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令和8年版厚生労働白書

先週(2026年9月29日)、『令和8年版厚生労働白書』(厚生労働省HPより)が発表されました。仕事柄でもありますが、毎年、この白書の大方には目を通します。令和8年版は手前味噌ながら、笹川保健財団が取り組んでいる「在宅看護」すなわち「地域在宅看護・・・ケア」とも、そしてその中でも何とかしないといけない「AI・ICT活用」に対してもたくさん示唆がありました。

「白書 White Paper」はわが国の中央省庁が編集する刊行物で、政治社会経済の実態や政府の施策の現状について国民に周知することを目的に発行され、政府の施策の現状分析と事後報告を中心とする資料を発表しています。しかも、難し気な統計やデータ、法令などは含まれていないので、私ども国民はしっかり読みこんで政府に意見を具申すべきものでもあります。ついでに、白書とは一般的には政府刊行物ですが、法律上の正式な名称に「白書」と書かれているものはごく一部だけだそうです。というのは、もうひとつ「青書」もあるからでしょうか?かつて国際保健分野の仕事をしていた頃は、外務省の年次報告書も手にすることがありましたが、外務省のそれは「外交『青書』」でした。いずれも表紙の色からの名前だそうです。ちなみに、イギリスは白書white paperで、スペインは黄色だそうです。

「令和8年版厚生労働白書 これからの医療・介護・福祉の現場で働くことを考える」(厚生労働省HPより)

さて『令和8年版厚生労働白書』の最大メッセージは、2040年に向けて、医療・介護・福祉の需要増は続く一方、担い手は不足し、AI他テクノロジーを行使して生産性を高めつつサービスの質を維持する必要があるとしていることでしょうか。この分野に関与する人は、皆、そんなこと云われなくとも判っている!!と仰せでしょうか。

この白書は2部からなります。第1部は「テーマ編」、その主なメッセージ「これからの医療・介護・福祉の現場で働くことを考える」では、① 最大の問題は「人手不足」です。少子高齢化・人口減少によって、医療・介護・福祉を必要とする人々は増え続けますが、少なくなってきた現役世代でそのような人々をどう支えるか・・・街を歩いていても高齢者ばかりの現在、切実に感じます。この白書はさらにケアに関する需要には大きな地域差があるとし、地域毎の実情に応じたサービス体制が必要と指摘しています。そしてそのための② 解決策の大きな柱が「生産性向上」と喝破しています。が、生産性向上とは、単なる人員削減による効率化ではなく、ICT、AI、ロボットなどなど、ケアの世界にはなじみにくいと思われてきた機器をも活用し、まず、記録・事務・情報共有といった現場外の事務的負担を減らし、専門職が本来行うべき対人サービスに時間を振り向けようと指摘視しています。私どもの仲間「日本財団在宅看護センタ―ネットワーク」での、ほとんどの事務所が何らかの機器を活用されているようです。今回のこの白書では、相当なボリュームがAI・ICT・ロボット関係に割かれていますが、それはとりもなおさず、医療や看護だけでなく、介護や福祉分野でもこれらテクノロジーの活用は当たり前になってきていると理解できそうです。

第2部は厚労行政全体の現況で、働き方改革、多様な働き手、生活困窮・福祉、年金、医療イノベーション、医療・介護、健康・安全、障害者支援、国際保健、行政・情報政策の10章で、現在の厚生労働行政が整理・報告されています。

財団が重点をおいている在宅看護の立場からは、「人が足りない→人を増やす」ではなく、「限られた専門職をどこに配置し、専門職として何に注力するべきか」を問うべきとしていると理解しました。これは、笹川保健財団が目指す在宅看護による地域保健の効率化の方向性でもあり、具体化が問題なのです。判っているけど・・・どこから手を付ければよいのか、です。

そして、地域でのケアは、あくまで住民主体なのです。しかし、昨今のようなカスハラ(カスタマーつまり顧客からの嫌がらせ、相手に不快感や精神的身体的苦痛を与える迷惑行為)が蔓延している状況からは、住民主体という言う意味が誤解されているのかとも思います。何でもわがままを言ってよいのではなく、きちんと社会の規範を護ったうえで、数少なくなりつつある専門家の活動を効果的に利用していただきたいものです。ちょっと怒りついでに、申させて頂くと、何だか最近の人間の質が劣化しているようにも思います。

ケアは、相互の信頼関係が成り立たないと無理、私どもの仲間の看護師たちも極力努力はしていますが、精神的な苦痛もさることながら、身体的に危険を感じながら良いケアを継続するなど、無理です。その内、AIロボットがケアに入ってくると、一定のハラスメントを感知すると、「ケアは出来ません!!」となるかもしれません。

それまでは、AIやICTが記録や情報整理、状況監視を担当し、人間の看護師は生身の利用者ドノの日々の生活に目を配り、些細な身体変化をも察知し、ご本人やご家族と相談して、可能な予防手段を行う、あるいは最後の日々の看取りに関与する・・・といった「人間」でこそ可能な独特の活動にエネルギーと時間と誠意を傾注する・・・となるのが理想でしょうか。

医療従事者によるケアの様子(宝命の郷にて)

2040年頃には、病院など医療施設だけが増え続けるニーズを受けるのではなく、「地域・在宅をどう組み直すか」といった未来志向の視点でこの白書を読むべきであろうと思いました。白書は決して「何が何でも在宅医療・看護にシフトする」とは書いてありません・・・が、全国百数十の在宅看護事務所が連帯しているネットワーク、各地の地域差も踏まえて、日本で実践可能な対案ができると嬉しいことです。

なお、厚生労働省のホームページを開けると、図のような画面がでます。その下の方に『厚生労働白書』とあり、本文と概要版が掲載されていますので、是非、ご一読を。そして、さらにホームページの下の方には、【国民参加の場】があります。ご意見はこちらからです。

厚生労働省HP 白書の場所
厚生労働省HP 国民参加の場