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認知症―財団のネット公開講座のお知らせ。

ここ数週間の間に、数名の知人から、お身内や知り合いが認定症かもしれない・・・どうすれば良い?とのお尋ねを受けました。元は医師と云えども、私はウン十年前の小児科、検査医で、その頃には認知症などの言葉すらありませんでした。ですから、お話を伺いつつ、認知症の診断と治療に詳しい専門医の受診をおすすめするだけなのですが、どの方のお話にも共通することがあります。それは、前兆というか、ご家族がアレ?ムムム!と思われる状態が、割合長く続いていることです。

認知症と入れてググってみますと、何と690万件のコンテンツが瞬時に出てきます。が、認知「症」は良く判っていないところもあるから「症」なのです。

少しウザイ話です。病名には心筋梗塞、すい臓がん、中耳炎、赤痢といった風に、病名を聞くと、専門家でなくとも、おおよそ、どんな病気か理解できるものと、**症候群・・・たとえば、ネフローゼ症候群、そして認知症のように、未だに原因が明確ではないものの、共通の病態(自覚症状や診察によって明確になるサイン、血液やMRIやレントゲン、心電図などの検査所見の類似)を示す一定数の病人が見つかった場合、そのような症状の集まりを「**症」とか、「**症候群」と、とりあえずひとくくりにする名称をつけて、日常の対処を容易にしているものがあります。病名には、このほか、「ハンセン病(ハンセン医師が発見したらい菌の感染症)」とか、「川崎病(1960年代、川崎富作医師がまとめて報告された子ども特有の病気。原因は明確でないが、ウイルスや細菌感染をきっかけに全身的免疫反応を来たし、主に血管炎を起こす)」とか「水俣病(1950年代頃から、熊本県水俣湾周辺の現チッソ工場から排出された有機水銀に汚染された海産物を長期摂取した住民に生じた水銀中毒。日本の高度経済発展に伴う4大公害病の一つ)」、「ジカ熱(1947年、アフリカ ウガンダのジカの森に住むアカゲザルから分離されたウイルス。人からは、1968年にナイジェリアで分離された。2007年のミクロネシア、2013年のポリネシア、2014年のチリ、2015年のブラジルなど南米で大流行した)」とか人名や地名をつけたものもたくさんあります。が、実際には、「症候群」でも、かなり原因が明確になってきているものもあれば、「**病」とよばれていても、原因が明確でないものもあり、ま、かなり慣用的・・・あいまいでもあります。

で、認知症は、

政府広報オンライン 知っておきたい認知症の基本(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201308/1.html)

をはじめ、多くの地方自治体や学会、大学、製薬関係などなど、ネット情報はあふれるばかりです。どれもこれもていねいに書かれていますし、図や漫画を用いた判りやすい解説も多く、どれか一つをしっかり読めば、かなり理解できるのではないかと思います。

知人たちの話から、私がムムム!!と思ったことは、家族だけでなく、時には、この病態に習熟していない保健関係者らも、ついつい、「年の所為〈せい〉!!」と、やや安易に放置したり、逆に家族が心配しすぎて過剰反応したり、著効は期待できないもののやはり薬!となってしまう。また、認知症が、劇的に改善しない・・・とはわかっていても、何とかならないかと医師や病院を転々し、次々、色々な薬剤をご本人に押し付ける。そして、結果として、効果は明確でなく、いわゆるポリファーマシー状態になってしまう危険性があることです。ポリファーマシーとは、poly(多くの)とpharmacy(薬剤・調剤)を繋いだことばですが、単にたくさんのクスリを処方されていることではなく、それらを「まじめに!」服用することで過量重複摂取された薬剤の複合作用による有害事象が起こったり、薬の飲み間違い、また、多量薬剤が使われないままに廃棄されねばならなくなったりすることを云います。通常、高齢者に多いので、慢性疾患などの高齢在宅療養者に多く見られる現象です。

蛇足ですが、このような場合、誰が悪い・・・と云い難いことも多いのです。

私が、仲間の在宅看護師のお尻にくっついて訪問した地方の高齢者2、3人での経験です。都会で働く子ども①が、郷里で独居の親元に帰ったら元気がない・・・心配だぁ!とA病院を受診、投薬を受けました。その情報を聞いた子ども②が、私も心配!と帰ると、確かに元気がない、お薬は飲んでいるのに効いていない!と、今度は、B診療所を受診、そこでも投薬を受けた・・・そのようなことが繰りかえされて、ザルにいっぱいの薬が飾られていました。誰も悪意はないのに、そして良くしようと思っているのに、結果は・・・なのです。

認知症に近い状態なら、なおのこと、同じことがあり得ましょう。
大事なことは、人と人の接触、長く続けてこられた生活のリズムを、出来る限り、少しトーンを落としても、出来る限り、維持することが良いのですが・・・ついつい薬に頼ってしまう・・・

私個人の経験からではなく、全国29の都道府県で「日本財団在宅看護センター」ネットワークを作っている仲間の看護師たちの要望もあって、笹川保健財団では、来週6月15日(木)から、5回連続で「認知症と在宅看護」のオンライン公開講座を行います。

各回のテーマなど詳細は、当財団ホームページをご覧の上、参加登録ください。

講師は、

医療法人すずらん会たろうクリニック 院長 内田直樹先生 と、
相模原市認知症疾患医療センター センター長 大石 智先生 です。