83号 大使メッセージ:インクルーシブな社会の実現を目指して ~障がい者組織との連携~
私は、ハンセン病患者、回復者が、差別なく社会に参加できるインクルーシブな社会の実現を目指している。そのために、これまで各国政府への働きかけや、回復者組織へのサポートを行ってきた。
しかし、インクルーシブな社会を実現するためには、さらに当事者の発言力を強化することが必要である。私は2015年6月、ニューヨークの国連本部で行った国連障がい者権利条約締約国会議で、世界的な障がい者グループの連合組織である「障がい者インタナショナル」(Disabled Peoples’ International: DPI)と共に「ハンセン病患者、回復者からの声」と題するサイドイベントを行った。これはDPIのアヴィディ会長が複数国のハンセン病患者・回復者の組織と緊密な連携を取ったことによって実現したもので、国連障がい者権利条約締約国会議における初めてのハンセン病をテーマとした会合となった。
ここでは、障がい者もハンセン病患者・回復者も、原因は何であれ、障がいをもったもの同士、共になにかできるのではと、両者の連携をさらに深める方策を模索することに合意した。
このことは、それまで連携を図ることのなかった異なる背景をもつ障がい者同士が、今後インクルーシブな社会の実現に向けて、共に行動する基盤となる出来事だったのではないかと思う。彼らの声が社会に届き、彼らの生活の質を左右するような意志決定のプロセスに彼らが参加することが非常に重要である。
2016年の11月には、DPIのイニシアチブによってハンセン病の問題を世界的な障がい者の運動と連動させるための会議が開催され、地元インド、ネパール、インドネシアからの参加者で活発な議論が行われた。
私はこのように、ハンセン病患者・回復者と、他の障がい者団体とが連携をし、共に声をあげ、行動することは、それぞれの分野における当事者の発言力の強化にもつながると考えている。
そして、このことこそが、インクルーシブな社会を実現する大きな一歩だと信じている。
WHOハンセン病制圧大使 笹川陽平
MESSAGE: Toward an Inclusive Society (インクルーシブな社会の実現を目指して
~障がい者組織との連携~)
REPORT: Beyond Borders
OPINION: Hansen’s Disease as Cultural Heritage
INTERVIEW: Meeting Nepal’s Challenges
ANNIVERSARY: Reflections on S-ILF’s First Decade
MUSEUM PIECE: NOY LABOD’S BANJO
AMBASSADOR’S JOURNAL: Flying Visits
NEWS: Vatican Conference on NTDs
FROM THE EDITORS: INDIA’S MASSIVE EFFORT