会長ブログ Chair's Blog

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国の消長 3ー破たん国家

古来の大国と云えば、チグリス・ユーフラテス川の間に栄えたメソポタミア文明の担い手アッシリアやバビロニア、ナイル河畔の古代エジプト王朝、インダス川流域に栄えた現在のインド、パキスタン、アフガニスタンに連なる国々、そしてお隣の中国の黄河・長江流域に広がったヤンシャオ、ロンシャン文化の殷や周王朝でしょうか。何千年も昔の栄華が発掘されていますが、なぜ、これらの国は継続しなかった、出来なかったのでしょうか?

南米に栄えた黄金の国インカ帝国は、前世紀以来の侵略に加え、1532年、ピサロがひきつれた僅か168名の兵士によって最後の時を迎えます。それ以前からの帝国内の混乱、中央アメリカから広がっていた天然痘の影響もあったとされますが、人数は膨大で酸素濃度の低い高地での生活・・・戦いには慣れていたが、士気の低い兵士、数は少ないけれど鉄砲と大砲の威力をもった征服者、部屋一杯分の金を呈上して許しを請うた王を殺したスペイン人の戦術もあったとされますが、インカはあえなく滅亡しました。長い歴史を誇る国・・・といっても、まったく同じ人種が続いている国は稀ですが、同じ人種だから、うまく行くとも云えないのは、今も南北に分かれて、休戦状態であるにすぎない朝鮮半島やクメール人同士が戦ったカンボジアがあります。国は、どうして生まれ、成長し、滅びるのか・・・紛争地で勤務した間、人間同士が何故戦うのかとともに、何時も、頭のどこかに国の消長が気になっていました。

破たん国家とか失敗国家(Failed state)という言葉があります。不安定なという意味の脆弱国家(Fragile state)ということもありました。それが行き着くと崩壊国家(Collapsed state)です。

これらには、様々な組織や研究機関が色々な定義をつけていますが、要は、国を律する権力が弱体化し、政府があっても機能していない状態の国です。厳密には、国もどき・・・です。私は、かつてそのような国のいくつかで、保健医療事業に関与させて頂きました。そのような国々で、私が実感していたことがあります。ひとつは、国の治安をまもる警察官や兵士の給料がきちんと支払われていないことでした。もうひとつは、教師の給料もきちんと支払われていないことですが、これは教師という仕事すら確立されていないこともありました。国民の安全を守る責務を負う警官や兵士への給料を支払わないのは、国民を守る意思がないのだと思いました。また、学校の先生の立場が確立していない、ということは国の将来を担う次世代への投資をなおざりにしていることですが、教育の成果は、今日明日に出ないが故に、少なくとも、最低限の教育は国家が責任を持つべきと考えていますので、教師に給料を支払えないことは、為政者が国(の未来)に投資する意思がないのだと思いました。このことは、アフリカに強い朝日新聞編集委員であられた松本仁一氏のユニークな名著『カラシニコフ 銃・国家・人々』(朝日新聞社 2004)に引用されています。さらに、その後、紛争地や破たん国家との関係が増えた後、少し嫌みなコメントを作りました。それは、破たん国家では大臣の数がとても多いことと、その大臣たちの子息の多くが欧米に留学していること、そのために必要なのかもしれませんが、大臣たちは、金融で名高い国々に口座を持っていることです。

ではある国家が、未来永劫とは云わないまでも、何世紀単位という間、恙なく存続するために必要なものは何でしょうか?

武力が国の存亡を律したことは確かにありましたが、それほど長期間ではなかったと思います。日本の江戸時代は、確かに将軍家という武士の統領が265年間の実質的為政者ではありましたが、武力というより、様々なレベルで華咲いた文化が国を支えていたように思いますし、思いたい気がします。

国が発展するある時期、経済力も必要ですし、国民を束ねるものとしては、何か共通の考え方といいましょうか、イムズとでも申せるものが役立つこともあります。民主主義、社会主義もその一つですが、完璧ではないようです。かつては、貧しい国が独立し、周囲の敵対する国と対峙するためには軍備力を要したこともありました。が、武力は、後々に問題を残します。宗教による統合もありますが、100%は難しい・・・では、本当に、それがなければ国が成り立たないというものは何でしょうか?

先々週のブログの繰り返しですが、国を形成するのは国民、国土、物理的にも成り立つ主権でした。では、国が持続的に存在するに必要なものは何でしょうか?

私の途上国での経験ですが・・・

しばしば、官僚制bureaucracyというと、何だか威張り散らして、偉そうで、何もしないお役人の集団がのさばっているようなマイナスイメージがあります。貧しい上に、紛争に明け暮れしているような国々には、官僚制度よりも武力が事を律するためもあって、官僚の力は弱く経済力もなく、継続的はおろか、一時的にも何かを為すことすらとても難しい、ほとんど不可能でもありました。そのような状況では、いわゆるNPO同士の小規模組織の協力はまだしも、何年、何十年を見通した社会インフラの建設や制度を稼働させ続けることは、国際協力の計画がいかに良くとも、持続性は期待できませんでした。それは制度として、一定の機能を保持し続けるための能力でもある官僚制度が弱体だからだと思うことがほとんどでした。

私が見た、観た、視たいくつかの破たん国家は混乱の極みにあり、とても「国」と呼べる状態ではありませんでした。

法律があってもそれが護られているとはいえず、生活に必要な社会インフラはほとんどすべて機能しておらず、官僚は、自分たちが何を為すべきか、どうすればよいのか判っていない様子でした。

そのような状況で起こること・・・テロとそれに身を投げる人々・・・この辺りは、また、いずれ。

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