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ネアンデルタール人の子どもの歯の化石 育児と病気

自然災害の中でも台風は、地震と違って、かなり早い警告が可能です。実際台風19号も刻々と状況が報じられた上、直近から台風が日本に迫った後には、「命を守ることを最優先させてください」、「体験したことがないような危険が差し迫っています」との過激な警告が報じられ続けました。結果からして、確かに体験したこともないことが発生しました。被災範囲の広大さは東北大震災を上回っているでしょうし、その後の救援の困難さも、また、違うレベルを示していると思います。なぜ、かくも巨大な台風が生じ、わが国を襲ったのか?

まず犠牲になられた方々へのお悔やみと過酷な状況の中で救援復旧に当たって下さっている方々への感謝を申し上げます。

気候変動の結果が、アメリカ辺りのハリケーンや東南アジアの台風を巨大化させつつあることは、国際的に災害救援に携わっていた者の間では、1990年代半ばから問題にはなっていました。が、何といってもしっかりした科学的根拠がないままの危惧でした。ただ、2005年8月、ディキシーランドジャズ発祥の地アメリカ南部ルイジアナ州の港湾都市ニューオルリンズの80%が水没という巨大ハリケーン カトリーナが発生した後だったと思いますが、NHKの番組で、今回のような巨大台風の到来を予測した番組を見た記憶がありました。(調べました!!2006年2月18日からの二夜連続シリーズ 気候大異変の第1回異常気象 地球シミュレーターの警告) 正確ではないのですが、今回に近いような状況が想定されたような気がします。それにしても、予測しても避けられないのが災害の被災です。

こんな中、気候変動に関する資料を渉猟していたところ、ネアンデルタール人の子どもの歯の化石に関する論文とその解説に行き当たりました。フランスのローヌ渓谷付近で発掘された25万年前の人類 ネアンデルタール人の子ども二人の歯の化石から、その生活と環境の関係が解明され、また、解説されています。発端の論文はオーストラリアのGグリフィス大学の人類発生学と将来の環境に関する研究所の研究者Tanya M. Smithらの発表ですが、歯の表面をなすエナメル質には、木の年輪のような発育の跡が残るそうですが、その歯を薄くスライスして、最新の分析手段を用いると実に色々なことが判るのですね。

まず、バリウムアイソトープを用いた分析では、2歳半頃までは母乳で、その後は離乳したことが判明 したそうです。いわゆる開発途上国では、最近でも2歳前後まで母乳育児がなされたりしていますが、それは25万年も歴史ある、多分、ベストの育児法でもありましょう。社会が発展変化して気忙しくなってしまった先進国では、そんな長期間母乳育児できる環境ではなくなってしまいました。一人の女性としての社会的立場と子どもの立場をどうしたらよいのか、誰がどう決められるのでしょうか?そして、このネアンデルタール人の赤ちゃんは2歳半までに2度鉛にさらされていることや春先に生まれたことも検証されています。鉛に関しては、工業化後に環境汚染の原因となったとされているのを覆したのですが、ローヌ渓谷付近に鉛の産地があるそうで、そこからの汚染・・・と推測されています。

また、ちょっと難しくてよく判りませんが、酸素の同位体を用いた検査では、同地域に住んでいた近代の子ども・・・と云っても5,400年も前ですが・・・に比べて、とても厳しい冬と区分される季節を経験していたことも判明したそうです。ヘッ!!と思うか、フンと思うか、ホウッと思うか・・・25万年前の冬が厳しかったと云われれば、21世紀の日本の都市近郊に住み、都心の事務所で働く私には、冷房や暖房が許されているからではなく、心底、そりゃそうだろうと思います。ただ、過去1万年程度の地球の気候は比較的安定していたことに比べて、と云われると、台風と地球温暖化・・・という人為的環境破壊の影響を思わずにはおれません。

たかが歯ですが、何と沢山の情報を秘めているのでしょうか!!考古学や人類学の専門家は過去の証拠を掘りおこし、忘れ去られてしまっていることを検証し、片や、2019年ノーベル物理学賞受賞者たちは、何億光年も彼方の太陽系外の恒星の周りを回る惑星を発見され、共に手に触ることも出来ない彼方を求められていますが、やはり現在の私たちは、ホモ・サピエンス・サピエンス(賢い、賢い人)ですね。でも私たち現生人類は、化石として歯を残したネアンデルタール人とDNAは99.7%が一致しているとか・・・厳しい冬を過ごしたネアンデルタール人の親子、家族には虐待などなかったのでしょうね。