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避難所に来られない人、来ない人を誰がどのようにみまもる?- 日本財団在宅看護センターネットワーク初の災害急性期支援

2026年7月28日の午後、熊本県の宇城市、八代郡斐川町を中心に震度7、マグニチュード7.1の地震が発生しました。震度7は2024年1月1日の令和6年能登半島地震以来です。また、熊本県といえば、10年前の4月14日に発生した平成28年熊本地震を思い出します。現地の方々は、なぜ、熊本ばかりに震度7がとお嘆きでしょう。ホントにホントに暑い上の地震、被災地の皆様には、改めてお見舞い申し上げます。

地震調査委員会の発表では、地震の活動域の付近には10年前にも問題になった布田川・日奈久断層帯がありますが、10年間隔で発生した巨大地震の間の関連は現時点では不明だそうです。それが良いのか悪いのか・・・も判りませんが、嬉しいことではなさそうです。

さて、笹川保健財団(以下財団)の8か月研修を受けた起業家看護師による「日本財団在宅看護センターネットワーク(以下ネットワーク)」は総勢1,600名のスタッフ、内看護師が約800名となっています。地震大国のわが国です。いつか緊急時の在宅看護支援に対応できるようになりたいと考えていました。そして今回初めて実践の機会がやってきました。

日本財団関係者からの要請もあって、財団はネットワークに、比較的災害の大きかった熊本県御船町での看護師による巡回訪問への協力を呼びかけました。実は、その地にはネットワーク仲間が事務所を構えていたのですが、それが故の活動ではなく、ネットワーク初の災害急性期の看護師派遣がここ、そしてたまたまそこに仲間がいた・・・のです。私たちが目指すのは、いわゆる避難所支援ではなく、災害後も在宅で暮らす被災者の健康評価と困りごとの聴きとり、看護対応です。

御船町は、2026年6月末現在の人口は17,241人、7,873世帯。町の高齢者保健福祉計画では、2025年の高齢化率は35.4%、そして今後も上昇すると推計しています。町の中心部から中山間地域まで居住地が広がり、高齢者単独世帯つまり独居高齢者の存在は災害以前からの地域課題でもありました。(御船町「人口・世帯数」御船町高齢者保健福祉計画・第9期介護保険事業計画
熊本県内で最大震度7、御船町にも災害救助法が適用されています。発災直後には水道水の濁りや断水が起こり、複数避難所と応急給水所が開設されています。8月6日午後2時現在の報告では、御船町の被災状況は、死者はなく、軽症3人、中等症6人、重症4人、一部損壊27棟です。ただし、住宅被害数には推計値が含まれ今後修正される可能性もあります。(熊本県「人的被害等の状況(8月6日14時時点)」

災害時、避難所に集まる人々については、健康状況は複数者の関与のもとに比較的把握しやすく、また、ボランティア活動によって最低限にしても継続支援も可能です。が、自宅に留まっている人あるいは自宅を離れて他地方の子どもや親族宅に移った人の状態は把握できません。最大の問題は、孤立したまま発言もなさらず、他人との接触もない高齢者、独居者、持病持ちの方、認知症や精神的不調を抱える人、そして避難所生活に適応しにくい人々であろうかと思います。

(上)財団理事とネットワークの仲間・(下)社会福祉協議会での打合せ、地の利を知ったネットワーク仲間がアドバイス

表面上は「在宅で生活できている」ように見えても、服薬の中断、食事の偏りや水分不足、熱中症、睡眠不足、余震やガタの入った家屋への不安などなど、少しずつ健康を損なうことがありましょう。

8月5日から始まって巡回にネットワーク看護師たちが参加しました。私も財団理事と現地入りし、シャドーイングさせて頂きました。自宅が少し壊れたためでしょうか、どこかに避難されたか2、3軒は無人、1日半で20人弱ほどの情報を得ました。幸いと申したいことは、大きな健康問題が確認されなかったことです。しかし、外気温37℃、酷暑のなか、電気は復旧しておりエアコンはあるのに使われていない高齢者が複数人・・・停電や断水、生活環境の混乱が重なる災害時には、熱中症につながりかねないのに、です。「電気代がもったいない」「風が苦手」「暑さをあまり感じない」といった高齢者特有の事情にも配慮しながら、室温、水分摂取、服薬、食事、睡眠などを巡回看護師は丁寧に確認し指導していました。

「特別な問題はなかった」ことは決して訪問が無意味を示すものではありません。むしろ、実際に会って対話し確認し、「今のところ大丈夫!」と判断したできたことは成果です。また、看護師が一度でもお顔をみることで、次に何かおかしいとなった時に相談するところ・・・今回は社会福祉協議会ですが、その接点は確立したと思います。また、短期派遣看護師たちが、住所を確認しカーナビを見ながら一軒ずつ訪ねるやり方だけでは広域多数者を把握するのは困難だと思いました。将来はネット化でしょうが、近未来の高齢者は無理でしょう。お留守だった家も避難されたのか外出なのか、はたまた入院されたのか、再度確認する必要もあります。

今回の私どもの経験は外部派遣看護師数を多くすればよいではなく、現地の保健師、地域包括支援センター、ケアマネジャー、民生委員、訪問看護事業所、自治会、消防団、警察も?でしょうか、地域に根付いている人々との情報をつなぐことの重要性を理解させてくれました。が、被災地のこれらの行政機関が災害直後にはどれほど多忙か・・・古い話ですが、阪神淡路大震災後、厚労省研究費での研究を発表したシンポジウムで、兵庫県と神戸市の保健師ドノが、「不眠不休と云いますが、寝ていないとは申しませんが、1年間休んでいません!」と仰せだったことを思い出します。現在の働き方・・・では問題でしょうが、緊急時です!また、発災直後に訪問した郷里宝塚市役所では、敢えて申しますが、善意ではありますが、送りつけられる物資の受入れ業務に追われて、必要なところへの分配に手間取っていると嘆かれてました。

37度の炎天下・・・住宅地の中を巡回して回ります

救援側の体制、受け入れ側の体制づくりも、その昔に比べ、ずいぶんスマートで効率的になっています。しかし、支援対象者選定、訪問先優先順位、訪問の記録、再訪や医療への橋渡しまでを一つの仕組みにしなければならないと思います。

災害には急性期があります。しかし、高齢者の孤立、独居、交通手段の不足、医療・介護へのアクセスの難しさは地震によって突然生まれた問題ではありません。平時から存在していた地域の弱点が、災害によって一気に拡大し、見えるようになったのです。在宅看護センターの看護師は、日頃から人々の暮らしの場に入り、病気だけでなく、住環境、家族関係、食事、服薬、認知機能、生活上の不安を総合的にみています。この総合力と云いましょうか、在宅ケアの「暗黙知」力こそが避難所外にいる被災者を支える資源だと思いました。

私どもの今回の御船町活動は、まだホンの小さな一歩にすぎません。まず、現場の負担にならないこと、既存の地域ケア力と支援体制を尊重すること、訪問件数を競うのでなく、それを要する人を必要な支援につなぐことと考えます。

まだ、進行中ですが、今回の経験を丁寧に検証し、災害時に地域の看護師がどのような役割を担い、全国の在宅看護センターネットワークがそれをどう支えられるのか、具体的な仕組みができれば嬉しい・・・と思っています。

避難所に来ない人、来られない人の暮らしを誰が見守るのか。その問いに応えることは、災害看護であると同時に、これからの超高齢社会における地域看護の課題でもあると痛感しました。

カーナビで訪問先の確認