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Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

猫イメージ

私、ネコが好き、でも・・・『ネコ・かわいい殺し屋』

私の周りには、ネコ好きはゴマンといますが、スチーフンイワサザイと聞いて、それが南北2島からなるニュージーランドの間の南島から3.2kmにあるスティーヴンズ島にしか生存していなかった夜行性で昆虫食の飛べない小鳥で、1890年代に建設された灯台の勤務者が持ち込んだ一匹のネコとその子孫らによって、たった1、2年で絶滅したと知っている人は皆無でしょう。もちろん、私も、このショッキングな本を読むまで知りませんでした。

ネコが自然にとってどんな害があるか・・・多分、ネコ好きたちは、言下に否定するでしょう。でも、昨今の地球温暖化の原因は人間(の活動)にあるらしいことは事実であることからして、悪意も意図もなくとも、また、何も意識しないままに、ヒトまたはネコが自然界に及ぼしている負の影響がないと断言できる人もいますまい。

『ネコ・かわいい殺し屋』は、ティプルスと云う名前のネコとその子孫が、スズメほどの大きさの、飛べない小鳥を食べつくし、あるいは弄んで死なせたかもしれませんが、すっかり殺してしまった、つまり絶滅させたという経過から始まります。ここでは、まぁ100年以上も昔の話・・・なのですが、実は1980年代のウィスコンシン州、つまりは現在のお話以下、今に続くネコの影響は無視できません。

毎度の古い話ですが、昔、駆け出し小児科医の頃、生まれたての赤ちゃんに発症する出血対策をテーマに勉強していました。さてさて、ウィスコンシン州は農業や牧畜の盛んな地域でありました。冬、サイロで傷んだ/十分成熟していないまま保存されたクローバを与えられた牛に、死に至る出血症状が広がったことで、血を固めるのに必要なビタミンKの働きを阻害するクマリンと云う物質が、ウィスコンシン大学マディソン校の化学者Karl Paul Link先生の学生たちによって発見されました。その物質は、今では心筋梗塞や脳血栓の治療、再発予防から人工弁使用者の常用薬ともなっているワーファリンという薬剤の開発につながっています。

1978年、高名なJohn W. Suttie教授を訪ねた際、壮大な夕日の下、果てしなく広がる牧場の間を運転しながら、ドラマティックな経過をうかがったことを思いだしながら、現在のネコの予期せぬ影響を読みました。溜め息が出ますが、ウィスコンシン州でも、ネコが自然の生態を脅かしているのです。

地球の環境が脅かされつつあるのは、皆、昨今の異常気象から実感せざるを得ないのではないでしょうか?その地球上には、多種多様な生物が存在し、微妙なバランスが保たれてきたのでしょう。生物の多様性を脅かしている最大の種<シュ>は、多分、人間でしょう。が、今や、数の上では、世界的にも犬を超えた愛玩動物でもあるネコの影響の何と大きなことか!!ただ、ネコはネコでも、野外にたむろするネコたちに限ります。

この本の著者らは、個体数モデリング法を使って、きちんとした科学的研究として、ネコのもつ病気、ネコが及ぼす感染症、そして他の生物の存在と絶滅のリスクを解説しています。何と、世界では、すでに野放しネコや野生化したネコ対策がいくつもあること、どうすればネコと人間、そして自然の間に良い調和が保たれるのかについても、科学的で現実的な取り組みを解説しています。

私たちが猫を飼ってはいけないのではなく、他のペットを含めて、愛玩動物を保持する場合の責任が解説されていると思います。ネコにとって、私にとってもあなたにとっても、そして野生の生物や自然にとっても良いことは何か、を考えねばならないのです。差し当たって、ネコは屋内で飼うことです。誤解のないように申しますが、ネコのすべてが悪でも問題でもなく、家の外にいるネコ・・・飼われていても自由に屋外に出て行けるネコと飼い主のいない野放しネコ・・・日本の野良ネコよりもっと自然生活優位な野生化した・・・ネコとでも云いたい猫が問題なのです。

この本は、もちろん、一般的に期待される愛らしさ満載のネコ、ネコ本ではありません。が、ネコの全てが問題というのでもありません。主にアメリカのいくつかの地で起こっているネコによる生態系への負の影響を科学的に示すことを通じて、自然と人間の付き合い方、人間が所有し、思うままにあしらっている生物や環境を適正に保持することの重要性を説いているように読めました。

最近、やかましく云われるようになった分野に、AI(Artificial Intelligence人口知能)とエコロジー(Ecology生態学)があります。

生態学とは、生物や生物群とそれを取り巻く環境の相互関係を研究する分野と理解されてきましたが、ヒトも含めて、個々の種<シュ、生物の種類>が、ある環境で、どのように存在してきたか、存在できるか、また存在すべきかだけではなく、同じ環境下の異種または同種との複雑化した関係など、どのような発展があるのか、想像もつきません。ただ、昨今の気象変動もあって、ここ数年の環境問題との関連は、たかがネコとスチーフンイワサザイではないことを、この本は示しています。例えは適切ではないかも知れませんが、風が吹けば桶屋がもうかる・・・を思い出しながら、そして深いため息をつきながら、本文260ページほどを読み切りました。