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Chair's Blog 会長ブログ ネコの目

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再びマスクのお話ーマスクが重症化を防ぐ!!

5月末、新型コロナウイルスパンデミック第一波の終わり頃、マスクについて書きました。

当時は、マスクを手に入れるのが困難だったり、保健医療の第一線で、必要な個人防御具(Personal protective equipment=個人的・防御・道具の頭文字をとってPPEとよばれます)が払底していたりして、地域の第一線の在宅/訪問看護に従事する私どもの仲間も、自分やスタッフや、利用者やそのご家族を護るための資材を確保するに、ちょっと眼(マナコ)が吊り上がっていました。

やがて、少なくとも電車、バスなど公共交通機関に乗車する際にはマスクは常識的になりました。当初、顎の下にひっかけたり、口だけを覆ったりするなど、きちんとマスクを着けているとは云いがたいお方も見受けられました。感染者数の増加やロックダウンはありませんでしたが、7月頃には、ほとんどの人が、きちんとマスクをつけておられるようになりました。そして、酷暑の時期、ちょっと大変でしたが、一気に涼しさを超えて肌寒くなると、マスクって結構防寒具だと思える日々が参りました。

ここしばらくの間、目に止まったマスク関連論文をご紹介します。

いつものように、世界的な医学週刊誌Lancet 2020.0803号のオーソドックスなタイトルですが、「COVID-19世界的流行<パンデミック>の間のマスク使用」です。

少し前の話ですが、7月末、新型コロナウイルス感染者が世界で1,600万人以上、死者60万人以上の時点です。効果が確実な治療薬もワクチンもない中、医療従事者と一般市民がマスク(医療用、普通の使い捨てマスク、精密なN-95マスク、布製マスク、バンダナなど)を用いてウイルス感染を減らせるかどうか・・・の議論が行われました。

世界規模流行の初期には、自己汚染(マスクする方が不潔になる?)などがあるかもしれないとか、多数者がマスクを使うと、供給が追い付かず、真にマスクを必要とする保健医療者へのマスク不足がおこるから反対・・・との意見もありました。しかし、その後、新型コロナウイルスの広がりを防ぐマスクの利点が確認され、また、無症状での感染の危険性が判り、次第にマスク着用が確立しました。

少し飛んで9月末、アメリカ疾病対策予防センター(CDC)の情報(日本語)では、新型コロナウイルス感染は、感染者の咳嗽、くしゃみ、発言時の飛沫から拡散すると確認され、その予防にはマスクが有用で、フェイスシールドは意外と役に立たないことが判りました。

一時期、トランプ大統領の傍で姿を見かける機会が多かった、アメリカの感染症の第一人者で、1984年から実に36年間も、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所長を務められているアンソニー・S・ファウチ博士は、例え、ワクチンができてもマスク着用の必要性はなくならない・・・マスク、1.8メートルの対人距離、手洗いが大事と仰せです。

そこで、また、興味深い論文が出ました。“Facial Masking for Covid-19 – Potential for “Variolation” as We Await a Vaccine(新型コロナ対策のマスク着用 – ワクチン作成を待つるまでの「種痘」の可能性)“です。これは、まだ、仮説の域ですが、マスクで重症化が防げるかもしれないというのです。感染したとしても、マスクで重症化が防げるなら、個人やその家族にとっても、医療スタッフにとっても、病院にとっても、ありがたいことです。

ごくごく簡単に申しますと、新型コロナウイルスが広がり、色々な対策があったか、結局、マスクと対人距離と手洗いが感染防止に重要だ。が、マスクは、病気の重症化を防ぐ可能性がある・・・との仮説が裏付けられたら、皆がマスクする・・・そして、そうなれば、有効なワクチンが完成するまで、マスクをすることで、集団の免疫が上がり、色々なところで、ウイルス拡散を遅らせられる、いわば「人痘接種(注)」のような形態が可能性かもしれない。

仮設!であるが、アジアにはマスク文化がある。2003年頃のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時、多数住民がマスクしたことで流行は制御されたように、他の呼吸器ウイルスの拡散とマスクの間に強い関連が示唆される。アメリカでは、ボストンの市立病院でのマスク作戦で医療従事者の新型コロナ感染が減っている。

新型コロナウイルス感染では、無症状から重症化、死亡まで様々な症状をきたすが、最近のウイルス学的、疫学的、生態学的データから、マスクにより、病気の重症度が軽減される可能性が推測されている。これは、摂取ウイルス量と病気の重症度の関係に関する今までの理論と一致する。一時に、大量ウイルスを摂取すると、身体内の免疫調節力が対応不能となり、重症度を高める可能性がある。マスクの素材によって、ウイルスに暴露されても、実際に体内に吸収される量が減るならば、その後の経過は異なる。何よりも、マスク文化のある地域で重症者が少ないこともこの仮説を支持するものと思われている。

あと年の単位で新型コロナが悪さをすると予測されていますが、① マスク、② 対人距離、③ 手洗いで、この難儀をやり過ごしましょう。

注)人痘接種とは、天然痘に罹患した患者の膿疱(ウミを持った皮疹)やかさぶたの一部を、天然痘にかかっていない健常者に接種(皮膚に傷をつけたり、鼻腔に入れる)して、人工的に軽い感染を起こし、天然痘に対する免疫を惹起獲得させる方法。

人類最古の予防接種法。紀元前のインドなどで行われていた。日本では、福岡県秋月藩の藩医緒方春朔(1748ー1810)が、1789(寛政元)年頃の天然痘流行時、診察した患者のかさぶたを粉末にし、藩内の子どもの鼻腔に噴霧し、軽度の感染を起こし免疫を獲得させている。ジェンナーの種痘の6年前である。