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ハンセン病対策の現在とこれから II

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ハンセン病対策の、革新的なアプローチとして、いま議論されているのは
どのようなものでしょうか。
過去1年間に参加したWHO 4地域の会議では、次の方法が新たなコントロールへのアプローチとして提案され、議論されました。
1. コンタクト調査
2. 予防薬投与
3. ワクチン投与
4. 当事者(回復者)の積極的コントロール活動への参加促進
<1. コンタクト調査>
コンタクトとは、患者の家族、隣近所の人(半径300メートル以内に住む人)、仕事仲間(毎日4時間以上接触する人)を意味します。患者の近くに居るこうした人々は、そうでない人々よりも感染のリスクが高いので、これらの人々を優先的に診ることで、早期診断・治療を可能にすることは十分理解できます。
ここで注意しなければならないのは、この方法を取ることで、家族、地域、職場の人々に社会の偏見、差別が向けられてはならないということである。特効薬MDTが開発され確実な治癒が保障され30年以上が経った今も、残念ながら社会のこの病気に対する偏見・差別は根強く残っています。人の心に即効する治療法は存在しないのです。
<2. 3. 予防薬・ワクチン投与>
予防薬、ワクチン投与とは、コンタクトの人々に対しリファンピシンを1回服用してもらう、あるいはワクチンを1回投与する、あるいは両方の投与を施し、発病を予防するものです。
現在のところ、予防薬には2年程度、ワクチンには5~6年程度の間予防効果があると言われていますが、まだ十分な予防根拠と言えず、現在も臨床試験が続けられています。
予防法については、「ハンセン病対策の現在とこれからⅠ」をご参照ください。
<4. 当事者(回復者)の積極的コントロール活動への参加促進>
当事者(回復者)の参加は、笹川記念保健協力財団が強く進めている方法です。
コンタクト調査にしても、予防薬・ワクチン投与にしても、患者の理解と協力、患者を偏見・差別から守る環境が保障されなければ円滑に進みません。
実体験から予防、早期治療・治療の重要性を最も良く理解し、患者・家族の不安と心配の最大の理解者が回復者であり、かれらこそ患者の理解を求め、患者を偏見・差別からまもる環境作りに貢献できると信じています。
しかしそれ以上に、回復者はハンセン病の症状、障がいに発展する可能性のある変化を知っており、その対応も知っています。
ハンセン病に対する偏見・差別の長い歴史は、回復者と彼らの家族の社会的地位を下げ、劣悪な生活状況に追い込んできました。彼らは長い間「自分と家族が生きのびる事」で精一杯でした。
しかし、MDT導入後30年の間にハンセン病の社会的側面(尊厳と人権)への関心が高まり、多くの支援が回復者と家族のエンパワメントと社会経済的自立促進に集まりました。
その結果、現在世界には多くの回復者リーダーが現れ、政府やNGOとパートナーシップを組み始めています。
私たちは、こうした回復者リーダーが必ず、将来につづくハンセン病対策活動の維持に貢献してくれるものと信じ、現在その為の基盤づくりの一環として専門家グループを編成し、回復者参加を促進、強化するためのアクション計画を作り、活動を始めています