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看護の歴史的講演会の開催!

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笹川記念保健協力財団は、「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」の特別記念講演会として、2016年1月17日(日)、国際看護協会(ICN)会長ジュディス・シャミアン博士と日本看護協会坂本すが博士というツートップに、WHO神戸センターの高齢化問題研究の先鋭が加わる歴史的ともいえる特別記念講演会「高齢化時代の看護の力-在宅看護の役割-The Significance of Home-care Nursing in Aged Society」を開催しました。

イントロは、狩野恵美先生(WHO神戸センター)。WHOがはじめて高齢化問題についてとりあげたWorld Report on Ageing and Health (http://www.who.int/kobe_centre/mediacentre/world_report_on_ageing_and_health_eng.pdf)を紹介しつつ、WHOが提唱する高齢化対策は従来のイメージから脱し、単なる介護や疾病対策の枠にとどまらず「まだまだ元気」な高齢者が、機能的能力を維持しながら「健康な」「高齢社会」を実現することに焦点があると解説されました。そして、Healthy Ageing(健康な加齢)を実現するために必要な環境整備をも含む、包括的なライフコース・アプローチの中で看護師が活躍できる場は多くあるとも指摘されました。最後に起業にも有用な「介護予防政策サポートサイト」(http://www.yobou_bm.umin.jp/index.html)を紹介され、 各自治体における高齢者の要介護リスクの情報や介護リスクの社会的決定要因あるいは介護予防施策の研究について共有いただきました。世界最速の高齢社会を驀進する日本が、その経験と教訓を世界に発信しつつ、途上国を含む外国のプライマリー・ヘルスケア・システムについても習熟し、共に学び、協調しあえたら、グローバルな発想を述べ、講演を終えられました。

 

国際看護師協会シャミアン会長は、「高齢者と地域社会の健康と安心のための看護と在宅ケアの役割(The role of Home Care and Nurses in Keeping Communities and Senior Well)」と題し、高齢化、疾病構造の変化、科学技術の発展、医療費の増大、家族構成の変化、といった社会変化が在宅看護の需要と意義をますます高めている時代だとし、在宅医療・看護に他職種、ボランティアや家族、当事者(患者、療養者)などチームで取り組むことの大切さとそこにこそ意義ある看護師の役割の大きさを力強く解説されました。カナダ最大の在宅医療提供組織で9年間働かれたご自身のご経験をもまじえながら、訪問看護師を多く含む当日の参加者や起業家育成事業の関係者に「在宅看護の大きな波は必ず来る。苦労を乗り越えて頑張っていただきたい」「是非、日々の実践の声を政策提言として届けてほしい」とエールを送られました。会場から、直接、空港に向かわれるという忙しいご予定の中、カナダの遠隔医療や医療通訳、また、ケアマネジャーの役割についての質問にも、時間を惜しんで応答下さいました。

締めは、日本看護協会坂本すが会長の力強いインフォーマティブな講演でした。まず、わが国の在宅看護にかかわる法律・制度についての日本看護協会の取り組みと最新情報を、簡潔に解説いただきました。そして、日本の少子・超高齢・多死社会において「時々入院、ほぼ在宅」が求められてくる今後の患者像と医療提供体制について述べられた上で、チーム医療のキーパーソンとしての在宅看護師に期待される役割を強調されました。例えば、「特定行為に係る看護師の研修制度」の策定については単なる看護師の「診療の補助」の範囲の拡大にとどまらず、はじめて看護師の「判断力」という文言が法制度に明記された画期的なことであり、重要なことは、自分で考え、判断できる看護師になることであると語られました。これからは、個人、組織のみならず「地域全体のケア管理者」としての看護師を目指し、しかるべきデータを収集し市民や社会へ発信していくべきだとも述べられました。

 

200名近い参加者は、地域の保健医療、在宅看護の気運の高まりを実感するとともに、在宅看護師の現場の声を意見として集約発信することの重要性をも教わりました。

 

講演後、日本財団在宅看護センター起業家育成事業」三期生募集のための説明会を兼ねた懇親会もありました。昨年度の研修生で、既に開業している一期生と、間もなく研修が終わる二期生は、揃いの財団ジャンパーに身を固め、ご関心の方々の質問に対応いたしました。

参加者からは「世界の高齢化の現状を知り、国際的な視野を持つことは大切だ」「色々な問題を知った上でひとりひとりがどう考えるか、ということが大切。判断できるナースになりたい」「日本看護協会のビジョンを頼もしく感じた、現場から政策提言に声をあげていきたい」「世界的に在宅医療システムの充実が必要ということ、ナースの役割が大きいことを実感した」などの声が聞かれました。これからも本事業は継続的に公開講座、講演会を開催して参ります。