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赤いオーロラ

2024年秋の北欧研修を終えて、「日本財団在宅看護センター」ネットワークの一行は、現地時間10月10日17時40分発JL048にて羽田に向かいました。往路は1万1千キロを越える北極海の上を飛ぶ旅でしたが、復路は地球の少し太った中央アジアあたりを越えますので、往路よりもさらに1千キロは長い13時間を越える空の旅、ヤレヤレ・・・その航路について書こうと思っていましたら、羽田で仲間から、「赤いオーロラが見えた!」と、写真を見せられました。そして、2、3のメディアにも世界中の、普段は見えないところでの、しかも赤いオーロラが出現したとの記事。で、今回は、赤いオーロラです。

復路 ヘルシンキ‐東京
往路 東京‐ヘルシンキ

『激しい太陽嵐により、世界中の珍しい場所にオーロラが出現-通常は地球の極地に近い場所でしか見られないオーロラが、ニューヨークやワシントンDC、南はテキサスまで観測された』との記事では、ドイツの東南部の街リーツェンの道路上空に広がる赤いオーロラの写真が目を引きました。多分、私どもの乗ったJL048b便が見た赤いオーロラは、この辺りだったのでしょう。

ですが、「きれいねぇ!」「ラッキー!!」と喜んでばかりはおれないのかも知れません。

同じくワシントンポストの記事には、「通常は地球の極地に近い場所でしか見えない光が、アメリカ全土とヨーロッパだけでなく、南半球のオーストラリアの一部をも照らしたが、これはアメリカ海洋大気庁が5段階評価で4、つまり「深刻」と評価した「異常に強い磁気嵐」のためである、としています。その強い磁気嵐とは何なのか・・・それがなんで、どんなことで発生するのか、また、何を誘引するのか、私には判りません。ま、ここでは稀な赤いオーロラが見えた、としておきましょう。

ワシントンポストより‐2024.10.10 木曜日、ドイツ リーツェン 道路上空でオーロラが夜空を照らした (Patrick Pleul/dpa/AP)

でも便利な世の中です、色々、ググってみますとこんな知見にめぐり会いました。
「江戸時代のオーロラ絵図と日記から明らかになった史上最大の磁気嵐」2017年9月20日です。

それによりますと、国立極地研究所/総合研究大学院大学の片岡龍峰准教授、国文学研究資料館の岩橋清美特任准教授のご研究ですが、京都の東羽倉家の日記‐江戸時代の古典籍に残る記録から、明和7年7月28日(1770年9月17日)に史上最大の磁気嵐・・・つまりオーロラが発生していたと明らかにされたのです。ここからややこしくなりますが、ご容赦を。

国立極地研究所より‐『星解』に描かれた1770年9月のオーロラ(松阪市郷土資料室所蔵 三重県松阪市提供)

「国学」というと、何?古い!と拒否反応しないでください。国学とは、『古事記』、『万葉集』、『律令』、『延喜式』、『和名抄』等など古代文献を研究し、わが国の古代文化や文学を明らかにしようとする学問体系と理解していますが、その大家は、契沖、荷田春満、賀茂真淵、本居宣長、平田篤胤らです。頭が痛くなりましたか?では、この項は飛ばしてください。その大家のお一人荷田春満(かだのあずままろ 1669.2.3-1736.8.8)のご生家に残されている資料から、上記の江戸時代のオーロラ絵図が見つけ出されたのです。国学とオーロラ・・・洋の東西、時代を超えた壮大なロマンであり、科学ですね。ついでに申すと、東丸神社(あずままろじんじゃ)は京都市伏見区の伏見の稲荷大社に隣接しますが、学問の神様で有名です。しばらくお参りはしていませんが、かつては、いつお参りしても、大学合格や国家試験合格祈願の絵馬がたくさんかかっていました。苦しい時の神頼み・・・ですね。

その江戸時代のオーロラは、2017年頃の調査で研究グループが京都の東羽倉家の日記から見つけ出された1770年のオーロラ記録から、京都からオーロラがどう見えるかを計算されました。その結果、『星解』という別の古典籍に描かれたオーロラ絵図の形状が再現され、これにより1770年の磁気嵐は、これまで観測史上最大と言われていた1859年の巨大磁気嵐と同等か、それ以上の規模だったと推定されるそうです。(「江戸時代のオーロラ絵図と日記から明らかになった史上最大の磁気嵐」国立極地研究所より)江戸時代でも現在に生きる私たちでも、壮大な自然現象に遭遇すると何か不吉なこと、恐ろしいことが起こる前兆ではないかなどと、ちょっと心配になりますが、中世のヨーロッパやオーロラに慣れていたはずの北欧の人々でも、珍しい赤いオーロラは神の怒りではないか、災害や戦争、社会の異変など、不吉な出来事の前兆ではないかと恐れたといいます。上記京都に残るオーロラによっても人々は怯えたかとおもいますが、日本史をたどってみても、大きな異変は載っていません。ヤレヤレでした。

「日本財団在宅看護センター」ネットワークの2024年秋の北欧研修は、このように珍しい赤いオーロラを観ながら、12,000キロメートルを飛び10月11日午後4時前、羽田空港に帰着しました。

3連休とはいえ、在宅/訪問看護の猛者たちは、翌日から、通常勤務に戻っている様子、ますますの活躍とご健勝を祈ります。

お世話になったフィンランド、スウェーデンのみなさま、ありがとうございました。

搭乗機から撮影した赤いオーロラ
搭乗機から撮影した赤いオーロラ
左図の北欧研修仲間の写真とも似ているワシントンポスト紙の2024.5.12のオーロラ写真(ワシントンポストより)