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89号 大使メッセージ:障がい者運動とハンセン病

マハトマ・ガンジーの命日であり、インドにおけるハンセン病の日でもある1月30日に、ハンセン病の患者、回復者そしてその家族に対する差別撤廃を訴える第13回目のグローバル・アピールをインド・デリーにて発表した。

本年のアピールの賛同団体であるDPIは、1981年の設立以来、あらゆる種類の障がいを対象にし、障がい者の権利の保護と社会参加の機会平等を目的に国際的に活動を展開している。

広範な活動を行っているDPIだが、会長を務めるジャベッド・アビディ氏は、ハンセン病の回復者への根強い偏見に対抗するための障がい者とハンセン病患者、回復者のコミュニティとの連携は十分には進んでいない、障がい者関係の会合においても、ハンセン病が話題にのぼったことはなかったと言う。ハンセン病患者、回復者は(後遺障害を負っていても)障がい者とも認識されていないようだった。

障がい者運動の国際的な展開の歴史は、私が主導してきたハンセン病にかかわる社会面の取り組みと重なるところがある。特に1970年代から90年代にかけては、国連の場において、障がい者の権利に関わる幾つかの宣言、決議の採択が相次いだ。ハンセン病の世界においても、2010年に差別撤廃を訴える国連総会決議や原則とガイドラインの採択がなされている。

しかしこれら宣言・決議等は法的拘束力を持つものではない。そこで障がい者運動は、その後も前進を続け、2006年には「障害者の権利に関する条約」の採択にまでこぎつけた。これはもちろん法的拘束力を有する文書であり、この展開によって障がい者を取り巻く世界は大きく変わったのである。全く同じ道を歩む必要はないにせよ、この障がい者運動の歴史は、ハンセン病コミュニティの今後の目指すべき方向を示唆してはいまいか。

私は、ハンセン病患者、回復者も障がい者も、誰もが疎外されることのないインクルーシブな社会の実現を目指している。今回のグローバル・アピールを契機にハンセン病の適切な理解の促進と、患者、回復者とその家族の人権を尊重し、差別のない世界に向けての歩みを進めていきたい。

この後アビディ氏の訃報という悲しい知らせを受けた。彼の思いがけない死は障がい者の権利のための運動にとっての損失である。彼は障がい者とハンセン病のコミュニティ同士が連携していけるよう尽力したが、この業績を記憶し、さらに継承してゆくのがわれわれに与えられた責務である。

WHOハンセン病制圧大使 笹川陽平

89号PDF

 

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