。密閉空間で長時間滞在すると、粒子が空間全体に分散してしまうため、物理的な距離の取り方はそれほど重要ではなくなる。

IOCプレイブックは、イベントの活動レベルとそれを行う場所によって、低、中、高リスクに分類し、それに従う対応を示すべきと考える。例えば、ヨット競技、アーチェリー、馬術は野外で間隔を空けて行う競技だからリスクは低いと考える。ラグビー、ホッケー(フィールドホッケー)、フットボール(サッカー)は、野外だけれども接触は避けられないので中程度のリスク、ボクシングやレスリングのように屋内で行われ、かつ密な接触が避けられないものは高リスクである。体操のように、個人競技だが、屋内で行われるものは屋外競技よりもリスクは大きいと考える。選手や関係者の安全を守るための手順は、このようなリスクレベルに応じ、また、会場ごとの違いに応じて対応できる(はずだ)。

また、プレイブックは、競争が行われない空間を含めて、会場ごとの違いにも対応できる。多数選手が集まるスタジアム、バス、カフェテリアなど小規模閉鎖的空間は、屋外よりもリスクが高い。ホテルは、相部屋という密空間(3選手相部屋が標準)、食堂など公的空間、パンデミック前の設計による不備な換気システムなどリスクは高い。

新型コロナ感染者は、発症48時間前に感染している可能性(症状が全く出ない人もいる)があり、日常的な体温測定や症状チェックでは、発症前や無症状感染者を検出することが出来ない。NFLでの経験からは、(2回は無理でも)少なくとも1日1回のPCR検査がベストだ。IOCでは、全選手に接触履歴と健康状態を追跡できるアプリ搭載のスマートフォン保持を計画している。しかし、多くの場合、オリンピック選手が、連絡先追跡のできる携帯電話を持って競技することはほとんどない。エビデンス的には、近接センサーを備えたウェアラブルデバイスの方が効果的なことが示唆されている。

著者らは、直ちに、WHOが労働安全衛生、建築・換気工学、換気工学、感染症疫学のそれぞれ専門家と選手代表を含む委員会を招集し、上記要素を考慮して東京オリンピック(委員会)にリスクマネジメントについてアドバイスすることを推奨する(表参照)。このような試みの前例として、2016年、ジカウイルスが公衆衛生上の国際的懸念であり健康上の緊急事態だったブラジルオリンピック・パラリンピック大会の時のガイドラインがある。グローバルな健康の危機対策戦略は、各国の相互関係を理解することが重要だ。もし新型コロナウイルスと対峙する私たちのこの経験が、「真の決定的瞬間」であるならば、これは世界における社会の契約再構築という私たち人類の価値と利益を実現し、将来の脅威に備えるための絶好の機会となる。

オリンピックの聖火が灯るまで2ヶ月を切った今、オリンピックを中止することが最も安全な選択肢かもしない。しかし、オリンピックは、世界が断絶している今、私たちをつなげる数少ないイベントのひとつだ。オリンピックの精神は、他の追随を許さない、人々を鼓舞し動員する力がある。私たちが聖火の周りに集まるのは私たちが、人々を分断するものではなくて、私たちをつなぐものの価値を認識しているからだ。私たちが安全に連帯するため、オリンピックを開催するためには緊急の作戦が必要だと考える。』

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