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久しぶりのマスク

新型コロナが現れて、ほぼ3年が過ぎようとしています。私たちが、この新たな感染症の脅威を感じ始めたのは、2020年2月頃でした。国立感染症研究所の報告をみますと、「2020年1月20日に横浜港を出港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス(DP)号の乗客で, 1月25日に香港で下船した80代男性が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していたことが2月1日確認された(1月19日咳発症)1)。2月2日に香港から同報告を受けた厚生労働省は, 2月1日那覇港寄港時に検疫を受けたDP号船員乗客に対し, 2月3日に再度横浜港で検疫を実施した。同日夜から検疫官が船内に入り, 全船員乗客のその時点での健康状態を確認しつつ, 出港時から2月3日まで発熱または, 呼吸器症状を呈していた人およびその同室者に対し, 口腔咽頭スワブ検体を採取した。一部の検査結果が2月4日に判明し, 31人中10人でSARS-CoV-2 RNAが検出された2)。なお, DP号は船員乗客各8の計16デッキに2名部屋を基本とする部屋があり, 世界57カ国から船員1,068人, 乗客2,645人の計3,713人が搭乗していた(集計時点により乗客数に変動あり, 乗客用客室を利用していた船員は船員として算出)。その後4月15日までに確定症例712例が確認され, 少なくとも14例の死亡が確認された(致命率2.0%)3)。また, その他に検疫官や船会社の医師ら外部から対策に入った9人の感染が確認された3,4)。」(IASR Vol. 41 p106-108: 2020年7月号)とあります。そうでした。それから今日まで、メディアが新型コロナを取り上げない日はありません。

このブログでも、何度も取り上げました。そしてマスク。当初のマスク不足は、保健医療者の必需品としてのN95や全身防御のための資材の不足とともに深刻でしたが、今では、安くて使いやすいものが出回っています。久しぶりに、マスクについてです。

よそ様・・・英国王室のお話ですが・・・
2001年4月のフィリップ殿下のご葬儀の際、エリザベスⅡ世陛下は黒いマスク姿でしたが、その約1年後、本年6月の女王陛下の在位70年を祝う「プラチナ・ジュビリー」では、王室のどなたもマスクではなく、また、ロンドンの街を埋めつくしたかのような人々もマスク一色はありませんでした。さらに、その3ヵ月後、2022年9月の女王の国葬でも、どなたもマスクではなく、現在、燃え上がっているFIFAワールドカップ2022では、ほんの数えるほど・・・のように見受けました。海外では、マスクなしが当たり前になっているように思えます。

最近、拝読した興味深いマスク論評と論文です。

まずナビスタクリニック(立川)山本佳奈先生の「MRIC Vol.22247 コロナ第8波で日本ではこのまま永遠にマスク着用を求められるのでは?という懸念」です。山本佳奈先生は、最初、女性の貧血で興味深い論評を発表されていました、今は色々な健康問題に積極的に発言されておられる若きコラムニストと拝見しています。このマスク論では、マスクがあたりまえすぎるようになってしまった日本で、「マスクの着用に関するリスクとベネフィットの両者を考慮しながら、「脱マスクへ向けた基準の見直しに着手」していただけることを期待したい」と仰せです。

ほんと、私も脱マスク・・・どうすればよいのかとは思っていますが、山本佳奈先生は、マスクの不適切な廃棄による環境汚染・・・プラスチックの大量誤食や、プラスチック袋が絡まることによる海や陸上の動物が命を落とす事例・・・も述べておられます。というのは、ほとんどの使い捨てマスクがポリプロピレンやポリエチレン、ポリスチレン製であることを考えれば、マスクの最後は、いわゆるマイクロプラスチック・・・微細なプラスチック片に分解され、陸上や水生の生態系に影響を及ぼすからと指摘されています。

皆さまのマスク処理は適正でしょうか?次いで、伝統あるNEJM(New England Journal of Medicine)2022;387:1935-46に載った“Lifting Universal Masking in Schools — Covid-19 Incidence among Students and Staff(学校での全校マスク着用の解除ー生徒と教職員スタッフ間のCovid-19の発生率)です。

結論から申しますと、ボストン大都市圏で、全員マスク制が解除された後の15週間で、生徒と教職員1,000人当たり44.9件の新型コロナ症例が発生した、そして教育の不公平さや学校における構造的人種差別(日本では、理解しがたいですが)の影響を軽減するためには、普遍的なマスク着用が特に役立つ可能性があるとしています。ウ~ム、マスクと人種差別・・・あまり、考えたこともないですが。

2022年2月、マサチューセッツ州は全州公立学校での普遍的なマスク使用政策を撤回しました。その結果、同州の多くの学区では、数週間内にマスク着用を解除、6月までマスク着用を維持していたのはボストンと近隣チェルシー地区の2学区のみとなりました。この過程は、学校におけるマスク着用の段階的解除が、2019年来の新型コロナ発生率にどう影響したかを調べる機会となったとしています。州全体のマスク着用制度維持中の新型コロナ発生率は学区全体で同じ程度だったそうです。制度撤廃後15週間も、学生と教職員1,000人当たり44.9人(95% 信頼区間32.6~57.1)の感染があった。ただし、マスク着用を長期間維持した学区は、校舎は古く状態は悪く、教室当たり生徒数も多い傾向があり、さらにこのような地域は低所得家庭からの学生や障害ある学生、英語学習を要する者の割合も高く、学生にも教職員にも黒人やラテン系が多かったそうです。これらの結果から、学校での新型コロナ発生率と対面授業減からの損失を避けるための重要戦略として、普遍的にマスク着用を支持したいとしています。