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Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

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四川料理、高齢化 重慶 2

37年前の訪問では、当時四川省に属していた重慶市の副市長ドノが歓迎の宴を催してくださいました。大きな円卓の真ん中に、でっかい鍋、四川名物火鍋でした。

四川料理は世界で一番辛いそうですが、ホント、辛い、激辛、超激辛でした。その時うかがった辛み調味料13種類の名前を手帳に書き留めましたが、四川料理の辛さは痺れるように辛い「麻(マー)」と、いわゆる辛い「辣(ラー)」があるそうです。そして痺れる辛さ(麻)の代表が四川花椒、青花椒、いわゆる辛いは色々あって乾燥唐辛子、豆板醤、辣油、唐辛子粉、発酵唐辛子とか香辣醤(香辛料入り辛味油味噌)とか・・・思い出しても辛いです。その時北京から同行してくださったのは、日本で博士号を取得し、日本語も堪能な血液学者 王医師でしたが、もともと甘党だったこともあって、名物の火鍋には見向きもせず、西赤柿(トマト)にお砂糖をかけて召し上がっていました。が、私はここぞ日中国交!と変な頑張りを致しました。火鍋の一口を頂いた瞬間、両耳の後ろあたりがザック!ザックと拍動し始め、以後何を食べているのかわからない・・・つまり「麻(マー)」優位でした。食後に如何でしたか?と尋ねられ、「味道真的很好、这是我迄今为止吃过的菜里最辣的了(とても美味しかったです。が、今まで食べた中で、一番辛かったデス!)」と申し上げましたら、「今日は、あなたのために、普段の1/3の辛さにしてあります!」といわれました。

火鍋!

この対応こそ、これぞ、世界に誇る中華文化!と思いました。また、当時、東南アジア地域では肝炎(A型)が多かったのですが、その理由が一つの鍋からお料理を分け合うことや隣の人に自分のお箸で料理を取り分けることが感染を広めている・・・ともささやかれていました。

今回は、近代的な豪奢レストランで一人毎の小さなお鍋、具材は円卓の中央で回転します。そして麻(マー)と辣(ラー)の調味料は小さなワゴン車で廻ってまいりました。スマートになって衛生的、しかし、ちょっと味気ない・・・と年寄りの繰り言デス。同時に中国名物白酒の「乾杯(カンペイ)!」も様変わり。日本のお猪口よりも小さなグラスでした。スマートで美味しい・・・がちょっと豪快さは昔に負ける・・と思いました。

火鍋の薬味

さて本番の高齢化です。

中国全体では、2023年末時点で、60歳以上の高齢者人口は2億9700万人、総人口の約21%、そのうち要介護高齢者の割合は約11.6%とされています。高齢者介護人材の育成、在宅・地域・施設など多様なサービス形態における介護機能の充実、「シルバー経済」の発展促進などが現時点における重要な政策課題の方向性となっているそうですが、問題は、高齢化のスピードが速いこと、理由はもちろん純粋な高齢化もありますが、全人口の伸びは緩やか、から少し減少気味・・・つまり子どもの数が減少しつつあることです。さらにその背景にはかつての「一人っ子政策」の影響もあるかもしれませんが、いずれにせよ、高齢化は国の如何を問わず、地球上普遍的な問題です。高齢化は、単に周囲の人々が面倒をみなくてはならない年寄りが増えるという問題だけではありません。少子化が伴いますと、結果として15~59歳の、いわゆる労働年齢世代が減少します。その結果、社会的保護が必要・・・医療費、介護費そして年金などの出費は増えるだけでなく、それらの経費を負担する世代が減るというダブルパンチになります。わが国も同じです。

重慶市ではひとつの「市」ではありますが、北海道と同じくらい広い・・・その行政範囲は広大すぎます。人口密度の高い大都市圏、住宅地、農村部や過疎の山間部といったバラエティある地域社会です。それを十把一絡に対策を立てる・・・目がくらみます。

今回は高齢者施設2か所、ドイツとの合弁の私立循環器病院、看護・検査・介護専門学校を見学し、重慶市の行政担当者らと面談しました。

世界の高齢化の先端を走る日本の対策がうまく動いている、とのやや幻想をお持ちいただいているようで、執拗にその実態をお尋ねくださいました。確かに、わが国は厚労省の地域包括医療制度から地域に根差す私どもの「日本財団在宅看護センターネットワーク」のような実務活動まで、うまく動いているところもありますが、全体としては、増え続ける高齢者の医療福祉経費、先細りのケア人材を含め、難問がたくさんあるとお話ししました。

そして、かの地では、いわゆるターミナル時期には、穏やかな古来の術である中医学が使われていることを学びました。

政府の地域保健センター

わずか、2、3日の滞在でも中国に比し、わが国がAI化に関してとても、とても遅れていることを認めざるを得ません。しかし、古いこともたくさん残っている中国全体がAI化され科学技術発展も著しいことを、少し、うらやましく思いましたが、中医学の活用とAI・・・そして日本の「患者中心」や「個人の尊厳・プライバシーを重視する」在宅看護をミックスすること・・・ちょっと夢が膨らみました。

高齢者施設の入所者の方と一緒に
高齢者施設のデジタル機器