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サウジアラビア石油施設へのドローン攻撃 人間は賢いのでしょうか?

サウジアラビアの石油施設が、ドローン攻撃を受けて炎上したと報じられました。

ドローンというのは、超小型(無人)飛行機とかミニ無人機とか書かれていますが、一番安くは、たった1,500円で買えますし、カメラ付でも3,000円未満で入手可能です。人が行けないところの写真を撮ったり、広大な農地に肥料を撒いたり・・・の話は耳にしています。また、その昔、ラジコンで模型飛行機を飛ばしたり、ジープを走らせたり、などに熱中していた友人を思い出しました。しょせん、ちょっと格好良いおもちゃと思っていました。ところが、ドローンは武器!!!になりました。

サウジアラビアは、埋蔵量も毎日の産油量(約1,200万バレル)も世界第二位の石油王国であり、また、メッカ(正式にはマッカ・アル=ムカッラマ)というイスラム教最大の聖地をもつ中東のスンニ派(ワッハーブ派)イスラムの盟主であり、そして親米国です。もちろん、厳格なイスラム伝統を守っているお国柄で、現在でも、男性はトーブ、女性はアバヤと呼ばれる民族衣装の着用が義務付けられていると聞いていますので、日本のオール親米ぶりとは質が違う、政治的軍事的親和性だけが高いように、私は思っております。

それにしても、サウジアラビア東部のアブカイクとクライスにある国営石油会社「サウジアラムコ」の2か所の石油施設がドローンによる攻撃を受け、火災が発生した、産油量が半減した・・・のです。

サウジアラビアを訪問したことはありません。一度、リヤド空港乗換の飛行機に乗ったところ、急にジェッダ空港に行き先が変更され、そこから国内便でリヤド空港に行ったことがあるだけです。が、広大な砂漠の上を飛びました。そして今回攻撃されたアラビア海に近いアブカイクは、処理能力日量700万バレルの世界最大の原油精製施設があり、つまりサウジアラビア原油最大の輸出拠点のようです。もう1か所の攻撃地クライスは、地図上でみると150kmも離れた内陸部のようです。2か所にドローンで攻撃する!!石油施設って、その後の写真を見ても、頑丈な建物のように見えますが、簡単に燃え上がるものではなさそうですが・・・ドローンで攻撃する・・・可能でしょうか?

後に、攻撃はイラン国境に近いイラク国内の基地から、ドローンと巡航ミサイルが発射されたとの報道もありますし、直後には、アラビア半島の南端の隣国イエメンに拠点を置くサウジアラビアと対立する反政府勢力「フーシ派」がドローン10機で2か所を攻撃したとも主張しています。もちろん、このドローンは、2,000円や3,000円の代物ではないでしょうが、だれでもドローン=武器とは思わない・・・それを活用ではなく悪用した・・・本当でしょうか?

そういえば、同じく19年前の9月11日、世界を震撼させたアメリカ同時多発テロの攻撃の材料は、本格的な武器ではなく、民間航空機でした。使い方・・・次第で、何でも武器になることはあり得るのです。

今回の攻撃の後、何十億ドルも費やしたアメリカ製武器は、サウジアラビアの最重要な産油地へのいびつな攻撃を防げなかった(Billions spent on U.S. weapons didn’t protect Saudi Arabia’s most critical oil sites from a crippling attack)という記事もありました。そうなのです。国の治安、人々の治安は、武器ではまもれない、のです。災害の分類では、大工場の事故も戦争も人為災害ですが、事故は不注意であり、戦争は悪の意思が働いているのです。人間の意思・・・人間の知恵・・・

高度に精密な大量破壊武器であるミサイルを発明し、それを探知するためには、また、精密なレーダーを発明し、それを緻密に張り巡らしているのですが、それをかいくぐって遠隔地の一点をピンポイント攻撃する能力を人間は持ってしまった。そして、決して、大量殺傷力を備えて武器化するために作られたとは思えないドローンを悪用する知恵も、また、人間にはあるのです。

多数人命が失われてはいないとしても、こんな形の新たな攻撃が広がるようになってしまった世界。人間は賢いのか愚かなのか、ため息が出るばかりです。

 

9月18日のサウジ国防省が行った各国外交団への説明(在サウジアラビア日本国大使館経由)

1.14日の東部州アブケイク(Abqaiq)所在石油施設及びクライス(Khrais)油田に対する攻撃に関して、18日、サウジ国防省(マーリキー連合軍報道官)は各国外交団に説明を行うとともに記者会見を行いました。

【記者会見内容(要旨)】
・アブケイクに対し18機のドローン、クライスに対し7発の巡航ミサイル(うち3発は不発弾で目標に到達せず)の計25機のイラン製兵器が攻撃に使用された。これらは、イエメンから飛来してきたものではなく、北から南に向かって飛来してきたことが判明。現在,米国と協力し、発射地点を特定中。

・(サウジアラビアは軍事行動をとるつもりなのかとの記者の質問に対し)政治レベルが決定することである。

・今回の攻撃は、サウジアラビアのみならず国際社会全体に対する挑戦。サウジアラビアは、国連安保理をはじめ国際社会に本問題を提起する。攻撃を実行した者は責任を取ることになるだろう。