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香港と香港ジョッキークラブ-2

今回の香港訪問は、前回申しましたように「香港ジョッキークラブ The Hong Kong Jockey Club」という、競馬関連団体が持つフィランソロピー組織が行う国際会議にお招きを受けたことによります。

実は、昨年、日本財団らが主催された東京での「アジアのPhilanthropy」関連集会に参加させて頂きましたが、今回はその流れの続きとも申せます。

まず香港ジョッキークラブですが、先に申したように、香港は1840年前後にイギリス領になりました。そして、何と数年後の1846年には、早くも第1回全権大使杯競走が開催されています。そしてすぐに香港の、恐らく、イギリス人社会最大のイベントとなったのでしょう。たかが競馬ではありません。イギリスでは毎年6月、王室により恒例開催される「ロイヤルアスコット」をはじめ、競馬と王室の関係は密接です。日本のように、競馬は公営競技(競馬、競輪、オートレース、競艇)、すなわちギャンブルと、やや斜に構えた見方(ワタクシの偏見かも?)とは違います。
蛇足ですが、たまたまTVで競馬を見るたびに、なぜ、馬はあれ程に健気(ケナゲ)に走るのか、それも草食なのに、どうしてあれ程疾走できるのか・・・と余計なことを思います。

で、競馬の勉強・・・日本中央競馬会の情報によれば、競馬の最初は何と1540年にイギリス チェスターという街に、常設競馬場が作られたそうです。この街の歴史は古く、確か1世紀にローマ人が建設したと記憶しています。そして1540年頃といえば、日本は、今川義元、毛利元就、武田信玄、上杉謙信の時代、織田信長はまだ子ども、つまり戦国時代でした。ヨーロッパでは、まだ、神聖ローマ帝国が威光を持っており、英王朝では、ちょっと血なまぐさい時代でしたが、早くも競馬・・・だったのですね。そして17世紀初頭には、十数ヵ所で競馬がおこなわれていたそうで、スチュワート朝ジェームズI世(在位1603-1625年)が、ニューマーケットを競馬の中心地に発展させ、さらに王自らが競馬に出て優勝したのがチャールズII世(在位1660-1685年)、現国王チャールズIII世陛下もお馬好きなようで、何十年振りかの騎乗での即位式行進でした。そして、かの有名なアスコット競馬場はアン女王(在位1702―1714)、イギリスの人々の競馬に対する思い入れは、特別なのかもしれません。ですから、世界の1/4を占めた植民地でも・・・と云いたいですが、香港程競馬が根付いているところはあまりないような気もします。

さて香港です。その昔、本国に準じて正装で参加?観戦?されたかもですが、1884年に、「ロイヤル香港ジョッキークラブ」として設立されました。しかし香港が中国に返還されるにあたり、1997年にはロイヤルを外して、現在の「The Hong Kong Jockey Club/香港ジョッキークラブ(HKJC)」となりました。そのHKJCが関与する社会貢献活動を行うのが、今回、私どもを招いて下さった「HKJC Charity Fund/香港ジョッキークラブ慈善信託基金」です。

私ども笹川保健財団の社会活動のために頂いている資金の大半はモーターボートレースの収益金からですが、その仕組みが確立したのは60年ほど昔です。一方、HKJCの慈善活動は、1915年、第一次世界大戦前・・・に遡るそうです。しかし、この役割が定着・確立するのは、第二次世界大戦後の復興と大量の移民流入対策が必要だった1950年代です。1955年以来、HKJCは、毎年の余剰金をチャリティ活動や地域プロジェクトに充てると正式に決定し、1959年には、寄付を管理する別会社としてHKJC慈善会社が、そして1993年に新たに設立されたHKJCチャリティトラストとよび信託組織は、世界ベスト10慈善団体のひとつとなっています。

沢山のスタッフの方が、きびきびと働いておられるのは、手前味噌ですが、私どもと変わりませんが、その昔の日本人のように礼儀正しく、親切で、奥ゆかしく、外観は日本人と変わりませんが、何か、私たちが失ったものが、この地、この人々の間には残っている・・・とちょっと、年長者として切なくなりました。が、このチャリティトラストは、その多額の寄付を競馬と競馬場のエンタテイメント、責任あるスポーツギャンブルと宝くじ、会員制クラブ、慈善活動と地域貢献を管理するユニークな統合ビジネスモデルとして管理運営されています。ちょっと僻みっぽく申しますと、ジョッキークラブは、税引き後も運営経費余剰金の90%を信託トラストに提供しているのですが、その桁が一桁、二桁違う・・・とまれ、社会の向上のための慈善活動、奉仕活動ですが、近代的なビジネス感覚、そしてAI力にちょっとではなく、大いに啓発されました。

フォーラム開会式 端に女性の姿がありますが、ここもオジサマ優位でした

現在、HKJCは、通年、沙田(シャティン)競馬場と1846年来のハッピーバレー競馬場でレースが行われています。原則、毎水曜日にハッピーバレーのナイター、週末にはハッピーバレーもしくはシャティンのいずれかで日中開催されているそうです。近々、もう一ヵ所が開場されるとか・・・
12月のシャティン競馬場の香港國際競争と4月のクイーンエリザベスII世カップは代表的な国際招待競走で、外国からの強豪馬が多数参戦するそうで、日本からの招待馬の優勝も記録されています。

フォーラム開会式 アトラクション ステージ、客席にジョッキー姿の演奏家

ただ、HKJCのユニークなところは、競馬だけでなく、香港の宝くじや、外国でのサッカーくじなどなどの胴元!にもなって、競馬の売り上げ減を補填していることです。ギャンブル!というと、目の色が変わるのも困りますが、単に嫌悪するのではなく、収益金をどう活用するか・・・香港では、教育、福祉、公共施設のインフラや、貧困者への生活支援なども重要な活動として、市民に受け入れられている様を実感させられました。

今回の国際フォーラムは、「社会をよくする」ための、多様な分野からの発表、フォーラムでしたが、それは、また、項を改めます。
雨模様の香港、香港の貴婦人と呼ばれたホテルThe Peninsula HK は、前を通っただけでしたが、色々思うところがある滞在でした。