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ナイチンゲール記章ーペシャワール会 藤田千代子氏の授章

今日は、お盆、そして第二次世界大戦が終わった日、わが国では77回目の終戦記念日です。

幼稚園に入る前の子どもだった私は、近くの小学校の朝礼台におかれたラジオから流れる・・・天皇陛下のお言葉・・・雑音交じりの放送にあわせて、軍人サンが肩を震わせて泣かれていたのをぼんやり見ていました。

それからの年限と共に、あと少しの人生をも想い、心静かにご先祖たちを偲び、今も砲弾が飛び交う世界のいくつかの地に生きる人々、そして戦わざるを得ない人々とその家族を想い、心からの非戦を誓います。戦わない・・・のではなく、戦いの無い世界・・・無戦です。

さて、先週 8月10日に、日本赤十字社名誉総裁である皇后陛下行啓の下、同名誉副総裁である秋篠宮皇嗣妃殿下、三笠宮寛仁親王妃殿下、高円宮妃殿下のご臨席のもと、第48回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式が行われました。

かつて畏友中村哲の片腕として、そしてその非業の死の後は、その意思・・・遺志をついで、ペシャワール会の中心ともなり、後継村上優会長を補佐している看護師藤田千代子氏と、日本赤十字社医療センター国際医療救援部副部長の苫米地則子氏が今回の授章者でした。

年を取ったら涙もろくなる・・・と申します。私は、幼児、泣きみそだったらしいですが、長じてはあまり涙が出ません。特に、40代で紛争地勤務を経験しましたが、そこでは泣いている時間がない、逃げねばならない、また、救援を指揮する、助けたり処置したりしなければならないことがあると、職業柄だったのかも知れませんが、泣いている間がない・・・を経験し、涙スイッチの入り方が鈍くなったように感じています。つまりそう簡単に涙は出ません。

が、今回は違いました。
恐れ多くも、皇后陛下から記章等を置いた盆を受けようとする千代子さんの後ろ姿に万感胸にせまるものがありました・・・アアッ、哲先生、あなたに見てもらいたかった・・・と思いました。そして、授章者を代表して、お礼の言葉を述べる彼女の緊張しまくっているらしい様子を拝見している間、その後ろに哲先生がいるように思え、三十数年昔、初めてテツと語り明かした日、多様な困難に立ち向かった彼らの日々に想いが飛んで、涙を禁じ得ませんでした。

第48回フローレンス・ナイチンゲール記章
授与式 パンフレットより

おめでとう!という言葉以上に、千代子さんが今後担う責務の重さにも思いが飛びました。が、これからは、ナイチンゲールも助けて下さるでしょう。

図らずも、8月15日は、昨年、なんだかもたもたと米軍が撤退した後、あっという間に、タリバンがアフガニスタン(以下アフガン)首都カブールに帰還した日でした。報道によれば、予測通りとも思えますが、かの国は貧困と飢餓と、そして差別が蔓延しています。思えば、1979年12月、王族が優位だった政権のごたごたの間、旧ソビエト軍がアフガン全土を支配したのでした。数年内に国民の1/3が隣国パキスタンとイランに避難し、長いアフガン紛争が始まりました。それ以来の約40年は、中村哲とペシャワール会の関与とあまり変わりません。国際社会という世界の援助は、ホントに色々しましたが、結果として残っているのは何か、です。

中村哲、藤田千代子そしてペシャワール会が成し遂げたアフガン東北部の、干ばつで荒廃した地での灌漑事業の成果は、幸い侵されることなく存続しています。

ご承知のように、女性への関与が難しいこの国にあって、特に女性と子どもの健康に関して、藤田千代子の存在はかけがえのないものです。

フローレンス・ナイチンゲール記章は、1907年の第8回と1912年の第9回赤十字国際会議での討議決議に基づいて制定された「F.ナイチンゲール基金」を基に、その生誕100周年にあたる1920年に始まりました。現在は、「平時または戦時において、傷病者、(身体)障がい者または紛争や災害の犠牲者に対して偉大な勇気をもって献身的な活躍をした者や、公衆衛生や看護教育の分野で顕著な活動あるいは創造的・先駆的貢献を果たした正規看護師や篤志看護補助者」を対象としており、原則生存者ですが、任務遂行中に殉職した者も含まれるとか。

手続きですが、ま、格式ある賞ですから手順がなかなかです。
まず、隔年に各国赤十字社、赤新月社が広報します、そして然るべきところから推薦がなされます。以下、私の推測ですが、それらを、各国の赤十字社、赤新月社が検討し、国際的な本部である赤十字国際委員会(ICRC)に推薦する。その各国から集まった候補者を、ICRCの委員会が、さらに、さらに慎重に審議し、選考し、最大50を決定するという次第。

そして、授与式は、「国の元首または赤十字総裁が記章の崇高な名誉にふさわしい厳粛な式を行って授与する」と規定されています。日本では、皇后陛下が日本赤十字社名誉総裁であられますので、皇后陛下が御手づから記章を留めて下さるという光栄な授与式でありました・・・と過去形なのは、記章を着けるためには、「密着」が必要なので、今回は授与後、舞台下で記章を着けて再度壇上にもどる・・・という手順でした。

記章は、銀メッキされた金属製アーモンド型メダルで、表面は燭を手にしたナイチンゲール像と「1820〜1910年フローレンス・ナイチンゲール女史記念」の文字があり、裏面には受章者名と、ラテン語で「博愛の功徳を顕揚し、これを永遠に世界に伝える」と刻まれています。

藤田さん、苫米地さん
「第48回フローレンス・ナイチンゲール記章」授章、おめでとうございました。業績は以下をご覧下さい。 https://www.jrc.or.jp/press/2021/0513_017652.html(日本赤十字社)