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Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

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経済と看護

ダボス会議という名称を見聞きされたことがおありかと思います。今年は、一昨日1月20日から始まりました。毎年、スイスのリゾート地ダボスに、世界の著名な政治家や経済、産業、その他の分野の実践家、学者らが集まり、現在最も話題になっている、あるいは問題になっていることについて討議される「世界経済フォーラム The World Economic Forum」の通称です。

ダボスは、スイスの北東部のグラウビュンデン州のアルプス山麓、標高1,560mにあるリゾート・タウンです。人口をみますと2015年、つまり10年前に11,109人とありましたので、エエッ!そんなに少ない?と最新のスイス都市人口をみましたが、首位チューリッヒ341,7030、2位ジュネーブ183,981、3位バーゼル164,488、以下69位プリー16,263人までに出てこないので、なるほど人口1万強の小さな街なのですね。この地はドイツの作家トーマス・マンの『魔の山』の舞台として知られていますが、それは19世紀中頃にここに滞在した結核患者でもあったドイツ系医師や結核の野外療法をすすめたアレクサンダー・シュペングラーらによって結核の療養所がおかれたことから療養地として知られていたからです。

スイスのリゾート地 ダボス

ダボス会議を運営する「世界経済フォーラム」は、経済、政治、その他の研究分野などなどの世界の話題を各国各分野のリーダーたちが意見交換し、連携することで国際的コンセンサスをつくり、ひいては世界のもろもろの問題、特に好ましくない情勢を改善しようとの壮大な意図のもとに、1971(昭和46)に経済学者クラウス・シュワブが、スイスのジュネーブ州ジュネーブにも近いコロニーの町に設立したスイスのNGO(非営利財団)であり、また国際機関としても認知されています。なぜ、「ダボス会議」と呼ばれるかというと、毎年の総会をダボスで開いているからです。が、毎年、他の地域、たとえば東アジアやラテンアメリカ、また、中国やアラブ首長国連邦でも会議を開催しています。でも、なんたってダボス・・・小さな町の大きな会議です。

WEFが開催される会議場(Wikipediaより)

2025年のワールドエコノミックフォーラム(WEF)のサブテーマは5つです。すなわち、
1. 信頼の再構築
2. 成長の再構築
3. 人材への投資
4. 地球環境保全
5. インテリジェント時代における産業  です。(WEFウェブサイトより)

WEFのホームページ

どのテーマも、ウンウン・・・なるほど、とうなずきたくなるものですが、今年のトピックは、年次総会初日に国際看護師協会(ICN)のCEOハワード・キャットン氏のビデオインタビューが公開されたことでしょうか。
世界経済フォーラム、ダボス会議開幕に際し国際看護師協会からの重要メッセージを発表』(WEFウェブサイトより)
ICNの発表はこちらです。”World Economic Forum releases key messages from International Council of Nurses as Davos begins“(ICNウェブサイトより)

世界では、2800万人の看護師が働いているが、それでも600万人の欠員があり、その90%は低中開発国で発生している、として以下を述べておられます。(以下、邦訳)

このビデオは、看護の経済的な力と看護への投資の必要性についてのICNの主要なメッセージを伝え、ダボスに集まった世界のリーダーたちに行動を促すものです。

  1. 看護師の世界的な不足:看護師の供給と需要のギャップは、人々の健康だけでなく経済成長や経済回復に直接影響する。
  2. 劣悪な労働条件:人手不足は患者のリスクを引き起こし、看護師にも圧力をかける。看護師は劣悪な労働条件や暴力、公正で適正な給与を得ていないなどの問題に直面している。
  3. ジェンダーの不平等:世界の看護師の90%は女性だが、彼らはジェンダーの不平等や差別の影響を直接受け、昇進や公正な給与、リーダーシップの機会の欠如に直面している。
  4. 看護師の保護の必要性:看護は使命であり職業でもあり、個々の看護師は他の誰とも同じように権利を持っており、サポートと保護が必要だ。
  5. 看護の魅力向上:(AIなどの)技術が多くの人的資源に置き換えられてゆく可能性のある分野で働く人々には、看護を次の選択肢として促進すべきだ。男性も看護界に進出する必要がある。

「このビデオの公開は、1月15日に発表されたWEFのグローバルリスク報告書に続くもので、ICNはその報告書についてもコメントし、報告書のリスクが引き起こす健康への深刻な影響を強調しています。また、ICNは、看護経済に関するWEFの取り組みを数年間支援しており、ケア関連の経済の未来に関するグローバルフューチャーカウンシルの一部としても活動しています」ともあります。

「看護師が社会を変える!」との壮大なプロパガンダ!のもと、日々、地域の人々の増進、維持、回復に従事している「日本財団在宅看護センターネットワーク」仲間たちも、看護が世界の政治や経済界のリーダーの意識を変えること、少なくともその意識に影響を与えらてくれることを切望していることとおもいますが、まずは身近から!!