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77号 大使メッセージ:制圧と数値目標

WHOは1991年の総会で、公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧目標を有病率(PR)人口一万人に一人以下とすると設定した。

目指すゴールがあることと、効果的な治療薬であるMDT、そして、WHO、各国政府、国際NGOなどの持続的な支援により、各国は、次々に制圧を達成した。2011年以降残る未達成国はブラジル一カ国だけとなった(人口100万人以下の国をのぞく)。このブラジルでも制圧が間近であると聞いている。

明確な数値目標なくして成果はあがらない。制圧を可能にしたのは、WHOの明確な数値目標であった。私は2003年以来、WHOのハンセン病制圧大使として270カ国を訪問し、314人の政府要人と面談したが、数値目標を伴う制圧のゴールを知らせることで相手はなにをすればよいかを即座に判断し、実行することができたのである。

いま、この制圧目標は、国のレベルから、サブナショナル・レベルへと移っている。そして、州、県、そして市町村レベルで、このような段階的な制圧を達成することで、真の「ハンセン病のない世界」を実現するのだ。

「制圧」と数値目標は関係者にとって重要な戦術であり、活動指針である。

しかし、インドが達成を果たした2005年からあとの世界のハンセン病の対策は大きな進展がなく患者数に変化がみられない停滞状況になってしまった。これは国レベルの制圧達成によって安堵感が出てしまったからである。

「制圧」という言葉が独り歩きして、あたかも問題はすべて解決したという誤解を生んでしまった。実際はかけ離れている。

ナショナルレベルの制圧は、あくまでもマイルストーンであり闘いが終ったわけではない。サブナショナル・レベルにおける「制圧」の達成をめざすことは2013年の終わりの国際ハンセン病サミットで提出されたバンコク宣言の中で明確に謳われているではないか。

宣言の達成のためには新規患者数が増えることを恐れてはならない。制圧を達成するために活動を強化すれば一時的に、新たな患者の発見数は増えて当然である。ハンセン病との闘いはまだ道半ばなのである。

WHOハンセン病制圧大使 笹川陽平

77号PDF

MESSAGE: Speaking Up for Elimination(制圧と数値目標)

INTERVIEW: Flexibility Is Key

THREE PILLARS OF GLOBAL 2016-2020 STRATEGY

MUSEUM PIECE: ‘WALL CLOCK’

BRIEFING: Small Islands, Big Challenges

AMBASSADOR’S JOURNAL: Journey to the South Pacific

‘AS LOVING AS PARENTS’

NEWS: Leprosy History as Human Heritage

FROM THE EDITORS: FRESH PERSPECTIVES