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紫陽花 アジサイが教えてくれる「支える力」

ここ数年、6月でも猛暑でしたが、今年の東京は梅雨(つゆ)らしく、しとしと雨が続いています。
梅雨・・・といえば、紫陽花(あじさい)ですね。

アジサイは古くは、日本最古の和歌集『万葉集』に「味狭藍」「安治佐為」(あぢさゐ)とあるそうです。また12世紀末にあたる平安時代中期につくられた辞書『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』では「阿豆佐為」の字があてられているそうです。つまり平安時代頃にはこの花を愛でていた人々がおられたということ・・・またいろいろな説がありますが、その名前は「藍色が集まったもの」との意味である「集真藍(あづさあい/あづさい)」がなまったものとする説が有力らしいそうです。(Wikipedia参照)。

この花、ややこしいのは、私たちが一般に花と思っている部分は装飾花(雄しべ、雌しべが退化し、花びら=花冠や咢〈ガク〉が大きく発達した花)で、大部分が中性花(おしべとめしべが退化した不稔性〈種子を作る能力がない〉)なのです。

まぎらわしいですが、咢4枚が大きく変化し、私たちはそれを「アジサイ、キレイ!」とみているのです。ですから、雄しべも雌しべも不完全なため、この花には実ができません。増やすのは挿し木ですが、わりあい、簡単です。

日本では圧倒的に青ですが、紫陽花は根のある地中が酸性かアルカリ性かに関係して花の色が変わります。土壌が酸性(pH5~6)なら青色、中性からアルカリ性(pH6.5以上)なら赤やピンク色ですが、それも梅雨と関係しているのです。雨が多い日本の土壌は一般に酸性寄り、つまり紫陽花は圧倒的に青い。白い紫陽花もありますが、それは色素をほとんど持たないので、土壌のpHが変わっても基本的に白いままです。

タイトルにも使いましたが、漢字で書く「紫陽花」は高名な唐の詩人 白居易が、おそらくライラックに付けたらしい名前を、平安時代の学者、三十六歌仙のひとり源順(みなもとのしたごう)が誤用したと云われています。その他、色々ありますが、科学的な学名はHydrangea macrophyllaです。江戸後期、長崎に「鳴滝塾」を開設し、日本に西洋医学を植え付けたフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(1796‐1866)が、紫陽花の新種に自分の妻おタキさんの名をつけてHydrangea otaksaと命名して、ちょっと物議をかもしたことも知られていますが、素敵ですね。新種の花に愛妻の名前を付ける発想が!この種は、学問的にはHydrangea macrophyllaだそうです。

さて、一輪のように見える紫陽花ですが実は小さな花の集まりです。その姿を地域社会というのはちょっと飛び過ぎですが、一人ひとりの力は小さくても皆がつながり支え合うことが大事だとは申せましょう。
現在の地域社会における私たちの暮らしも同じです。高齢者、子ども、障害のある人、病気を抱える人など、誰もが人生のどこかで支えを必要とします。病院や施設だけでなく、家庭や地域の中で安心して暮らし続けるためには、多くの人々の協力が欠かせません。
土壌によって花の色が変わり、青、紫、ピンク、白とさまざまな表情を見せるのも多様性の存在を教えてくれているといえましょう。地域にもさまざまな人が暮らし、それぞれ異なる価値観や背景を持っています。孤立するのではなく、違いを認めながら、少しはいがみ合い、小競り合っても共に存在すること、共に生きることこそが豊かな人間社会、地域をつくると私は思っています。言い過ぎでしょうか?

そして雨、しとしとうっとおしいですが、梅雨は農作物にとって大切な恵みの雨、水分補給です。最近多発している線状降雨帯発生には困りますが、わが国では梅雨の時期の降雨が夏の実りを支えているように、人生にもうっとおしいこと、困難や試練もあります。が、若い時期の経験こそが、その後の発展、実りにつながるのです・・・年寄り臭いでしょうか?

しかしながら現在の日本は超高齢化、少子化そして人口減少という抗いがたい負の変化から抜け出せない状態です。そして、今までやや漫然と利用し過ぎてきた国民皆保険・・・病気になったら病院に行けばよいだけではなく、念のために受診するなど安穏としてきた病院依存がゆるされなくなってきました。実のところ、明らかに病気が有る状態での医療施設の利用までやめることはではなく、高度高価な医の手段は効果的に活用すべき時代になったと、そして健康を維持するためには常日頃の生活の中で工夫し、地域全体が地域とそこで暮らす人々の健康をまもり支え合う仕組みを活用することが重要になったのです。

高度医療を濫用することなく、在宅での医療や看護また地域包括ケアや住民同士の見守り活動などで人々の、そして自らの健康を護る・・・紫陽花を形づくる小さな花々のように、です。

云い過ぎですが、紫陽花は単なる季節の花でなく、「集まる」「支える」「多様性」「雨を受け入れる」などなど・・・保健・医療・福祉や地域の人々の連携、そして地域づくりに通じるメッセージを伝えていると思って、拙宅近隣の花を眺めました。

そう思えば、私たち笹川保健財団が目指すのは紫陽花のような地域社会かもしれません。
医療・看護、介護に従事する人々だけでなく、それらと関連する多様な保健分野の専門家、その機能を支えて下さっている工学や経営や管理分野の関係者、行政や企業そして学校や訓練所など多様な人々のつながりが地域の私たちを支えています。紫陽花を見ながら、そんなことを思いました。その昔、各地の紫陽花寺を渡り歩いたことを懐かしく思い出しますが、今年は一念発起、お隣の神奈川県の紫陽花の名所を訪ねたいと思っています。

蛇足ですが、紫陽花の花言葉の一つは「移り気」!積極的に受け止めて、新しいことに挑戦する力を受け止めましょう。