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Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

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アフリカのエボラウイルス病

新しいという意味のnewの複数形がニュースNEWSですが、それは北=north、東=east、西=west、南=southからなるという誤った説を改めて思い出させます。

新緑以上にフレッシュだった5月の改元で新しい令和時代を迎えたわが国、その2週間ほど後には、またもや北朝鮮が、新型ともされるミサイルを発射しました。

そして、ここしばらくの米中貿易戦争ともよばれる、東西両国間の関税問題があります 。

そして、わが国首相のイラン訪問が報じられていた中、ホルムズ海峡のオマーン湾で、日本の海運会社所有のオイルタンカーを含め、二隻が砲撃を受け、乗組員は船を離れたと報じられています。

これらは、身近と云う言葉も不適切な気がしますが、わが国、私たちの日々の生活と関係するかも・・・との危惧を、少しは感じるべきもののような気がします。心配したらどうなるの?ではありますが。

最後に遠い南ですが、アフリカ中央部の大国コンゴ民主共和国(Democratic Republic of Congoの頭文字で、DRコンゴと通称。アフリカには、大河コンゴ河を挟んで西側に、コンゴ共和国<Republic of Congo>もありますので、要注意)では、もうエボラウイルス病(Ebola Viral Disease、エボラ出血熱と通称されていますが、正式名はエボラウイルス病)が続いています

数年前の西部アフリカのギニア、シエラレオネ、リベリアでの大流行時には、総計28,500名以上が感染し、致死率は約40%(10人が感染したら4人が亡くなる)でしたが、今DRコンゴの東部で広がっているエボラ、つまり進行しているアフリカ中央部のそれは、昨年10月が初発で、6月13日までに2,108名が感染発病しています。まだ、西アフリカの1/10などと申してはいけませんよ。人口規模が違う地域、そして致死率は67%と高いのです。

直近1週間に20人以上の新患が出ている上、6月11日には、とうとう隣国ウガンダに広がってしまいました。とうとうと申したのは、DRコンゴと国境を接するウガンダや南スーダンは、とても慎重に対策を講じていると聞いていましたから、さぞやWHOを含む現地の担当者は落胆しているだろうと思う反面、いっそう、忙しく、また、厳しい体制になっているだろうと思います。(図参照)

 

エボラは、感染力が強く、いったん感染するとほとんど発症し、致死率が高く、しかも決定的な治療薬やワクチンがなく、現在もっとも対応困難な感染症です。病気の原因であるウイルスは判っていますが、なぜ、時折それが突然人間に感染するのか、そもそもウイルスはどこにいるのか・・・他沢山の調査や研究はありますが、まだ、すっかり解明できたわけではありません。そして、いったん発生した後の解決が難しい理由の一つは、日本では当たり前のような地域社会の衛生状態や清潔とか予防と云った具体的カタチとして示しにくい健康保護に対する人々の意識を、どう変えるかもあります。

けれども、何より、重要なことは、地域の治安の安定です。

この数カ月、感染が抑えきれないDRコンゴの東北部(図の朱色の部分)は、長年の地域紛争の場です。実際、今回のエボラ発生後も、何度も、臨時に設置された診療所が襲撃されています。平和な日本にいては、想像もつかない・・・のですが。

もう20年も前にもなりますが、この地でブスブスと小さな紛争が続いていた中、コレラ、赤痢、脳炎、麻疹、ポリオ、肝炎、原因不明の出血熱などなど、複数感染症が発生しているというので、WHO本部緊急人道援助部に勤務していた私は、何度かこの地を訪問しました。本物の壮大な熱帯雨林の中に点在する村落をめぐりました。どちらに向かっているのか、さっぱり判らない中、1920年代に作られた旧宗主国ベルギーの作った診療所跡もありました。

夜は、ビール工場の廃墟のような事務所にガードの兵士に守られて休みました。仮眠ですが、暑い暑い夜も、冷や冷やしながらの微睡<マドロミ>でした。いくつかの地域住民の対立・・・それが紛争ですが、現地には武器を作るような能力があろうとは思えませんでした。

誰が武器を与えているのだろうか?

何のために武器を与えるのか?

と武器を持ったガードに護られながら、腹が立ちました。

遠い大国では、産業が発展し、物品が交流し貿易戦争が起こります。武器や兵器の産業は、巨大です。地球温暖化の原因も、そのような地域でつくられている・・・その余波は、遠いアフリカで、対処困難なウイルスをはびこらしているのかも・・・一日も早いエボラの終息を願います。