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Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

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世界に広がる紛争、中東の危機と私たち

ぼんやりみていたTVのBBCニュース、アメリカ大統領が「イランの最高指導者は殺された(killed)」と発表しました。3月1日のうらうらとした春らしい日曜日でした。

たった1日半前の2月27日には仲介国オマーンのジュネーブ大使公邸での核協議に「大きな進展」があったと発表されたばかり、思わず「エエッ!!」と声が出ました。表面的だったかもしれませんが厳しくも穏やかに交渉をされていた両国代表団の方々は、今、どんな気持ちなのでしょうか?

地球上のあっちこっちで兵器が稼働し、巨大爆薬が炸裂しています。かつての地上戦とは異なり、ほとんどの初戦はIT化されたミサイル攻撃です。が、どこでどんな武器がどのように使われようとも、必ず、戦いに無関係な住民に犠牲が出るのは必定です。交渉の際、決裂したら武力を行使すると通告すれば独立国が他国を武力攻撃することは一つの外交的手段として認められています。そして戦争が始まります。でも止めて欲しい、そんな権利を行使することは絶対に止めるべきです。

80年代末から90年代、国際保健に従事した頃、いくつかの紛争地の保健医療計画に関与しました。その当時でも武力紛争による直接死の人数は限られていました。銃や爆弾での死者は限られますが、日常生活を支えている保健医療施設を破壊し、必要な消耗品の補給を遮断し、子どもの検診や予防接種を滞らせ、医師や看護師などの人材育成制度や施設を破壊し、人々を憎しみに追いやります。そして、武力行使がもたらすものは恐怖、嫌悪、絶望といった負の感情と、時には復讐心です。エアコンの効いたどこか大都会の会議室で弁舌さわやかに議論を交わして解決することはほとんどありません。が、それしか手段がないのです。紛争地に近い、いわば前線基地のような事務所で賞味期限の切れた食べ物をつつきながら、悪態をつくことしか現場近くのスタッフにはできることがなかった・・・その状態は今も変わっていないでしょう。

今回のイラン攻撃の先陣はイスラエルでした。当然、2023年10月に始まったイスラエルとパレスチナ(のガザ地区)の戦争と関係がありましょう。

イスラエルという国・・・ユダヤ人の国のなりたちはややこしいだけでなく理解するのが難しい・・・不可能のような気がします。とくに、古来、日本列島という限られた場所に住み続けている私たち日本人には、とてもとても分かりにくい人種や宗教の問題だらけのイスラエルです。といっても、私自身、個人的にはユダヤ人の知人はたくさんいます。また、その昔、研究者の端くれだった頃にご指導を受けた欧米の血液学者のほとんどはユダヤ人でした。

ユダヤの人々が2000年もの離散の間、その地パレスチナはオスマントルコやイギリスの支配下にもありましたが、第一次世界大戦後には国際連盟の決定下にイギリス統治となり、さらに第二次世界大戦時のホロコースト(ユダヤ民族虐殺)を受け、1948年に、現在のイスラエルが建国されました。ですが、その地域には2000年の間に住み着いた人々がいます。その人々の意向を無視とは申しませんが、十分に聞かずに、某国のイニシアティブで国際社会がユダヤの人々の建国を認めました。追い出される人々の意向、権利は無視。当然、問題が生じます。何度もイスラエルと周辺アラブ社会の間で戦争が起こりましたが、2000年にわたる建国への想いと武器開発と情報インテリジェンスに国力を上げるイスラエルがいつも勝ちます。そして同じアラブですが、まず、エジプトが1979年にイスラエルと平和条約を締結し次いでヨルダンが1994年、アラブ首長国連邦、バーレーン、モロッコが2020年にイスラエルと正式外交を樹立しました。その中で、イランは最もイスラエルを敵視しているそうです。

廃墟となったイスラエル・テルアビブの街並み

そのイランは1979年のイスラム革命後、イスラエルとの関係を断絶し、隣接するレバノンの武装組織ヒズボラやパレスチナの中の武装勢力を支援しています。ですから、イスラエルにはイランの核開発を強く警戒する理由があると云えばあるのです。

そんな中で始まったのがアメリカとイランの間の核交渉でした。交渉でまとまるなら多少悪い成果でも武器による決着よりははるかにましだと私は思います。が、何てことでしょうか。双方―イランもアメリカも予測していたことかもしれませんが突如のイスラエル、アメリカから攻撃です。警告を発していたから攻撃しても良いとの国際ルールは守っていたということではありません。が、厳重にも厳重な秘密治安体制下の幹部集会の場所が敵方・・・に筒抜けって何てことでしょうか。最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師以下国防評議会長官、イスラム革命防衛隊地上司令官、文民ですが国防大臣、情報局長、最高指導者付軍事オフィス長、防衛革命新研究機構長、イラン軍司令官、革命防衛航空宇宙軍司令官らすべての国の治安関係高官が殺害されています。この国はどうするのでしょうか。先般のベネズエラ大統領拉致を思い出します。何でもあり、やろうと思ったことは何でもやれるアメリカですね。MAGA(Make America Great Again!アメリカをもう一度偉大に!) でしょうか。

この新たな紛争で、陰に押しやられた感のあるウクライナの戦争は2022年2月にはじまり、4年目に突入しています。ヨーロッパの多くの国とアメリカはウクライナを支援し、ロシア側には中国や北朝鮮が関与しています。アジアとヨーロッパを含むユーラシア大陸にはうっすらと戦争の色がかかっているような気がします。そのアジアの東端のわが国は戦争をしないとの意思を示している憲法9条をもちますが、だから私たちは無関係です、わが国は平和、平和でルンルンですと言っておれない気がします。昨日あたりから、イランの支配が大きいホルムズ海峡の閉鎖やイランの周辺国のアメリカ基地への攻撃が始まっています。石油の大半を中東に依存するわが国、その他LNG(液化天然ガス)や穀物の輸入にも影響はあるでしょう。せっかくの新内閣の消費税減税が帳消しにならないように、そして何より紛争が他の地域に広まらないことを切に願います。

ところでイランの国内では、これも当然かもしれませんが、イスラム革命以来の数十年の宗教者を最高指導者とする国管理体制を忌避する人々もいます。
この辺りは次回に。