会長ブログChairman Blog

ウクライナ その3 屋根の上のヴァイオリン弾き

ロシア ウクライナ軍事侵攻 “80以上の施設攻撃”ロシア国防省

ウクライナで戦闘激化 ロシア軍、チェルノブイリ占拠

とうとう攻撃が・・・なぜ、ロシアが攻撃を始めてしまい、なぜ、ウクライナと世界はそれを避けられなかったのでしょうか・・・悲しい、という軟弱な感想は許されませんが、言葉もありません。

沖縄の知人から、その地の空がやかましくなっている感がある・・・と便りが来ました。日本政府も、次々の制裁案を出します。ロシアがウクライナを攻撃って、遠くの戦争・・・私たちに関係がないと言い切れません。何をしたらよいのか・・・

思い出しました。
「屋根の上のヴァイオリン弾き(Fiddler On The Roof)」ご記憶でしょうか?(YouTubeで、サワリがご覧になれます)

ウクライナ首都キエフ近郊で生まれたイディッシュ語(ユダヤ語とかヘブライ語とも云われるユダヤ系の人々が話す言葉)の作家ショーレム・アレイヘム(1859ー1916)の短篇小説『牛乳屋テヴィエ』が原作です。日本では、1960年代末から20年近く、名優森重久弥が牛乳屋デヴィエを続けられました。私は、1971年のアメリカ映画を見ました。

ウクライナのユダヤ人社会、宗教、伝統と異文化・・・ユダヤの歴史は、WHO緊急人道援助部で、パレスチナや東欧・バルカンを担当した頃には、基礎的必須知識でした。たまたま、本当にたまたまですが、高校時代、医学部か歴史学部か迷ったほど、特に世界史が好きだったことと、その昔、アメリカで働いた時の下宿の家主がユダヤ人女性、年間を通じ、ユダヤの行事とその故事来歴を教えて頂いたことが幸いして、WHOでは馴染みの地名や出来事、年号でした。

『屋根の上の・・・』の時代は19世紀末、主人公牛乳屋テヴィエとその一族は、帝政ロシア領ウクライナ地方のユダヤ系の人々からなる地方小都市アナテフカに住んでいます。黒い帽子、髭、金曜日にはユダヤ教の教会シナゴークに集まり、色々な催しを古式豊かに行う人々の日常生活が彩られています。今、その地は、ロシアの爆撃を受けているのでしょうか。

そのロシア軍が、昨日、占拠したチェルノブイリ原発・・・
1986年のチェルノブイリ原発事故では、周辺の多数の子どもたちに甲状腺がんが発生しました。少し国際保健的ですが、ご容赦を。

甲状腺は生きるのに必須の甲状腺ホルモンを産生しますが、その材料にヨード(以下原子記号的にヨウ素と書きます)が必要です。ヨウ素は、地球発生時、均等に分布したのですが、水に溶ける性質上、長い間、雨が降るたびに溶けて川を流れて海に到りました。そのため、海水は豊富なヨウ素を含み、一方、内陸部、特に高山地帯の土には、もはや、ヨウ素はほとんど含まれません。

そしてヒトだけでなく、多くの生物は、適量のナトリウム(Na)がなければ生存できません。そしてシオ(塩)はNaを含みます。過剰摂取も問題ですが、わが国の一日当たり摂取量は5~10gです。人類は工夫してシオを入手しました。海水を原料とする日本のシオは、ヨードが十分含まれますが、内陸部など、岩塩を用いる地域ではヨード不足による甲状腺腫(がんではない)が多発します。と云うより、成人のほとんどは、のどに大きなコブを持っている地域もありました。UNICEFやWHOがヨード添加塩を無料配布するのはそれを防ぐためです。

ウクライナは黒海に面していますが、その海は太平洋や大西洋のような外洋ではなく、地中海の奥の、奥のいわば内海であり、国全体も内陸部の広大な農業・牧畜地帯です。恐らく、岩塩が常用された時代もあると思います。

そして、原発事故!最初に放出される放射能はヨウ素・・・実際にはI(ヨウ素の原子記号は I:アイ)でその同位元素であるI 131 <ヨウ素131>です。放散したI 131は地上に降り注ぎ、草木に付着し、雨に溶けて土中に入り、また、草に取り込まれます。広い牧畜地帯で、のんびりと草を食む乳牛は美しい光景ですが、その牛乳にはたっぷりと放射性ヨウ素が含まれます。I 131の寿命(活性を持っている期間、通常半減期=半分になる期間として表現)は短く8日なのですが、チェルノブイリ事故後、数日間、事故が公表されなかったこともあって、ウクライナの大地に降り注いだヨウ素131を取り込んだ草をもぐもぐ食べた乳牛からのミルクをゴクゴクと飲んだ子どもたちの甲状腺には放射性ヨードが容易に取り込まれたはず・・・それが数年後の小児甲状腺がんの原因でした。

テヴィエの職業が牛乳屋・・・と云うことは、この地の人々は古くから牛乳や乳製品を多用されていたのでしょう。数年前、訪問したチェルノブイリへの道中、田舎風のレストランで頂いたミルクはとても濃く美味しかったのですが・・・

テヴィエは娘が5人、厳格なユダヤ教徒、頑固おやじながら、愛妻家で子煩悩・・・だからこそ、娘たちが伝統を離れ、自分が見つけたパートナーと結婚する・・・伝統と新しい生き方、葛藤しながら娘の門出を祝う・・・のです。その結婚式シーンですが、人々が手に手にローソクを持って集まり、歌い踊りました。荘厳な雰囲気、映画のいくつかの名曲名ダンスシーンの中でも、ここで歌われる「日は昇り 日は沈み(Sunrise, Sunset)」をは、今、戦争が始まった今、つらい気持ちで思い出します。

“Is this the little girl I carried?   Is this the little boy at play?
I don’t remember growing older. When did they?
When did she get to be a beauty? When did he grow to be so tall?
Wasn’t it yesterday? When they were small?

Sunrise, sunset. Sunrise, sunset
Swiftly flow the days. Seedlings turn overnight to sunflowers.
Blossoming even as we gaze.

Sunrise, sunset. Sunrise, sunset.
Swiftly fly the years. One season following another.
Laden with happiness and tears.

What words of wisdom can I give them? How can I help to ease their way?
Now they must learn from one another. Day by day
They look so natural together.

Just like two newlyweds should be. Is there a canopy in store for me?

Sunrise, sunset. Sunrise, sunset.
Swiftly fly the years. One season following another.
Laden with happiness and tears”

「あの小さかった娘が あの腕白小僧が こんなにりっぱになったのね いつのまにか
いつの間にか美しく いつの間にか逞しく 昨日まではまだまだ 幼いと思っていたのに

日は昇り 日は沈み 月日は流れ つぼみは大きな花となり 眼にもあでやかに咲いた
日は昇り 日は沈み 月日が流れ たち替わる季節ごとに 人もまた成長する 
どんな言葉をかけたら この子達を導びけるのか 自分たちで切り開いていくわ 日ごとに

日は昇り 日は沈み 月日は流れ たち替わる季節ごとに 人もまた成長する」 壺齋散人訳

今も、砲撃が続いている街があるのでしょうか?

ロシアのウクライナ嫌いなのか、ウクライナ住民のヨーロッパ偏向なのか、経済的、政治的意向でしょうか。外部の過剰な干渉あるいは無関心でしょうか。

ユーラシア大陸の東の端の平和の祭典オリンピックが終わり、世界の各地で対戦争対策が論じられてきました。でも、戦争が始まりました、何てことでしょうか!

武力はダメ、絶対に、絶対にだめ!
どうか、ウクライナの銃声が一刻も早く終わることを切に切に、切に祈ります。