会長ブログ Chair's Blog

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熊谷博子監督の新作「作兵衛さんと日本を掘る」

「さくべぇサン!」と声に出して呼びかけますと、とても親しい人のようにきこえます。
この作兵衛さんは、日本初のユネスコ記憶遺産として登録された田川、飯塚の炭鉱で働く人々とその日常を絵として残した炭鉱夫にして画家の山本作兵衛さんです。

2001年4月、福岡県宗像市に開設された日本赤十字九州国際看護大学で国際保健を担当した後、5年目から学長を務めることになりました。ご挨拶を兼ねて、近隣市町村や赤十字関係施設をめぐりました。田川市と飯塚市に隣接して、後に平成の合併で嘉麻市となった自治体がありましたが、当時の筑前山田赤十字病院、現嘉麻赤十字病院があります。大病院ではありませんが、ほんわかとして、人々が安らげる医療が提供されており、不謹慎ですが、ちょっと入院したいなぁなどと思う雰囲気でした。
当時の幹部にご挨拶と今後のご支援をお願いした後、大学事務長と立ち寄ったのが、田川市石炭・歴史博物館です。他に入館者もおられず、閑散としていましたが、私は博物館に入る前に、構内にある山頭火の「廃坑若葉してゐるはアカシヤ」の碑の前で動けなくなりました。山頭火に凝っているわけでもなく、それまで炭鉱について勉強したこともないのに・・・まぶしい初夏の光の中、振り返った彼方に、巨大な立坑櫓が怪物のように見えました。

山頭火の碑

山頭火の碑

竪坑櫓

竪坑櫓

 

そして、館内で見た作兵衛さんの絵とその作者のお顔、率直に申して、長年、炭鉱夫としてご苦労されたであろうと思う・・・とは、私の偏見でもありましたが・・・この人、何と優しいお顔、そして決してプロの画家的ではない・・・後に度々拝見することになった、上半身裸の女性が石炭を盛り上げた籠を引っ張っている絵でした。地底の、多分、薄暗い坑道の中、辛い苦しいはずなのに、絵は何と美しい!!
間もなく、ユネスコ世界遺産に登録されたため、有名になられた作兵衛さんと石炭・歴史記念館・・・福岡県立大学での式典にも参加させて頂きました。映画も見ました。何度か知人を案内もしました。

その作兵衛さんが、畏友熊谷博子監督の手で甦りました。
「未来へ突き抜ける炭鉱力。ゴットン。 作兵衛さんと日本を掘る」
熊谷監督とは、30年前、アフガン難民援助の頃からのご縁です。偏見と独断で申しますと、この方は多くの人が気づかないもの、滅びゆくもの、虐げられたものに厳しくも暖かい目を向けて、見たくないっと拒否したいようなものを、美しい映像に撮ることができる方・・・と私は思っています。私には、おなじみの山や景色を素直に懐かしく見ることもできますが、日本の近代化を支え、そして「終わった」炭鉱とそこに生きた人々を熊谷監督がどのように現在に再生させられたのか、それを私はどう受け止めれば良いのか・・・この方の作品は、いつも楽しみであると同時に、ちょっと怖い気もします。
皆さまも是非ご覧ください。
ポレポレ東中野では6月1~7日は10:20と20:30、6月8~21日は12:50と15:30に上映中、また映画「作兵衛さんと日本を掘る」公式サイトにも情報ありです。

山頭火の句では、「分け入つても分け入つても青い山」が良く出ますが、私は、歳をとり、両親を見送った後、「山へ空へ摩訶般若波羅密多心経」の句が、時折、思い浮かびます。

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