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Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

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孤立は健康問題デス!

アッツイですねぇ・・・

毎度の昔話ですが、1980年代末、パキスタンのペシャワールに住んだ時の最高気温は、手持ちの温度計の最高52度を振り切っていました。しかも停電!!!でも、当時、350万を超えるとされていたアフガニスタンからの避難民を含め、地元パキスタンの近郊200万の人々も、その中で暮らしていました。夜明け前から3、4時間働き、日中は日干し煉瓦造りの、壁の厚さ2、30センチの、いわば土の家の中は、出入り口を厚手の布で覆ってあれば、それほど暑くはなりません。静かに、息をひそめるように・・・日中は静か。そして夕方、また、2時間程度働く・・・

私の住んだ煉瓦造りのモダンな家は、パン焼き窯のように・・・燃えるように熱くなりました。水道からは熱湯が出ました。かつて、マイナス20度の中国にも住みましたが、どちらがマシかって・・・う~む・・・どちらも辛い。

暑いとおっくうになって出歩かない?コロナもあるし・・・のなかで、孤立、孤独に関する興味深い評論を二つご紹介します。

https://www.washingtonpost.com/opinions/2023/07/13/newsletter-pandemic-introverts-china-renewables-military-spouses/

まずは、アメリカの新聞「ワシントン・ポスト」紙の2023年7月13日のオピニオン記事「 The pandemic is over, but we’re not hanging out like we used to(パンデミックは終わったが、私たちは以前のようにぶらぶら出来ない)」とのアマンダ・カッツのオピニオン=ご意見です。その挿絵のタイトルが、何と“Justice for extroverts(外向型の人々に正義を)!”です。

つたない訳ですが、以下をご覧ください。
『今月は休暇中だが、以前なら電話一本で済んだことが、今では6ヵ月もかけて計画しなければならない一大事になっている。小説家のレベッカ・マッカイは、パンデミック後に出た最新でもっとも納得できるエッセイに「私たちは、週末に友人たちと一緒に過ごすのに、小さな子どもや仕事を優先しないといけない世代ではあるが、それだけではない。私たちの周りでは、社会生活だけでなく、自分が属している共同体にかかわる意欲を削ぐような何かが起こっている。」と書いている。「最も厳しいコロナ対策からは抜け出しつつあるが、事態は一変した。」と彼女は言う。「多くの人々が内向きになってしまっているのに気づいたが、私はそんなことは嫌だ!」という。
マッカイはいう。以前、私たちは互いを必要としているのは常識だった。「ボウリング・アローン(独りでボーリングをする)」なんてことは、医学的に望ましくはない。が、パンデミックのために皆が隔離を習慣づけ、リモートワーク(遠隔/在宅勤務)をし、さらに非社交的なソーシャルメディアにだけ依存する独居時間が大幅に増えた。人間が互にどれほど依存しあっているかを再認識したマッカイのような人々にとって、問題は、どのように愛する人々を社交的共同体に優しく引き戻すかだ。彼女風に云えば、「パーティーはほとんどなくなり、ショーも減って、夏のフェスティバルやディナーも少なくなってしまった時代に住まねばならないことをどう受け入れるべきか。」ということになる。
経済学者ブライス・ワードは、昨(2022)年11月、私たちのワシントン・ポスト紙に、アメリカ人は、COVID-19が始まるより前から、より長い時間を一人で過ごしがちだとする懸念すべき統計データについて書いた。「パンデミックの間、友人と一緒にいる時間はさらに減少した。2021年、平均的なアメリカ人は、週に2時間45分しか親しい友人と過ごしていない(2010年に比して2013年は58%減少)」。これは幸福の問題だけでなく、健康問題でもある。3月に、コラムニストのリアナ・ウェンは、公衆衛生局長官ビベック・マーシーが「孤独の流行」と命名したものを克服するための8の提案について書いている。とにかく、もし大切な人々を思い出したいのなら、夏です!!ショーに行ったり、友人に会いに行ったりしなさい。ワザワザ計画しなければならないかもしれませんが、それでも価値のあることです。』

もひとつは、上記に出てきた公衆衛生長官のいう「孤独の流行“epidemic of loneliness”」についてです。こちらは、これも度々引用しているLancet誌401巻2023年5月13日号に掲載されたLoneliness as a health issueです。

アメリカの公衆衛生長官はSurgeon General 直訳すると外科将軍・・・軍医総監が担当責任者ですが、これは、長い歴史のある役職名で、現在の担当任務を考えれば公衆衛生局長です。が、通常は、軍服を召されています。

以下、要約です。

『アメリカ公衆衛生長官の新たな報告書は、アメリカは「孤独の流行」に直面していると指摘している。「孤独は、個人的によくない以上に、個人と社会の健康に有害だ。」としている。孤独は、心血管疾患、認知症、脳卒中、うつ病、不安症のリスクを増大させ、早死のリスクも高める。報告書は、アメリカの約半数の成人は孤独を経験し、肥満、糖尿病、喫煙よりも広がっているという。過去20年間、15~24歳世代で、友人と対面している時間は70%も減少している。COVID-19パンデミックはこの傾向を悪化させている。また、特定グループでの社会的孤立についても述べているが、例えば、独居高齢者は入院や介護施設でのケアを要する危険性が高く、そのための経費は年間約67億ドル(約9,600億円) に上る。同様、仲間との良い関係にない青少年は学業成績低下傾向が強い。
報告書は、孤立感を軽減し、社会的つながりを促進するためには国家戦略が必要だと提言している。健康システム、政府、雇用主、学校、家族、介護者などなど関係者12組織を対象にしている。地方自治体は社会的つながり促進のために、交通、教育、住宅など公共プログラムに社会的インフラを重視すべきとされている。特に健康格差の大きい恵まれない地域では外部接触確保の必要性を指摘している。
ケア提供者は、社会的つながりが身体的精神的健康に利益をもたらすと理解しておく訓練が必要だ。保険会社は利用者の社会的孤立に対処できるプロバイダーに報酬を支払うべきだ。教育者と学校管理者は、学生が社会的スキルと仲間関係を発展させられるプログラムを提供すべきだ。報告書の中身は、精神保健専門家にはびっくりするに当たらないかもしれないが、アメリカ心理学協会会長アーサー・エヴァンズは、「社会的つながりと身体的健康の関係については数百以上の研究がある」と述べている。また、アメリカ公衆衛生協会の理事ジョージ・ベンジャミンは、この包括的アプローチを歓迎し、「必要なのは、心理的精神的支援だけではない。何でもかんでも医療化しているが、孤独対策は人々を孤立させないようにすることだけだ・・・社会的つながりがなくならないような社会を作ることにつきる」と述べている。
報告書は、これらの提案を実行し評価するための共同研究にもっと沢山の資金がいると述べているが、この報告書自体には拘束力はなく、期限や目標も義務付けられていない。しかし、孤独と孤立の流行に対処するための出発点として、これらの提案を考えるべきだとしている。』

コロナは、否応なく人々を凝りつかせました。ソーシャル・ディスタンス・・・会いたくない人とは、コロナを活用して失礼しました・・・ね。が、ぼちぼち修復が必要です。お声をかけてください。

そしてワタクシ・・・立派な独居老人です。休日は孤食です・・・が、ありがたいことに、日々勤務し、毎週、何やかにやと対話し、食事を共にしてくださる「若い仲間」がいます。それが、私の元気の素だと確信しています。