会長ブログ Chair's Blog

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健康をまもるための社会的決定要因 Social Determinant of Health

1986年カナダのオタワで、WHO(世界保健機関)が健康促進のための会議を開催しました。しばしば健康と云えば、病院、医師と看護師ら医療職を思い浮かべますが、顰蹙<ヒンシュク>覚悟で申すならば、病院は健康が壊れた時、つまり病気になったり怪我をしたりした時の修復場所とも申せます。
オタワ会議では、健康をつくる、健康を維持するには、①平和 ②住居 ③教育 ④食糧 ⑤収入 ⑥安定した環境 ⑦持続可能な資源 ⑧社会的公正と公平といった、およそ病気とか健康と云われて、すぐに思い浮かばない項目がまっとうされてこそ、私たちの健康がまもられるのだと理解すべきと云う意識を喚起するとともに、これらを健康(であるため)の前提要因としました。これらは1998年に改めて、健康(をまもるため)の社会的決定要因とよばれるようになりました。

2010年9月25日、全米科学・工学・医学アカデミー(注1)が、「ソーシャルケアのヘルスケア実施体制への統合:国の健康改善のための新たな改善策」という報告書を発行しました。

アメリカの医療費は、貧困者や高齢者のための保険はありますが、一般的には先進諸国中でも際立って高い、わが国に比すると想像を絶するほど高額でもあります。適正な公的皆保険制度がないからですが、オバマ前大統領が導入に苦労されたオバマケアとよばれる保険制度は、現トランプ政権によって差し止められつつあります。自由と民主主義のアメリカには、身の安全や健康を護ることは個人責任だから国家が口を出すべきでないという考えがあるとされます。しばしば、多数の犠牲者がでる悲惨な銃撃事件の後で銃規制議論が出るのはそのためです。

何にも規制がない=自由で良い、ではありません。理解すべきは、自由や権利と共に義務と責任があることですが、規則を作るのは難しい・・・ですね。

この報告書は興味深い指摘をしています。

世界全体、特に途上国といわれる貧困や低開発から脱せない国々のヘルス改善を扱うための学問体系として発達してきたグローバルヘルス(国際保健学)と云う分野がありますが、その専門家はアメリカのヘルスケア制度はグローバルヘルスの問題とよく似ているというのです。確かに、グローバルヘルスでは、ある病気や不健康を扱う際、その問題だけを扱う、つまり垂直的プログラムではなく、背後にある諸々を見た上で、一番問題になっていることを重点的に活動目標を持って行きます。が、アメリカでシステムを改善する際の議論では、そのような観点が省かれ、社会経済状態に恵まれない人々がこうむっている過大な社会リスクこそが効果的なヘルスケアの利益を損なっているとして、ヘルスシステムを強化するには、(ヘルス以外の)どこに、どのような介入をすべきかを検討することが重要だというのです。

また、報告書は、アメリカ社会では、上述した個々人の健康を護るための重要な基盤である社会的要因が等閑<ナオザリ>にされているとしています。特に、社会的なリスクとして、経済状態の不安定さ(=就業難、失業、低賃金、雇用不安定)、教育の欠如、地域住民間の疎通不備や地域の不穏さ、ヘルスケアを適正かつ十分利用できていない事態を指摘し、差し当っては、既存のメディケイドとメディケアという公的保険に頼る高齢者と貧困者、すなわち現に最も援助を要する人々を対象に、各州が柔軟な対応をとり、その成果をみながら全国レベルシステムを考えることを提言しています。

この新たな仕組みを動かすためにはawareness(認識/気づくこと)、adjustment(調整)、assistance(援助)、alignment(連携)とadvocacy(師事)の5つのAと、この5Aを実践できるソーシャルワーカー、地域保健専門家、看護師、医師、家庭での介護者、老年学者、法律専門家その他からなる活動チームが必要だとしています。また、生活上のあらゆる面で消費者動向を集め分析活用されているように、保健分野のデータを福祉分野につなげられるようにデータ集積と分析できる新たなデジタル情報技術も必要だと指摘しています。そして、当然ですが、このような新たな方策を実現するにための資源、資金は必要なのですが、それをどのようにヘルスケアに投入するかなどには、多々問題があるとしながらも、やってみる意義を強調しています。

そしてこの新たな提案のゴールは、

1. 前述5Aによるソーシャルケアのヘルスケア部門への統合をはかること、

2. ソーシャルケアとヘルスケアの統合のための活動チームを作ること、

3. ソーシャルケア部門とヘルスケア部門の双方に活用できるデジタル制度をつくること、

4. 両分野の統合に資金を投入すること、

5. 両分野の統合に投資し、実践し、研究し、効果を評価すること、

が大事だとしています。

とてもとても、すぐにできそうにない・・・と思いますが、彼の国のダイナミズムは、やると決めたら早いです。近い将来、わが国の国民皆保険制度と社会保障を統合したような制度が提案、実践されるやも・・・

でも、人類初の超高齢社会を進んでいるわが国こそ、それに対応できる制度を提案すべきだと思いませんか?私たちの進める「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」の進行に乞うご期待!!

注:全米科学・工学・医学アカデミー
科学、工学、医学分野を網羅するアメリカの全国的学術的民間非営利組織。国家と世界が直面する差し迫った重要課題につき、専門家の提言や助言をまとめ、毎月、多数刊行している。1863年、リンカーン大統領が科学アカデミーとして設立し、後に工学と医学が追加された。国家による健全な政策策定や世論喚起を通じて、科学・工学・医学の発展とともに適切な活用促進を目指している。

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