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ウクライナ その10 世界の軍備費 SIPRIの報告

ロシアのウクライナ攻撃開始から2ヵ月が過ぎました。

激しい攻撃の様子を見ることにウンザリされている方もおいでかと思います。が、疾走する戦車、打ち出される砲弾、炎を噴き上げ、また、黒焦げになって崩れ落ちそうな建物、地下に避難している人々、その憔悴した様。2ヵ月間、ほとんど変わることなく、徹底的抗戦と支援を求めるスピーチを世界に発し続けておられる大統領、一方、攻撃者への非難と経済的外交的制裁は続けているが、いまいち、有効な手段にはなっていない国際社会。こんな光景を見慣れてはいけませんが、もう2ヵ月・・・自分の周りでこれが起こったら、どうなるのだろうか、まして2ヵ月も戦闘状態が続いたら一体どうなっているだろうか、と思います。

ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)が、2022年4月25日付けで以下のような報告を発表しました。

「世界の総軍事費は、2021年に実質0.7%増加し、2,113億ドル(約270兆円)に達した。世界の軍事費に関する最新データによると、2021年の最大支出者は、アメリカ、中国、インド、英国、ロシアで、これら5ヵ国だけで世界の軍事費の62%を占める。」

SIPRIは、スウェーデンの首都ストックホルムの一角にある人口6万強の小さなソルナ市にある研究所で、毎年“SIPRI Yearbook: Armaments, Disarmament and International Security” 『軍備・軍縮年鑑』を発行しています。この研究所は、首相の発案、王立委員会の提言によって、1966年に議会が設立しましたが、初代所長は、後の1982年にノーベル平和賞をアルフォンソ・ガルシア・ロブレスとともに受賞されたアルバ・ライマル・ミュルダール(Alva Reimer Myrdal 1902-1986)です。この方は同国の外交官、政治家ですが、同国の福祉政策を進めた方、また、この国の女性活躍の先駆けであったそうです。そして、パートナーのグンナー博士は、1974年にノーベル経済学賞を受賞しておられます。ご夫妻でノーベル賞・・・は放射線研究のキュリー夫妻がありますが、両親ともノーベル賞って、どんな感じでしょうか?

さてSIPRIは、設立当初から、武器産業や紛争関連データを年報として発表していますが、その目的は決して戦争、紛争をあおることではありえません。“The task of our Institute is to conduct research on questions of conflict and cooperation of importance for international peace and security, with the aim of contributing to an understanding of the conditions for peaceful solutions of international conflicts and for a stable peace”(私たちの研究所の任務は、国際紛争の平和的解決と安定した平和のための条件を理解するに貢献できることを目的として、紛争に関する問題と国際的な平和と安全のための重要な協力についての研究を行うことである。)とあります。

私は、1980年代に紛争地で働いた頃、いわゆる難民が発生する途上国のほとんどは武器を産生する能力を持たないのに、なぜ途方もない武力が使われ続けているのか・・・と思った頃から、武器が何処でつくられ、どのように使用地に移送されるのか不審に思った頃にSIPRIに行き着きました。当時は、毎年、ちょっと高価な年報を購入していましたが、今は、保健福祉・・・看護という平和産業に従事していることもあるので、毎年の購読はしていません。

今年の報告書は、2021年に世界の経済状況が回復したこともあって、軍備費がGDPに占める割合は2020年の2.3%から2.2%に0.1%下がっているが、パンデミックが2年も続いているにもかかわらず、世界の軍備費は記録的な額に達し、しかも7年連続で増えている!と書かれています。

それぞれの国の軍備費の分析もあります。例えば、アメリカの2021年 8,010億ドル(約103兆円・・・日本の予算は年間107兆円!!)は、2020年から1.4%減少し、対GDP比は3.5%と0.2%減少している、軍備研究費は2012年からの10年間に24%も増えているが、武器生産経費は6.4%減っているとか・・・そして研究経費の増加は、アメリカが次世代武力技術研究に精力を注いでいるのだろうと分析しています。

目下、ウクライナ侵攻を続けているロシアの軍備費は3年連続で増加、最終的な数字は484億ドルで、2020年予算を14%上回り、2021年の対GDP比は4.1%にも達し649億ドル(約8兆円)に増加、ウクライナ国境に沿った軍備配置が含まれています。が、ウクライナの軍備は、2014年のロシアによるクリミア半島併合以来72%も増加、2021年の軍備支出は59億ドル(7,600億円)に減少していますが、それでも国家GDPの3.2%です。

日本に関しては、2021年当初予算に、後に70億ドルが追加され、結果として支出は7.3%増の541億ドル(約7兆円)になり、1972年以来の年間増と報告されています。

このような趨勢から、過去10年ほどのウクライナとロシアの小競り合いを振り返りますと、今のロシアの侵攻は、予測されたもの・・・という意見があるのも判るような気もしますが、ホント、武器に使う経費とエネルギーをワクチンに向ければ・・・とつくづく思います。