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第5回日本在宅医療連合学会大会at新潟

表題の学会「日本在宅医療連合学会」は、2019年5月1日、令和の時代の最初の年に、日本在宅医学会と日本在宅医療学会が合同して誕生しました。日本在宅医学会は20年、日本在宅医療学会は29年の歴史がありました。

地域での医療を担われている志ある医師らが、在宅医療のEBMを高め、多くの医師が在宅医療を学べる場にしようと「日本在宅医学会」を創立されたのが1999年です。同医学会は、在宅医療のPrinciple(原理)を確立し、医師やその他の医療者を育成し、在宅療養者の生活の質の向上に寄与することを目的として活動してこられました。2002年には専門医制度を発足、2005年度から経過措置による認定を開始し、2008年より研修プログラムの認定が開始されました。2009年に専門医用テキスト「在宅医学」が発刊され、同年4月から全国で在宅医療専門医研修を開始、2010年からは毎年、認定専門医試験を実施されていました。一方、日本在宅医療学会は、そもそも、がん患者の在宅治療を目指し「在宅癌治療研究会」として1990年に発足、1999年には「日本在宅医療研究会」、2008年には「日本在宅医療学会」と名称を変え、がん疾患以外の幅広い病態を対象に、主に学術集会を通じて在宅医療に関わる幅広い問題を取り上げてこられました。

この両学会が2019年に合体し、新たに以下のビジョンを掲げて活動されています。
1. 在宅で療養するすべての人の尊厳を守り、本人と家族のQOL(人生および生活の質)の向上をはかる
2. 療養者自らの生き方を尊重し、それを実現するための支援を行う
3. 質の高い在宅医療の実践を通じて、人生の最終段階も含め、安心して暮らし続けられる地域づくりに貢献する
4. 生活やいのちを支えるための叡智を集約し、新しい在宅医学を創造する

主体は、地域で生きる人々、病める人々です。

今回のスポンサードシンポジウムのテーマは「在宅看護の不都合な真実」、在宅看護の様々な問題点を取り上げました

第1回の連合学会学術集会が周知された2019年、笹川保健財団では、2014年来の「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業の6年目にあたり、すでに多数の研修修了者が開業していました。その経過を発表させて頂くため、スポンサードシンポジウムをお願いしました。

2019年は、事業の経過と開業の実態、
2020年は、都市部と地方と、その中間の、在宅/訪問看護事務所の特徴
2021年は、在宅/訪問看護事務所の質の評価、
2022年は、在宅/訪問看護事務所の多様な災害対策

を、シンポジウムとして発表させて頂きました。そして2023年、第5回学術集会では、「在宅看護の不都合な真実」のタイトルで、色々な問題点を論じました。

ありがたいことに、6月上旬まで、日本看護協会長をつとめられた国際医療福祉大学大学院 副大学院長福井トシ子先生が、「看護の力で地域を丸ごと支える―看護小規模多機能型居宅介護事業所のさらなる機能発揮」と題して、今後の看護の活動の可能性と、それを妨げる要因を、格調高く述べて下さいました。

日本財団在宅看護センターネットワークの仲間である、茨城県結城市で開業している大久保智代氏が、「住民のニーズにこたえられない在宅看護の実態―制度の問題」を、同じく東京都大田区で開業している片岡今日子氏が、「利用者に必要な看護技術があるのに、なぜ、使えないのか―技術面の問題」を、そして、指定発言として、在宅緩和ケア分野のオーソリティであられる川越厚先生が、最近、転居された山梨県北杜市と、かつての拠点 東京都墨田区での訪問看護(師)との連携の実態を解説下さいました。

限られた時間でしたが、実際に、在宅での看護、医療に携わっている専門家からの、ビビットな質問、共に座長をお勤め下さった神奈川県立保健福祉大学研究科教授の石原美和先生の絶妙なコメントもあり、充実した2時間余りを堪能しました。

来年も楽しみです。

スポンサードシンポジウムでの一コマ、ご参加いただいた皆様ありがとうございました!