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Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

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核シェルター

私ども笹川保健財団では、昨年、日本財団在宅看護センターネットワークの仲間の北欧研修を開始しました。2024春研修のために、19日からフィンランドとデンマークを訪問しています。今回は、図らずも両国にご駐在の特命全権大使を表敬させていただける機会を得ました。

一昨日は、フィンランドにご駐在の岡田隆特命全権大使から、最近NATO入りしたフィンランドの緊張感あるお話を承りました。今もウクライナを攻撃し続けるロシアとは、1,340キロメートルも国境を接しているのです。(大使には、私どもの行ってきた地域保健における看護師の活動・・・在宅看護を説明させて頂き、その仲間とこの国の母子保健や高齢者福祉、そして社会的疾患でもある暴力対策としてのシェルターを見学し、同国保健福祉研究所とも意見交換させていただいた経過を報告いたしました。最後に、素敵な愛猫を抱かせて頂き、私個人だけ舞い上がっていました!!)

フィンランド周辺の地図、右手がロシアとの国境
間もなくヘルシンキ空港・・・緑一色の平地・・・ところどころの空間は麦畑とか

そこで思い出したのですが、以前、ジュネーブのWHO本部で勤務した時、「マンション、アパートといった集合住宅の地下はシェルターであり、一軒家でもシェルター機能の持てる地下が必須だったが、最近は(※1990年代末の話)その規制が緩められた。けど、北欧(この時はNordicといわれていました)では、まだシェルターが必須だ」と聞いたことです。

最初に住んだロワール川沿い、ベランダからモンブランが見えるマンションでは、地下の3×3メートル区画を借りることが必須でした。日本では、その昔一軒家では、必ず「押し入れ」という物入がありました。最近では「クローゼット」などと横文字風の物入あるいは衣装置き場が家の一部としてついている設計や、空調設備がついているマンションも増えたようです。が家といった場合、家具は何もついていないのが当たり前のようでした。かの地では、空調、調理機器、食器洗いは家の一部のようでした。そして集合住宅や大概のお宅でも、洗濯機・乾燥機は地下に設置されていました。私の借りたマンションでは地下の何十・・・なん百も並んでいる3×3区画の一角の壁側には、50台くらいの洗濯機と乾燥機が並んでいました。考えてみれば、洗濯するには水が必要で、当然排水設備もあります・・・つまり、何かあった場合、各店子は3×3物置風コーナーに避難すれば、水と排泄は何とかなるのです。私も、中型のバッグに非常食品や大型懐中電灯(当時はまだ古い形)、着替え、雨具など一式を置きました。

さて、フィンランドでは、今も、街中にもシェルターがあります。YouTubeに判りやすい解説がありましたのでご覧ください。

街中・・・公園の地下がシェルターとも聞きました。市民を最悪の「災害」から護るために行政が設置してはいるのですが、普段はガレージや催し会場に活用することで、多分収益を得ると同時に機能的維持をも図っているのでしょう。私どもは、ショッピングセンターの地下ガレージをみた程度ですが、恐らく、たくさんの危機対策装置があるのだろうと思いました。

街中だけでなく、高速道を走っていても、道の両側や少し離れたところにはゴリゴリした岩がむき出しになっています。この国は国土の1/3が北極圏だそうですが、とにかく森林地帯が約70%もあるそうですが、今もかつての氷河が退行しており、毎年、何十センチも土地が隆起しているものの、その母体は頑強な岩盤なのでしょう。
そして、よく知られているように、この国の発電では再生可能エネルギーと原子力発電の比率が高いのです。

ヘルシンキの街中、左:シェルター入り口=駐車場、右:シェルターの地上は公園

原子力!!!と思いますが、脱炭素化はとても進んでいると申せます。とても深い・・・地下300メートルもの深さに、半減期が何万年もの核廃棄物を保存する装置も整備されています。つまり危険なものを扱うための合理的な対策ができている・・・かつてチェルノブイリ(現チョルノービリ)原発事故の後は一時的に反対が増えたそうですが、今は、脱炭素化も含めて賛成が増えていると伺いました。

しかし、この長らく世界幸福度No1の立場を保っている国にも、高齢化そして少子化が押し寄せているだけでなく、ヨーロッパで深刻化している異常気象・・・温暖化の影響もある様子。

私どもは、「看護師が社会をかえる」と銘打っての在宅/訪問看護拡充を推進していますが、そのためには、身体的健康を扱うだけでなく、地域的精神的そしてスピリチュアルにも、地域社会の住民一人一人の、長期的な安全安心にも関与すべき、そしてそれを扱える能力を涵養すべきと、改めて思いました。

ヘルシンキの街中・・・あちこちにみえる岩、岩、岩