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【助成研究 Pick up ! ② 】終末期がん患者のセクシュアリティ:「パートナーとの愛を育む時間」に対する緩和ケア病棟の看護師の認識、感情、支援への行動意図と実践経験についての実態調査


本記事は、当財団が実施する研究助成の研究報告書「日下部 明彦,がん終末期におけるがん患者のセクシュアリティについての医療者の対応, 2018A-001」を基に作成されています。詳細はこちらの研究報告書をご確認ください。

本研究は日本緩和医療学会誌に掲載されました。終末期がん患者のセクシュアリティ:「パートナーとの愛を育む時間」に対する緩和ケア病棟の看護師の認識,感情,支援への行動意図と実践経験についての実態調査 (jst.go.jp)


研究者メッセージ

今から5年くらい前のこと。私は、すでに10年以上緩和ケアに携わっており、ある程度の自信を持っており、患者さんは自分に他の医師には言えないような辛さも打ち明けてくれていると思い込んでいました。しかし、大学病院の緩和ケアチームで関わった60代の男性患者さん(終末期がんでもうお別れまで1~2週間と思われる方)から発せられた「先生、俺、最期にあれしたいんだよね。」の言葉には大変な衝撃を受けました。今まで自分は緩和ケア医として何をしてきたのかと恥ずかしくなりました。自分が出逢った中でも、亡くなる間際でもセクシュアリティへの想いを抱え、それを表出できずにいた方がいたのだと気付きました。私には、それを受け止める準備がないとそれまでの患者さん方は察したのだと思います。それを気付かせてくれたこの方へ感謝の想いと、私自身生きている限り性のアイデンティティは尊重されたいという気持ちから、この研究に着手しました。

目次

  1. 研究目的
  2. 研究方法
  3. 研究の成果
  4. 研究者より皆様へメッセージ

1.研究目的

終末期がん患者のセクシュアリティへの支援に対する看護師の現状を明らかにする。

2. 研究方法

2018 年12 月に神奈川県内緩和ケア病棟18 施設の看護師313 名を対象に終末期がん患者の「パートナーとの愛を育む時間」に対する認識、感情、支援への行動意図と実践について質問紙調査を行った。

3. 研究の成果

【結果】165 名中(回収率52.7%)「パートナーとの愛を育む時間」への支援経験があるのは82 名(49.7%)であった.行ったことのある具体的な支援内容は「スキンシップを勧める」、「傾聴」、「ハグを勧める」、「入室の際に、ノックや声掛け後に返事を待つなど十分な時間をとる」が多かった。一方、病棟カンファレンスで「パートナーとの愛を育む時間」について話したことがあるのは11 名(6.7%)であった。

【結論】現状、「パートナーとの愛を育む時間」への支援は個人に任され、組織的には行われていないことが示唆された。

【考察】終末期がん患者のセクシュアリティについてのアンメットニーズを引き出すためには、まず看護師および医療スタッフ間で、人生のいかなるステージにおいてもセクシュアリティの問題は存在するという認識を共有し、支援について備えることが必要であると考えられる。

4.研究者より皆様へメッセージ

いくつになっても人間は、男でいたい、女でいたい、自分でいたいということを思うだろうことを、私たち医療者は忘れがちだと思います。忘れがちと言うよりも、思いもしないという表現が正しいかもしれません。かく言う私がそうでした。もう亡くなる間近のがん患者さんが性への想いがあるなどとは思ってもいませんでした。それは間違った思い込みだったと猛省しています。個人的には過剰な性的な支援はむしろすべきではないと思いますが、少なくとも患者さんに愛する人がいるならば、入院中でもパートナー同士の時間が豊かに過ごせるような支援を考えたらよいのではないでしょうか。性を軽んじて、人間の尊厳が守られるわけはありません。性への支援はスピリチュアルケアの一部であると思います。

このような研究に助成を頂けたことに心から感謝をするとともに、衰えても安心して自分らしく生きられる世の中になるように、今後も継続して、このテーマの研究活動をしていきたいと思います。

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