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コロナその後・・・追加ワクチン、変異株、そして

猖獗を極める(悪いことが勢いを得ること)と云う表現が必要だった都下そして各地のコロナ嵐ですが、感染者数が減ったことで、やや小康を得たようにも見えますが、医療施設での実態は、まだまだ、大変な状況です。第一線の医師や看護師、その第一線を支える多様な専門職や資材補給に関わられている製造業や輸送関係者、そしてそのご家族などなどを思いますと、やはりコロナとは国を挙げた闘いです。でも、少しピークが下がったことで、どなたも、少しはホッとされる間が出ていて欲しいと、後方で願っています。

まず、予防接種。9月13日、日本のワクチン接種率が1回目は人口の63%、2回の完了者も50.9%を超えたと報じられました。出遅れ感無きにしもあらず、でしたが、ここまで進んだことでホッしたい気持ちになります。が、それに冷水をかけるような【ブレイクスルー(通り抜け)】とよばれる接種済の人々の感染が報じられています。アメリカで12万6千人余りの観察で、きちんと2回接種した人々の間で101人が感染した、率にして0.08%という報告や各地のブレイクスルー感染数、入院数、死亡数情報もあります。わが国では、少し古いですが、6月までの3ヵ月間に67人のブレイクスルーが報告されています。

ワクチンを接種したのに、何故?ですね。

とても解りやすい長崎大学大学院医歯薬総合研究科小児科森内浩幸先生の説明が厚労省HPにあります。要は、新型コロナやインフルエンザでは、ウイルスが人体に侵入すると、その侵入現場(コロナでは鼻やのどの粘膜)で、すぐに激しく増殖し、体がもっている免疫力(ウイルスをやっつける力)が動員されるより早く発症する(病気が顕わになる)のに対して、麻疹や水ぼうそうでは、鼻やのどの粘膜に取りついたウイルスは、少し奥にある扁桃やリンパ節に落ち着いた後、増殖し始め、それから血流にのって全身に広がって症状を顕わにする・・・つまり発病までの期間=潜伏期が長いので、その間に、予防接種で獲得していた体内免疫力が作動し発病を抑える、ということです。いずれにしろ、ブレイクスルーがあるにしても、新型コロナ対策の重要な手段はワクチンによる免疫力です。正しく理解しておくべきは、如何なるワクチンも100%有効、100%無害ではない・・・けれども集団の健康を護る最大の武器であることです。ただしブレイクスルーも、必ず、新たな感染機会があるわけですから、当面の間、マスクを正しく使うことは必須です。

そんなこともあり、もう一つの話題として、追加免疫・・・ワクチン接種3回目の話もあります。

エエッ!もう一回やるの?1回目や2回目で発熱した方は、あまり歓迎されないでしょうが、ブースター効果(押し上げ効果、追加免疫)と申しますが、もう一度追加すると、しっかり免疫力が増強されることを申します。

イスラエルでの研究ですが、昨日、ブースター接種を受けた人々では、接種12日後から、通常のワクチン2回の人々に比べ、感染する割合は1/11、重症化は1/20に下がるとの報告がでました。ウーン!なら、頑張って3回目やるか、と決心出来ましたか?

ところが、です。世界で最も権威があり、かつよく読まれている科学雑誌のひとつ“Science”誌2021年8月27日号に「倫理違反?または不必要?COVID-19ワクチンのブースター論争が激化(Unethical? Unnecessary? The COVID-19 vaccine booster debate intensifies)」という興味深い論評が出ました。要は、金持ち国が自国民のために3回目のワクチン接種することは、貧しい国でも必要なワクチンが回らなくなる!それに本当に3回目が有効かは疑問もある・・・ということです。ご自分が、金持ち国の高齢者なら「3回目をやって欲しい」と云い、自分が、貧しい国の田舎の村長なら、「ワクチンは是非、わが村にまわして欲しい!」とお願いするでしょう。個人の立場と集団の立場・・・は違います。そして、もし、あなたが製薬企業の販売部長なら、高く買ってくれるところに売りたいと思い、WHOのような国際機関の貧困国担当なら、世界的な大流行に対処するには、貧困国にもワクチンを廻さねば・・・と云うでしょう。

通常、私たちがめぐりあう医療の場では、個人が持つ病気の治療が目的です。たまに集団中毒もありますが、たいていの場合は独りの病人の問題です。私が、がんになった!!なら、私のがんをどう治療するか・・・です。が、感染症大流行や環境汚染、また、アフリカやアフガンなどの飢餓(広域の農作物がとれない)では、一人だけを助けても解決しません。ことに感染症では、ある一人の患者を救うのに膨大な経費をかけるのではなく、大多数をまもることで集団をまもるという解決を目指します。公衆衛生・・・パブリック(大衆の)ヘルス(健康)対策です。私自身の経験で申しますと、一人の肺炎患児を治療していた日本の小児科医から、万の桁の難民の子どもをハシカからどう護るか・・・治療医学からパブリック・ヘルスへの頭の切り替えに苦労しましたが、地球上のCOVID-19対策には、世界各国の予防が必要なことは明確です。ブースターをどうするか・・・悩ましい問題ですが、またまた、興味深い文献に出くわしました。

腸管寄生虫感染がCOVID-19重症化を抑える効果(Effect of co-infection with intestinal parasites on COVID-19 severity: A prospective observational cohort study)」です。あちこちで興味深い医療論評を発表される医療ジャーナリスト大西淳子先生による解説記事が日経メディカル8月25日号にもでています。エチオピアでの研究ですが、腸に寄生虫を持っている人はCOVID-19が重症化しなかった、殊に、COVID-19の死亡者11人(1.5%)中、腸管寄生虫陽性者はいなかった、虫が死を防いだ・・・と。ただし、治療用に寄生虫を感染させたのではなく、たまたま、新型コロナ患者の寄生虫感染を調べた結果であり、今後、治療のために寄生虫を使う・・・と云う話ではありません。

そして、まだまだ、先が読めないのは、本名重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)と命名された新型コロナウイルスの変異のありようです。

本年6月、世界保健機関WHOは、既に出現していた数種の変異株を2群に分け、特徴を示しています。まずは懸念される変異株(Variants of concern<心配>VOCs)、他は興味ある変異株(Variants of interests<興味>VOIs)です。VOCもVOIも、最初は地名が付いていましたが、それぞれギリシャ文字で表し、名称とともに重要な科学的医学的特性をまとめています

なぜ、懸念グループと、興味グループなのかですが、最初に見つかった所の地名による名称は、その地への偏見の理由となりかねないので、ギリシャ文字による新方式で研究進歩や治験の所見を幅広く共有できる、つまり世界的な研究プラットフォームを提供することとしています。

で、現在、懸念組のVOCには、ギリシャ文字のアルファ(α 初発イギリス)、ベータ(β 南アフリカ)、ガンマ(γ ブラジル)、デルタ(δ インド)が属し、注目あるいは興味組のVOIには、同じくギリシャ文字のイータ(η 英国)、イオタ(ι アメリカ)、カッパ(κ インド)、ラムダ(λ ペルー)、ミュー(µ コロンビア)が属しています。

斯斯然然<カクカクシカジカ>、今後も、しばらくはコロナ談義が増え、医療施設や在宅での診療体制の整備や不備、また、地域での緊急施設の是非が論じ続けられるでしょう。

が、個人的に出来ることは、適正なマスクの適正な使い方、外出後のきちんとした手洗い、可能な限りのワクチン接種、そして密集、密接、密着を避けることに尽きます。

でも半分の道のりは越えてきたと申せましょう。落胆せず、なるべく短い制限期間を祈ると同時に、個々人の責任を自覚し、実践し続けましょう。