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在宅/訪問看護事業所の災害救援への取り組み―日本財団在宅看護センターネットワークの仲間と金沢の拠点「リベルタ金沢」事務所

「令和6年能登半島地震」と命名された2024年1月1日の地震はお正月気分を吹っ飛ばしました。震源は、石川県能登地方(北緯37.5度、東経137.3度)、マグニチュード7.6(暫定値)、震源の深さは16キロメートル(暫定値)、震度7は石川県志賀町と輪島市でした。

石川県の2月20日現在(発災52日目)発表では、関連死を含め死者241名、負傷者1,186名、行方不明者9名、住宅損壊は74,393棟です。発災から53日が過ぎた現在の停電は6市町村1,100戸、断水は7市町村の22,880戸、12市町村249ヵ所の一次避難所滞在者は6,373人、1.5次避難所には136人、旅館ホテルの二次避難所には5,084人、避難所以外での居住所者は11,646名とされています。これをどう受け止めればよいのでしょうか?

住宅街の地割れ
山崩れ
地割れ

阪神淡路大震災(1995)では、6,434人も亡くなった・・・
東北大震災(2011)では津波の被害が大きく、死者は15,900名に上ったし、行方不明者は2,524名も・・・
熊本地震(2016)では、震度7が2回も続いた・・・

全ての災害は、皆、別々の顔をしています。そして別々の様相を示します。でもそれを受けるひとりひとりの私たちは、皆、同じ、痛みも悲しみも喜びもありがたさも感じられる人間です。

個々の人間に襲い掛かる災害は、どこでどんな顔をしていても、受け手の多様性はそれほどかわらない・・・と多数の災害、紛争救援に関与させて頂いた私は痛感しています。

毎度申すことですが、笹川保健財団は、2014年から日本財団の資金援助を得て、8ヵ月間にわたる「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業を7年間行いました(2023年からはその仲間の事務所で実務研修を開始、2024年も継続!)。2024年1月現在、100名弱の研修修了者が継続して運営する在宅/訪問看護事業所、カンタキ(看護小規模多機能型居宅介護)ほか各種事務所の数は160に上ります。今回の被災地石川県では2019年度研修を修了した池川淳子氏が「リベルタ金沢」を運営して下さっています。

後だしジャンケン的ですが、災害救援に携わってきた私は、ある程度のネットワークとなったら、災害対策研修を行う意図があったのですが2020年からの新型コロナでその機会がないまま今回の地震!

「日本財団在宅看護ネットワーク」全体の各種専門家を含む仲間は1,300名にも上りますが、どの事務所もそれぞれの利用者対応で超多忙なことは同じです。が、いずれ起こるだろう首都直下地震や南海トラフ地震という激烈災害を思うと、心構えとともに実践経験も重要です。悩みましたが、思い切ってネットワーク仲間に呼びかけました。時と場合に応じて、石川県救援に関与してほしい・・・と。

地元石川県金沢市の事務所リベルタが、強い義務感をも感じられる賛意を示してくれたほか、北海道、東北、関東圏、東京、近畿、中国、四国、九州、沖縄・・・つまり全国のネットワーク仲間たちが日程調整は必要だが、一人二人のスタッフを数日現地入りさせることは可能と声をあげて下さいました。

自信をもって申しますが、私は決して涙もろくはありません。しかし、瞬時に手が上がり、続々と声を出し続けてくれるネットワーク仲間のメッセージを読むたびに、眼がしらが熱くなります。ネットワーク事業10年目の今年・・・嬉しい新たな一歩が踏み出せる、そう思いました。

とは申せ、実際に救援の経験者はほぼいない、そして災害急性期の混乱時に飛びこむには、ちょっと難あり・・・しかし発災直後の自衛隊や警察、日本赤十字社に加えて、最近では、ボランティア的ではありますが、相当の訓練を積んだ専門家からなるDMAT(Disaster Medical Assistance Team災害派遣医療チーム)、DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team災害派遣精神医療チーム)、JMAT(Japan Medical Association Team 日本医師会災害医療チーム)が素早い展開をされます。そしてワタシたちの姉妹財団日本財団も多様な支援を即日に始めています。看護系は、有名なキャンナス諸氏が、ピンクのTシャツで華々しく活動されますし、旧知の国際活動プロたちも三々五々、現地入りします。で、私ども笹川保健財団関連の看護師は、一味違う支援を企みたい・・・いわゆる急性期の終わった後、慢性期とも申しますが、長期支援に関われないか・・・と考えています。

倒壊した住宅
崩壊していなくとも赤札(危険)、黄札(注意)の紙が貼られた住宅
輪島の朝市の火事の後

でも現地を見ることは大事、既に財団スタッフの現地入りに加えて、オババの私も冷や水活動で3日間、金沢拠点ですが、行ってまいりました。

現地の状況はたくさんの報道があります。私自身の印象は他の災害地に比し、一段と高齢化過疎化が気になりました。つまり、急性期救援さえやれば、現地の方々が立ち上がられ復旧復興に向かう・・と断言するにはチョット厳しさを感じました。半面、高齢故かもしれませんが、ご自宅が全壊半壊あるいは危険マークが張られて入れないにしても、生きてきた証(アカシ)、人生そのものである住み慣れた地に帰りたい、そこしかいる場がない・・・そんなお気持ちも強いと拝察しました。

典型的災害救援だけでなく、時間はかかっても、気長で緩やかでぼぉ~ンやりと復旧に向かう、そんな災害救援というよりは新型高齢者型地域起こし・・・「旧」に戻れればよい、そんなに激しく発展しなくても良い風の地域伝統復帰復活型支援・・・みたいなやり方が必要な気がします。

それは本当の贅沢かもしれません。が、少し偏見的過激発言をお許しいただければ、意識がなくなった状態、最後の最後の看取りに高額を費やす「医療」ではなく、ボチボチヨロヨロでも自分の足で動ける間のささやかな人的交流、つかの間の安楽を感じられる小さくとも穏やかで温かい地域社会・・・多分、それほど高額な投資が必要ではなく、ゆったりと人の生活と健康を看(ミ)・護(マモ)るお世話役がいる地域社会が必要だと思いました。

これまでの社会発展を支えてこられた人々、世代が穏やかに暮らせる地域を再興する、看護師が地域のど真ん中にいて高齢者も障害者も、老いも若きも安心して暮らせるささやかな街の再興あるいは新興のお手伝い・・・医療施設から多数看護職が退職希望と報道されていますが、その看護師を地域に向けては如何か・・・地域の生活と健康を護るお手伝いが出来ないか・・・次回か次々回には、具体的な計画をご披露できるように努力します。