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Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

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第31回日本医学会総会

新型コロナのせいもあって、ここ数年、学会会場に行くことが本当に稀になっていました。この度、4年に一度の日本医学会総会が、東京国際フォーラム、有楽町一帯で開かれることを知って、久しぶりの対面学会参加を思い立ちました。と申して、会場に行ったのは一日だけで、あとの二日はネットで、あれこれ興味深い講演を渉猟し、週末はどっぷり学会三昧致しました。

丸の内仲通りでのタウンコンサート(日本医学会総会2023東京 博覧会公式Twitterより)

日本医学会の第1回総会は明治35年、1902年と申しますと、今から120年昔、当時は大日本帝国の時代、総裁としての宮がおられ、第1回は小松宮殿下、そして4年後の1906年の第2回は閑院宮・・・と云っても若い人はご存じないですね。そして会頭副会頭は、もちろん医学者ですが、第1回は田口和美(タグチカズヨシ)、北里柴三郎、第2回は、北里が会頭で、副が大澤岳太郎です・・・皆、歴史上の人物ですが、これらの先達は、江戸時代の終わりにお生まれで、最初は漢学、続いて蘭学を学び、日本に来たオランダ人らに医学を学び、そしてドイツやフランスに留学され、わが国の近代医学の道をつくられています。たった100年というか、一世紀の長きと申すか・・・歴史を感じます。

さて、不肖私は、臨床の場を離れ、そして後に従事した国際の現場からも離れて久しいので、いわゆる治療医学分野にしろ、基礎医学にしろ、社会医学系にしろ、どれもこれも、興味深い講演、お話ばかりでした。が、後期高齢者道をまっしぐらの私が、今後、このような新たな知識を行使することはないのではありますが、新しいこと、知らないことを知るのは楽しいことだと改めて痛感しました。もちろん、現職場で実践している地域医療、在宅看護の拡張強化支援事業に活用できる事項もたくさんありました。また、ご指導頂きたい先生方のお名前も、どん欲にメモりました。ネット参加は、知識情報を得ることは可能、そして楽チンですが、臨場感と申すか、会場全体がワクワクするような雰囲気を感じることはない・・・やはり現場が大事と思いました。

ちょっと素人っぽい感想ですが、大雑把に申すと、いわゆる伝統的医療にかかわる進歩・発展に類するものと、世界中がそれに追われている、いわゆるビッグデータ的範疇に類するものに大別されている印象を受けました。そして、前者は、難しくてよく理解できないないものが多く、後者は馴染みなく良く判らない・・・と、ちょっと情けない事態ではありましたが、学問や研究の進歩は日々切磋琢磨、時間をめぐるある種の戦いでもあると、当たり前のことを改めて痛感しました。

盛り沢山の発表のなかから、興味があって、理解できそうなもの・・・に参加しましたが、頭がパンクしそうな3日間、また、初日にのぞき見した展示もバラエティに富んでいて、真剣に廻るとへとへとになりそうでした。

第31回日本医学会総会の学術プログラム集と本総会の会頭 春日雅人先生著『医の変革』

初日、開会式に続く会頭らのお話の後、特別講演1の浅川智恵子先生の「科学技術と共に実現するインクルーシブな未来社会にむけて」は、感動を超えた、表現できない感情がわきました。

浅川智恵子先生は、一昨年4月、日本科学未来館の二代目館長にご就任になられました。その時、小学校時代の怪我がもとで失明されたこと、しかしながら、 健常者でも難しいようなご経歴を持たれており、日本IBMでの視覚障害者支援プロジェクトを推進されてきたこと、そしてコンピューターといえばIBM・・・のそのIBMの最高技術職であるIBMフェローであることなどを知りました。

先生は関西人で、私が通っていた高校のある街で、その頃にお生まれになっています。失明後ですが、日本の大学でイギリス・アメリカ語学文学を学ばれた後、さらに日本ライトハウス情報処理学科を修了され、日本IBM学生研究員として点字翻訳システムを開発されたそうです。その後もIBMで各種視覚障害者用のシステムなどを開発され、IBM Academy of Technologyメンバー・・・良く判りませんが、すごいことなのでしょう。そして東京大学の先端学際工学専攻分野で工学博士号取得、IBMフェロー、さらにアメリカ・カーネギーメロン大学客員教授!です。

偏見ある言い方かもしれませんが、視覚障害があることを活用された、先生ならではのご研究の成果でもある「AIスーツケース」の開発を進めてこられました。今回は、その経過と成果を、実際に「AIスーツケース」を使ってご説明なさいました。

ホントに、障害が障害ではなく、ある人のひとつの特徴・・・と思うと同時に、年を取って、あっち痛いこっちイタイ!アレが出来ない、コレが難しい!なんて言っていてはいけないとも思いました。けど、このAIスーツケース、高齢者用に工夫できるのではないかナァとも思いました。

さて、全体として、多くのセッションの座長の一方には女性の姿も多くありましたが、閉会式の壇上に並ばれたお歴々は、全員男性・・・ちょっとがっかり、大いに残念でした。

その後の、辻井伸之氏のピアノ演奏は素晴らしかったのですが・・・